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【第9部〜巨人の王国編〜】
第29話 最終決戦の行方
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楊(ダゴン王)を倒したからなのか、屋敷全体が揺れて崩れ始めた。
「もう保たないぞ!脱出しろ!」
ビゼルが叫び、私達は地下迷宮から抜け出そうとした。高は放心状態で、麻里奈の灰を握り締めているのが目に入った。
「貴方、何してるの?早く逃げて!」
「ボクは…もう良いんだ…。ここで、麻里奈と一緒に眠らせて欲しい」
高は愛する麻里奈を失って、生きる希望をも失っていた。
「麻里奈が、あの娘がどんな気持ちで自分の生命を捨ててまで、私を生き返らせたと思っているの?愛する貴方を生き返らせて欲しいからよ。このまま貴方まで死んでしまったら、あの娘は犬死にじゃないの!あの娘の死を無駄にしないで!しっかりしなさい、高玹宇!」
高は、私の檄を受けて立ち上がり、走り出した。地下迷宮は崩れ、入口は塞がれた。辛うじて私達が楊邸から外に出た時、音を立てて屋敷は崩れ落ちた。
「ふー、ギリギリだったわね」
一息つくと、ロードが夜空を指差した。
「あ、あれは…門だ。見た事が無い門だぞ!?」
今宵は満月だったが、それ以上に光り輝く門扉が夜空に浮かんでいた。目を凝らして見ると、ヴラド・ツェペシュがいた。
「ははははは。間も無くだ!間も無く門は開き、我々闇の眷属の悲願は成就される!」
「あれは一体何処に繋がっている門なの?」
振り向いて尋ねたが、誰も知らなかったが、バートリが答えた。
「あれは巨人の国に繋がる門らしい」
「何だと!?」
ロードやビゼルは青ざめた表情で言った。
「それが本当なら世界は終わる」
ロードやビゼルは門の解放を止めようと向かったが、「そうはさせん!」とヴラドが立ちはだかった。
「そこを退け!」
しかしヴラドに傷を付けるどころか、2人がかりでも殺されそうになると、ミューズ達も加わった。バートリがヴラドと戦おうとすると、1人の男が邪魔をした。
「貴様はジル!」
「間に合ったようだな?」
「遅い、何をしていた?」
「それを聞くのか?」
「いや良い。先ずはコイツらを皆殺しにしよう」
守勢だったヴラドは、ジルと言う味方を得て攻勢に転じた。ジル・ド・レにはバートリの他に、項羽と私が相手をしたが3人がかりでさえ圧倒された。
「信じられない強さだ!」
「…真祖は、始まりの吸血鬼から与えられた血の量だけでなく、吸って来た血の量によっても強さが変化する。ヴラドやジル、私が吸った血の量が多すぎるんだよ」
バートリは、申し訳なさそうな表情をした。
ジル・ド・レは、あのジャンヌ・ダルクの相棒であり、共にしのぎを削り合って己を高め合った仲だ。オルレアンの聖女と謳われたジャンヌ・ダルクを最も近くで見、支えた人物だ。軍事的センスは群を抜いており、ジャンヌが立案した無謀とも思える作戦を成功に導いた立役者でもある。
当時フランスはイングランドとの百年戦争の真っ只中にあり、陥落寸前のオルレアンを「神の啓示を受けて救いに来た」と言った小娘に、フランス王太子はオルレアン解放軍の総大将に任命した。
消極策を取っていたフランス軍を掌握したジャンヌは、積極的に攻勢に出て連戦連勝を重ねた。王太子をシャルル7世として即位させたのもジャンヌであった。最期は敵の待ち伏せに合い、友軍を救う為に自ら殿となって敵を防ぎ続けたが、ジャンヌは退路を断たれ孤軍奮闘し、矢を受けて落馬して捕虜となった。
