69 / 98
21章 一生をかけたお願い…
69話 急いで掃除しないと!?
しおりを挟むその日、私は朝から先生のお部屋でお洗濯物をしながら掃除機をかけていた。
「もぉ、いくら男性の一人暮らしとは言っても、これは想定を越えますよ」
「本当に申し訳ない!」
こんな文句を言いながらも、思ったより早く先生のお家に来られたわけだし、前々からお洗濯や食事を作りに行く計画だけは立っていたので、それが叶っただけの話なんだけど、それがあまりにも急な事だったから。
昨日の夜に先生から私のスマートフォンに電話がかかってきた。
何事かと驚いて出てみると、部屋の掃除を手伝って欲しいとのこと。
急にご実家のお母さんが来ることになって、掃除の時間も無いから助けて欲しいという内容だった。
「分かりました。明日の朝早く行きます」
詳しい住所を聞いたら、私の家から10分も歩かない。
きっと朝ご飯も食べずにバタバタしているだろうと思って、おにぎりを握って掃除用具と一緒に先生のアパートに急いだ。
お部屋に入ると、洗濯物の山と積み上げてある本や参考書。箱に入ったままのインスタント食品。
それでもゴミはちゃんと出してあったらしいけど、これではさすがに気軽に私を呼べる部屋ではなかったんだと理解した。
でも、今はそんなことで手を止めている場合じゃない。
「お洗濯物とキッチンは任せてください。先生はお部屋をお願いします」
「本当に悪い! この礼は必ずするから」
こんなことも想定していたので、高校のジャージを持ってきてよかった。
あの学校は特に名前も書かなくてよかったので、ぱっと見では普通に部屋用のジャージに見える。
男物を洗濯するのは、家でお父さんのものもしているので気にはならないし、要領に迷うこともない
お仕事用のワイシャツも襟と袖を石鹸で汚れを落として、それから洗濯機にかけてからスプレーで糊づけ。そして半乾きのうちにアイロンで仕上げていけばいい。
洗濯機が回っている間に、同時並行でキッチン回りを片付ける。
お皿を洗って、布巾で水気を拭き取っては収納の棚に並べていく。あとは水回りをクレンザーを使って磨き上げてしまえば、床は掃除機と雑巾で水拭きをして完成。
「凄いな結花は……」
洗濯機からできあがったものをすぐに、スプレー糊とアイロンを使って仕上げる。
本当はもっと丁寧にやりたいんだけど、とにかく時間がないからポイントを絞って見た目だけでも清潔に見えるように。
それを完全に乾燥させるために、カーテンレールに並んだワイシャツを見て先生は感心していた。
「お買い物に行って、おかず作りますね。何日間か使えるようにまとめて作ります」
スーパーが開いた時間を見計らって、一度着替えてからお部屋を飛び出した。
栄養と保存と先生の好みを考えて、献立を考えながら買い物を済ませて戻る。
「なんとか夕方には間に合いそうだ。結花のおかげだ」
「もっと早く言ってくだされば、前々からお掃除しておきましたよ」
ちょっと拗ねたように返してみるけど、先生は私の頭をぽんぽんたたいている。
あぁ、それで許してもらえるってバレちゃってるし。私も単純だからなぁ……。
二つあるガスコンロを同時に使って、レンジで温めるだけで食べられるおかずの下ごしらえを作っては透明なタッパーに入れて冷蔵庫に入れていった。
「これで1週間分の朝は何とかなると思います。なくなった頃に、また作りに来るか差し入れしますね。今度は曜日を書いておきましょうか?」
「ほんと、いい嫁さんになれるな」
「はい……」
ようやくひと息ついて、二人でペットボトルの麦茶を飲んだときだった。
玄関のチャイムが鳴る。
「はーい」
「いい、俺が出る」
そうだ。ここは先生のお家。私の声がしたら変なのに。
扉を開ける音がして、先生がびっくりしている声がした。
「お袋……」
私はどこにいればいいか分からなくなって、その場に立ち尽くしてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる