まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

文字の大きさ
101 / 170
26章 クリスマスイブの予約

第100話 冬休みも宿題しに行きますね

しおりを挟む

 港に戻った船を降り、横浜港のイルミネーションを眺めながら駅まで歩こうと手をつなぐ。

 時間はもう夜9時を過ぎている。それでも特別な夜だからか、まだたくさんの人が思い思いの時間を過ごしている。

「こんなところに二人でいるのを見られたら大変じゃないですか?」

「今日はみんな自分たちのことで精いっぱいだ。他の奴のことなんか気にしてない。それに、花菜ちゃんがそんな服でメイクまでしているなんて他の奴でも分からない」

 そう言って昔と同じように笑って手を引いてくれる。

 ううん、昔とは違う。私の左手には銀色の指輪がつけられているんだもの。

「それ、しばらくはお預けで悪いな」

「仕方ないですよ。あの……、これ高かったですよね?」

 クオーツ・クリスタルはダイヤモンドはもちろん他の石と比べても、宝石自体のお値段はそれほどではないけれど、指輪としてアクセサリーになれば別で、高校生でも軽々と手を出せるものじゃないよ?

「給料3カ月分かな」

「え? そんなに高いもの……」

「冗談だ。そんなに高いものじゃない。結婚指輪はダイヤモンドでちゃんと作ってやるから」

 4月の誕生石はダイヤモンドが有名。だけどまだ私には早いと思ってこれにしてくれたみたい。でも、これは偶然にも私の誕生日石でもあるし、石言葉にも「純粋」「無垢」が入っている。パワーストーンとしても「浄化」や「守護」とかが並ぶ最強部類だ。

「これでも十分です。それこそ私にはおもちゃでいいんですよ? 本当に嬉しい……。こんな私にはもったいない……」

 お兄ちゃんは私の頭に手を置いて、顔を横に振った。

「花菜ちゃんはもっと自信を持っていいんだ。今日だって、最初別人かと目を疑ったんだぞ?」

 自分だってここまで変身できてしまうとは思わなかった。

「でもね、それは結花先生とかのおかげですよ」

「正確には少し違うな。ちゃんと花菜ちゃんが大人になってきてるってことなんだ。服も化粧もよく似合ってる。これからは誰にも横取りされないように気をつけておかないとな」

「こんな私、誰も横取りなんかしませんよ」

「違う、逆だ」

 私の手を握る力が強くなる。

「俺も言葉だけじゃなく、ちゃんとを迎える準備をする。そうしないと花菜をまた悲しませてしまう。もうあんな思いは二度とごめんだ」

 名前を呼び捨てにした私を『迎える』準備。そこまで言ってもらえるところまでようやくたどり着いた。そんな私は幸せ者だよ。

「その気持ちだけで私は充分幸せです。だからちゃんと受け取ってくださいね?」

「約束だ」

 結局、最終のバスには間に合わなくて、仕方なく駅から二人で歩いた。

 誰もいない商店街で手を繋いだまま走ったり、こんなにはしゃいだのは何年ぶりだろう。

「長谷川先生と将来を約束をした。私でいいのかな……。私は先生に迷惑かけないかな」

 あの結花先生ですら旦那さまの足を引っ張らないようにと高卒の資格を取ったりしたんだ。私なんかもっと努力しなきゃならないよね……。

「俺が松本を選んだんだ。そのままでいい。入籍はいつでもいいが、公表は卒業後だろうな」

 入籍……。中学生の頃はあんなに遥か遠くにあった言葉。一度は自分にはもう関係ないとさえ思ったりもしたのに。

「先生、本当にご両親は賛成していただけているんでしょうか?」

「大丈夫。そうだ、今度の年末年始に一緒に帰省しよう。久しぶりに顔を見せておきたいし、花菜を一人でこっちに残して帰省はできないと思っていたところだ」

 珠実園の前に着いて、通用口を開ける。

「今日はありがとうございました。また学校でお願いします」

 冬休み、本当は部活で行く必要もないのだけど、お昼休みまでは冬休みの宿題をやりに行くという名目で部室に行くことを伝えていた。もちろんお弁当の復活も約束した。

「もう遅いから、風邪をひくなよ?」

「はい。先生も気を付けて帰ってくださいね。おやすみなさい」

 私は、門のところから先生が見えなくなるまでいつまでも見送っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...