本来であれば莫大な身代金を支払って、捕虜となったジャンヌを取り戻す為に動くはずだった。ジャンヌも、救国の英雄である自分を見捨てるとは思っていなかった。しかし、シャルル7世は身代金の交渉を行わず見殺しにしたのだ。ジャンヌは、聖女としても国の英雄としても絶大な名声を得ており、その人気は王を遥かに凌駕するものだった。その為にこの際、敵の手を借りて始末しようと企んだのだ。
その結果ジャンヌは、異端審議で魔女の判決を受けた。聖女とされるジャンヌがどの様にして処刑されたのか、余りにも酷い為にわざとぼかして書かれている書物がほとんどだ。
ジャンヌは普通にイエス・キリストの様な磔で、火刑に処された訳では無い。ジャンヌの判決文には、「悪魔と交わり、魔女の力を得た」と書き加えられた。その為、見物人によく見える様に、全裸のまま両足を大きく開かれた格好で磔にされたのだ。
処刑前、処刑人はジャンヌの性器に指を入れ、「ここが悪魔と交わった場所だ!」と言い、秘部を広げて見物人に見せた。まだ19歳の乙女である。いや、乙女だった。虜囚として牢に繋がれている時、牢番達から代わる代わる犯されて処女を失った。
通常、火刑は残酷過ぎる刑である為に温情が加えられ、火を着けられる前に首の骨を折って絶命させたり、湿気た藁を敷き詰めて一酸化炭素中毒死させていた。
しかし「悪魔と交わった魔女」に温情など加えられるはずもなく、生きたまま皮膚は焦げ、肉は焼け爛れて、ジャンヌは地獄の苦しみを味わいながら死んだ。その間も度々、悪魔と交わった場所の焼き具合を確認された。
死者を辱める様な真似をしたのは、ジャンヌが神の啓示を受けた聖女とされていたからだ。何が何でもジャンヌを貶める必要があった。教会の沽券に関わるからだ。
ジル・ド・レは、ジャンヌを最期まで救おうとしていた。しかしそれは叶わなかった。ジルは絶望した。ジャンヌを救え無かった自分自身に、ジャンヌを見捨てたシャルル7世に、ジャンヌに救われたにも関わらず、救おうとしなかったフランス国民に絶望した。
そしてジルは壊れた。屋敷に閉じ籠り、酒に溺れ、黒魔術を行っていた。もしかすると、ジャンヌを黒魔術で生き返らせ様としていたのかも知れない。
ジルは男装のジャンヌを愛していた。美しい女性が男装をすると、美少年の様に見える。ジルのジャンヌへの思いは歪み、領地内の少年達へと向けられた。
1440年5月、城の敷地内に埋められていた200人を超える全裸の少年の遺体が発見されたのだ。その全ての遺体には性的虐待の痕が残っていた。
ジルは男装したジャンヌが忘れられず、叶う事が無かった思いを少年達にぶつけた。挿入しようとして抵抗され、暴れた少年の両手を切断した後、犯して殺害した。
発見された少年達は、五体満足な遺体がほとんど無かったと言う。
ジルの証言に、手足を切断した時の悲鳴が心地良く、興奮したと言っている。己の性的嗜好を満足させる為だけに、200人もの男の子が犠牲となった史上最悪のシリアルキラーだ。
ジャンヌと共に救国の英雄と讃えられ、元帥にまで昇り詰めた哀れな男の最期は、貴族には不名誉な絞首刑であった。
そんな訳でジルが吸った血の量は尋常では無く、この強さも納得だ。
「門が開くぞ!早く止めろ!」
焦りは冷静な判断力を失わせる。全員がヴラドとジルの為に手傷を負っていた。
そこにベルゼブブとルシフェルが援軍を連れて来た。
「大哥(兄ぃ)!」
援軍の到着で、形勢が逆転したかに見えた。
「トールハンマー!」
雷帝トールの不意打ちによって、神軍の半数がトールハンマーに巻き込まれて命を散らした。
「トール!?何故?」
「何故だと?儂は、巨人族だぞ!ずっとこの日が来るのを待っていたのだ」
そう言ってトールが門に魔力を込めると、門が開いた。
「嗚呼!」
「まだ間に合う!」
「押し込め!」
「無駄な事を!」
両軍入り乱れ混戦となったが、それも終わりを迎えた。絶望的なまでの見渡す限り巨人の軍団が、門を抜けて来たのだ。
『超大爆発衝撃波!』
