香りの比翼 Ωの香水

鳩愛

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貴方のダンスが見てみたい35番の時間

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ラグはソフィアリからまだ雄々しく反り返ったままの楔を引きぬくと、敏感な内壁を擦りあげられソフィアリは小さく喘ぐ。

「んっ ああ」

ラグはぐったりした彼の花の顔がよく見えるように明かりの方に向け、膝の上に抱きかかえた。

凌辱されたかのように乱れきった夜の女神の格好は艶美でしどけなく、だんだんと強くなるフェロモンに、ラグの張り詰めた腰のものがさらに重くなり辛い。
しかしソフィアリの気持ちをしっかり聞いてみたくてそれを押しこらえた。

静かな夜だ。館に誰もいないから本当に物音1つしない。小さく呼吸を繰り返すソフィアリの吐息と心音だけがソファリを抱えるラグの腕と胸に直接響いてくるかのようだった。
嵐のような一週間、回復してからも時間が思うように取れず、やっとゆっくりできるはずだった今夜。番をほったらかしにした愛らしく小憎らしいソフィアリを思わず虐めてしまったが、本来したかったことは、こうして二人きりでゆったりと過ごし睦みあうことだった。それをやっと思い出してラグは自分自身に嘆息する。
鉄の意志を持ち幾たびも敵を打ち負かしてきた。無敵の戦士として名をはせたのに、年の離れた若い番の言動に振り回され、まるで哀れな恋の虜のようだ。
もう番になって3年もたつのに、番への囚われと執心は身の内を焦がし増すばかりだ。

「いじめすぎたな。すまない」

くったり下を向いていた顎に手をかけ上を向かせるとソフィアリはまだ欲により色づいた目元で眉を下げラグを見つめ返してきた。

「俺こそ、眠ってごめんなさい。祭礼が無事に終わって、お食事も美味しくて、お風呂がまたすごく心地よくて…… それにラグがずっとそばにいてくれて嬉しかったから。でもさ、いつもラグが俺を甘やかすからいけないんだよ。ラグにとろとろにされちゃうから、眠くなるんだ」

さっき少しだけ支配的な姿を見せただけで泣き出したくせに、また性懲りもなくそんなことを言う、妖艶さと無邪気さの妙にまた惑わされそうだ。
ソフィアリは大好きなラグの弾力のある胸にすりすりと右手を這わせて顔を寄せてうっとりともたれかかる。こうして抱かれているだけで他では決して満たされない多幸感がどんどんと押し寄せてくる。

「ソフィアリ、俺が嫉妬すると嬉しいのか? お前といると、俺はお前に溺れて、どんどん愚かな男になりそうだ」

奪い尽くしたい欲と大切にしたい想いの両方が交互に強く押し寄せてくるのは毎度のことで、ラグの葛藤をソフィアリは知らないだけだ。およそ綺麗な感情ではない。自分を罵り嗤いたくなる。

深い青い目はラグがもう普段のラグに戻ったと安心しきって微笑みを讃えている。
ラグは長い睫毛の先がまだ湿ったままのソフィアリの目をじっと覗き込む。
目を合せてやると肯定の意を感じるのかソフィアリはいつも自信を持って行動するようになる。今も考えをまとめてラグに何かしら想いを伝えてくれようとしはじめた。
ソフィアリは愛する番の前では飾らない言動をするから少し幼げに見える。いまもまた幼子のような仕草で小首をかしげた。

「いつもさ。ラグは俺よりずっと大人で、俺が愚かなことをしてしまってもいつもなだめてくれて。穏やかで動じなくて。俺ばっかりほんといつでもしょうがなくて。街のみんながラグ様、ラグ様っていって慕ってきて。ラグがみんなのこと大切にしてくれているのは嬉しいけど、たまには俺だけで独占したい気持ちになることもあるんだよ? 俺の番なのにって。でもこれは口にしてはいけないことだし、だって俺は街の領主になるんだから」
「それは俺も同じだ。お前はみなの領主だ。いつも堂々としている。その若さで見上げたものだ」
それはソフィアリが選び取った定めで、ラグが番として応援するべき彼の未来だ。
「でもいつも本当は、俺ばかり嫉妬してたよ。俺のラグなのにって。だからラグも嫉妬しているだなんて思わなかった。……愚かになるのは駄目なの? ラグ言ってくれたよね。俺も間違えるって。この街に来たとき、俺たちは二人っきりだった。俺はラグよりほかに頼る人もいなくて、不安で。今は沢山の人が俺たちの周りにいてくれるけど、それでも俺にとってラグは誰かの代わりになる存在じゃない。唯一で特別なんだいいんだよ。別に俺は何でも完璧なラグが好きなわけじゃない。愚かだっていうなら、俺は愚かなラグが大好きなんだ」