光に包まれた様に見えた。大地は裂けて閃光が走り、空は真っ白な光に覆われた。それっきり私は意識を失った。
「もう保たないぞ!脱出しろ!」
ビゼルが叫び、私達は地下迷宮から抜け出そうとした。高は放心状態で、麻里奈の灰を握り締めているのが目に入った。
「貴方、何してるの?早く逃げて!」
「ボクは…もう良いんだ…。ここで、麻里奈と一緒に眠らせて欲しい」
高は愛する麻里奈を失って、生きる希望をも失っていた。
「麻里奈が、あの娘がどんな気持ちで自分の生命を捨ててまで、私を生き返らせたと思っているの?愛する貴方を生き返らせて欲しいからよ。このまま貴方まで死んでしまったら、あの娘は犬死にじゃないの!あの娘の死を無駄にしないで!しっかりしなさい、高玹宇!」
高は、私の檄を受けて立ち上がり、走り出した。地下迷宮は崩れ、入口は塞がれた。辛うじて私達が楊邸から外に出た時、音を立てて屋敷は崩れ落ちた。
「ふー、ギリギリだったわね」
一息つくと、ロードが夜空を指差した。
「あ、あれは…門だ。見た事が無い門だぞ!?」
今宵は満月だったが、それ以上に光り輝く門扉が夜空に浮かんでいた。目を凝らして見ると、ヴラド・ツェペシュがいた。
「ははははは。間も無くだ!間も無く門は開き、我々闇の眷属の悲願は成就される!」
「あれは一体何処に繋がっている門なの?」
振り向いて尋ねたが、誰も知らなかったが、バートリが答えた。
「あれは巨人の国に繋がる門らしい」
「何だと!?」
ロードやビゼルは青ざめた表情で言った。
「それが本当なら世界は終わる」
ロードやビゼルは門の解放を止めようと向かったが、「そうはさせん!」とヴラドが立ちはだかった。
「そこを退け!」
しかしヴラドに傷を付けるどころか、2人がかりでも殺されそうになると、ミューズ達も加わった。バートリがヴラドと戦おうとすると、1人の男が邪魔をした。
「貴様はジル!」
「間に合ったようだな?」
「遅い、何をしていた?」
「それを聞くのか?」
「いや良い。先ずはコイツらを皆殺しにしよう」
守勢だったヴラドは、ジルと言う味方を得て攻勢に転じた。ジル・ド・レにはバートリの他に、項羽と私が相手をしたが3人がかりでさえ圧倒された。
「信じられない強さだ!」
「…真祖は、始まりの吸血鬼から与えられた血の量だけでなく、吸って来た血の量によっても強さが変化する。ヴラドやジル、私が吸った血の量が多すぎるんだよ」
バートリは、申し訳なさそうな表情をした。
ジル・ド・レは、あのジャンヌ・ダルクの相棒であり、共にしのぎを削り合って己を高め合った仲だ。オルレアンの聖女と謳われたジャンヌ・ダルクを最も近くで見、支えた人物だ。軍事的センスは群を抜いており、ジャンヌが立案した無謀とも思える作戦を成功に導いた立役者でもある。
当時フランスはイングランドとの百年戦争の真っ只中にあり、陥落寸前のオルレアンを「神の啓示を受けて救いに来た」と言った小娘に、フランス王太子はオルレアン解放軍の総大将に任命した。
消極策を取っていたフランス軍を掌握したジャンヌは、積極的に攻勢に出て連戦連勝を重ねた。王太子をシャルル7世として即位させたのもジャンヌであった。最期は敵の待ち伏せに合い、友軍を救う為に自ら殿となって敵を防ぎ続けたが、ジャンヌは退路を断たれ孤軍奮闘し、矢を受けて落馬して捕虜となった。
本来であれば莫大な身代金を支払って、捕虜となったジャンヌを取り戻す為に動くはずだった。ジャンヌも、救国の英雄である自分を見捨てるとは思っていなかった。しかし、シャルル7世は身代金の交渉を行わず見殺しにしたのだ。ジャンヌは、聖女としても国の英雄としても絶大な名声を得ており、その人気は王を遥かに凌駕するものだった。その為にこの際、敵の手を借りて始末しようと企んだのだ。
その結果ジャンヌは、異端審議で魔女の判決を受けた。聖女とされるジャンヌがどの様にして処刑されたのか、余りにも酷い為にわざとぼかして書かれている書物がほとんどだ。
ジャンヌは普通にイエス・キリストの様な磔で、火刑に処された訳では無い。ジャンヌの判決文には、「悪魔と交わり、魔女の力を得た」と書き加えられた。その為、見物人によく見える様に、全裸のまま両足を大きく開かれた格好で磔にされたのだ。
処刑前、処刑人はジャンヌの性器に指を入れ、「ここが悪魔と交わった場所だ!」と言い、秘部を広げて見物人に見せた。まだ19歳の乙女である。いや、乙女だった。虜囚として牢に繋がれている時、牢番達から代わる代わる犯されて処女を失った。
通常、火刑は残酷過ぎる刑である為に温情が加えられ、火を着けられる前に首の骨を折って絶命させたり、湿気た藁を敷き詰めて一酸化炭素中毒死させていた。
しかし「悪魔と交わった魔女」に温情など加えられるはずもなく、生きたまま皮膚は焦げ、肉は焼け爛れて、ジャンヌは地獄の苦しみを味わいながら死んだ。その間も度々、悪魔と交わった場所の焼き具合を確認された。
死者を辱める様な真似をしたのは、ジャンヌが神の啓示を受けた聖女とされていたからだ。何が何でもジャンヌを貶める必要があった。教会の沽券に関わるからだ。
ジル・ド・レは、ジャンヌを最期まで救おうとしていた。しかしそれは叶わなかった。ジルは絶望した。ジャンヌを救え無かった自分自身に、ジャンヌを見捨てたシャルル7世に、ジャンヌに救われたにも関わらず、救おうとしなかったフランス国民に絶望した。
そしてジルは壊れた。屋敷に閉じ籠り、酒に溺れ、黒魔術を行っていた。もしかすると、ジャンヌを黒魔術で生き返らせ様としていたのかも知れない。
ジルは男装のジャンヌを愛していた。美しい女性が男装をすると、美少年の様に見える。ジルのジャンヌへの思いは歪み、領地内の少年達へと向けられた。
1440年5月、城の敷地内に埋められていた200人を超える全裸の少年の遺体が発見されたのだ。その全ての遺体には性的虐待の痕が残っていた。
ジルは男装したジャンヌが忘れられず、叶う事が無かった思いを少年達にぶつけた。挿入しようとして抵抗され、暴れた少年の両手を切断した後、犯して殺害した。
発見された少年達は、五体満足な遺体がほとんど無かったと言う。
ジルの証言に、手足を切断した時の悲鳴が心地良く、興奮したと言っている。己の性的嗜好を満足させる為だけに、200人もの男の子が犠牲となった史上最悪のシリアルキラーだ。
ジャンヌと共に救国の英雄と讃えられ、元帥にまで昇り詰めた哀れな男の最期は、貴族には不名誉な絞首刑であった。
そんな訳でジルが吸った血の量は尋常では無く、この強さも納得だ。
「門が開くぞ!早く止めろ!」
焦りは冷静な判断力を失わせる。全員がヴラドとジルの為に手傷を負っていた。
そこにベルゼブブとルシフェルが援軍を連れて来た。
「大哥(兄ぃ)!」
援軍の到着で、形勢が逆転したかに見えた。
「トールハンマー!」
雷帝トールの不意打ちによって、神軍の半数がトールハンマーに巻き込まれて命を散らした。
「トール!?何故?」
「何故だと?儂は、巨人族だぞ!ずっとこの日が来るのを待っていたのだ」
そう言ってトールが門に魔力を込めると、門が開いた。
「嗚呼!」
「まだ間に合う!」
「押し込め!」
「無駄な事を!」
両軍入り乱れ混戦となったが、それも終わりを迎えた。絶望的なまでの見渡す限り巨人の軍団が、門を抜けて来たのだ。
『超大爆発衝撃波!』
光に包まれた様に見えた。大地は裂けて閃光が走り、空は真っ白な光に覆われた。それっきり私は意識を失った。
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