ソフィアリの素朴で素直な告白にラグの胸はまた性懲りもなく高鳴ってしまった。死神が迎えに来ても動じない自信があったが、なよやかな番の一言でこの心臓はいつでも一突きにやられてしまう。

「俺も同感だ。お前だけが俺の全てを満たせる唯一だ。けして代わりはいない。だから二人きりの時は番としてお互いのためだけにある時間を大切にしよう」

するとソフィアリは大輪の花が咲いたような、華やかで鮮やかな明るい笑顔を浮かべてラグに口づけてきた。

「わかったよ。それが番の時間なんだね」

身近になりすぎて、ラグのなにもかもを知ったような気になっていた。でも違う。二人はまだ出会ってからの人生の方が短い。たった数年で沢山のことを乗り越えてきたが、まだまだお互いへの理解を深めるには時間がかかりそうだ。

「これからも沢山、ラグのこと知りたいな。今の気持ちとか」
「それは簡単だな。いいかげん、お預けは辛すぎる」

番の薄いが柔らかな唇に口づけるとラグは本音を口にしてほんのわずかに照れたような顔を見せた。その顔はいつもよりもずっとくだけてみえて、ソフィアリはラグにもっと近づけたような気がした。

「いいよ。今度は優しくして。ね?」

殺し文句をうけとるとラグは喜々としてちゅっちゅと再び柔らかく口づけをそこかしこに落とす。ソフィアリも心地よさげに微笑んだ。ピローを足元に移してその上に肩や足に触れないように注意しながらゆっくりとソフィアリを寝台に恭しくうつぶせに寝かせた。

「ラグ?」
「身体はつらくないか?」
「大丈夫。それよりこの格好はなに? 胸がこすれて痛い」
「お前、本当に眠っていたんだな」

薄絹に包まれた形がよくふわっとした尻が出るように腰布をまくり上げると、ラグは後孔に舌を這わせた。

「あっ、そんなとこ……」

先程までの無理で傷ついていないかを長く厚い舌を差し入れ解すようにしながら、グジュグジュと舐め確認する。
ソフィアリはうつ伏せのまま尻を揺らめかせてその恥ずかし行為に顔を枕にうずめながら耐える。
少しずつ身体が緩んできたのを確認すると、ラグは身体を起こして丁寧にソフィアリの黒髪を横に流して、ネックレスだけで包帯の他は丸見えの背中に口づけを落としてからゆっくりと覆いかぶさる。
両手を包み込むように上から握りしめ、自身のフェロモンを意識して放出するとソフィアリはその香りを嗅いで身震いした。かっと身体が熱く高ぶる。ヒートが起こる予兆にソフィアリは身を任せて酒に呑まれたときの酩酊感にた甘い疼きに身体は重く寝台に沈んでいく。

「いいぞ、このまま、眠くなったら寝てしまえ」

いいしな、ラグがソフィアリの怪我に気を配りながらも、後蕾目掛けてゆっくりと分厚く硬い筋肉の塊のような重たい腰を推し進めてくる。

「ああ!」

一見楽に見えるうつぶせ寝だが、むしろいつもよりも深くくわえ込んでいるような体位だ。しかもまったく逃げ打つこともできずにゆっくりと抜き差しされる。背筋をゾクゾクと快感が貫く。ラグの甘いムスクとマグノリアが混ざったようなフェロモンに包まれ、ソフィアリのヒートはさらに誘発される。
知らず腰から下がさらに緩み後孔は豊潤な蜜を垂らしてラグの侵入を柔らかく受け止める、灼熱の熱さに包まれた身体の中で腰に受ける衝撃と奥を駆け抜ける快感に苛まれはじめた。

(こんなのっ! 眠れるわけない)

「愛してる。ソフィアリっ」

混濁していく意識の中で『優しくしてっていったのに』となじろうと思ったのに、耳元でかすれて感じ切った男っぽい声を出されたから、背中の男を胸が締め付けられるほど愛しくなって、ソフィアリもまたラグの虜になってしまう。
初めはゆっくりだったリズムが太鼓でも叩かれているかのようにきっちりと激しいリズムに変化し寝台が軋むほど刻んでいく。
寸分の休みもなく生み出される快感にびくびくとソフィアリが声にならない声を上げながら震え、また痛い、きついと嬌声をあげる。

「とってぇ、つらい」

腕のリボンを引き抜いた後、一度くたりとした陰茎に巻き付けられた前の戒めをそのままにしていたことを忘れていたのだ。
しかし我を忘れるほどの刺激に苛まれたラグはそのまま腰をぐりぐりと押し付け、銀糸のネックレスと突き刺さるスパンコールの刺激で赤く擦れた乳首をまさぐって耳をかじり食む。痛みすら魅惑的な快感に変わってソフィアリは細い背をよじりながら再びびくびくと震え出した。

「またいく、いっちゃう」
「何度でもいけよ。俺を満足させてくれるんだろ? まだまだ時間はたっぷりある。何せ、二日間だからな」

ソフィアリは『二日の休暇』の意味を朦朧としながらも明晰な頭でしっかりと理解した。皆のための休暇ではない。
ラグがもぎ取った、これは二人のための、甘く狂おしい番の時間。
今宵初めてのラグが果てたとき、背中から駆け上がるような快感にソフィアリは一度意識を手放した。まだまだ完全にラットにはいたらない余裕のあるラグは獣のように暗がりに光る眼で起き上がり、ソフィアリを胡坐をかいた足の間に座らせると、おもむろに両足を抱え上げたまま再び欲望をソフィアリの身を埋め込む。
片足を腕から外すと股の間で濡れて硬くなった黒いリボンで痛々しく赤くなったソフィアリ自身を解放してやる。ようやく出口を得たどろりとした精が先端を伝いだらだらとながれ、女神の薄絹に大きなシミをつくった。銀糸のネックレスの間に黒髪が絡みつき、意識を再びなくしても苦し気に唇を開くさまはラグの色情を煽るばかりだ。

ソフィアリの青い目がうっすらと開かれて目が合う。ラグの大きな深緑の瞳に再び金の環を認めて、ソフィアリはフェロモンに支配されたとろんとした顔で艶やかに微笑んだ。日頃妖艶とか女神とか言われる美貌だが、番にだけ見せるこの顔はそんな形容すら凌駕する。凄艶さを極め、どこまでもラグを滾らせる。
舌を差し出し口づけをねだる仕草をしたが、しかし今度こそ眠気もピークに達した身体はゆらゆらということを聞かず、限界を迎えて再び幼子のように前のめりに体を寝台に投げ出そうとしてしまう。
しかしラグはその身を捕えた獲物のようにぎっちりと抱え込んだ。

「ソフィアリ。大事にしたい。でもどうしようもなく欲しいんだ」

しかしソフィアリの記憶がもったのはここまでで、そのあとは本格的なラットを先に迎えてしまったラグに揺さぶられるがまま、空が白むまでむさぼられ続けた。
いくら発情期を迎えたオメガとはいえ、体力のそもそもの量が違うフェル族のアルファ相手では底なしの欲を満たされても満たされてもつぎ足され続け、薄い腹が膨らむほど種付けされ、ソフィアリはついにはぴくりとも動かなくなった。

翌日昼頃。
約束通り様子を見に来たメルトは寝所の中で戦いつかれた戦士の様に眠る二人の乱れ切った姿に流石に言葉を失ったが、食べ物と清潔な寝具を差し入れたのみでそのまま部屋を後にした。

ぐちゃぐちゃの寝具の上昼日中の明るい日光に照らされたシーツの波間に浮かぶ二人の顔は、通い合った気持ちとどこまでも一つに溶け合った情交に満たされて、それでも幸せそうに微笑んで見えたからだった。
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