アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

589 卑怯者

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  ステッキをつくダンディなロマンスグレーの紳士が道のど真ん中に立っていたんだ。

 「(こいつだ。間違いない)」

 どこかから冒険者のタムラさんの声が聞こえてきた。

 ザッザッザッ‥‥
 ザッザッザッ‥‥

 7メルほどに近づいたんだ。この距離なら一足飛びに剣を合わせられる。すると相手の男が優美な挨拶をしてきたんだ。

 「はじめまして。さてさて、貴方たちが卵を破壊したのですかな?」

 なんだこいつ?

 「「「‥‥」」」

 「ああそれと、まぁ取るに足らぬ者ですが先日は私の部下まで殺してくれましたな」

 「「「‥‥」」」

 「ふむ。ダンマリですか。たかがヒューマンの分際で」

 そう言った男は手にしたステッキをメイズさんに向けながら言ったんだ。

 「では勝負しますかな」

 それは明らかに騎士団長のメイズさんを目線で指名しながらの発言だった。

 元々先頭を歩いてたのがメイズさんなんだ。だからもちろんその挑戦を買ったよ。

 「ロイズ帝国  帝都騎士団長メイズだ」

 「ほお。ヒューマンのくせに名前がありますか。では私も名乗るとしましょう。
 フルカス様第1の部下カパルと申します」

 左手に握るステッキを胸の前に、右手のひらを開き、女性のカーテーシのように片脚を下げて深々と一礼。

 そんな優美な貴族式の立礼をしてみせたカパルという男がステッキの鞘を外した。自然とメイズさん対カパルの1対1の勝負を演出したんだ。

 スーーッ

 ステッキの中からレイピアのような細い直刀が出てきた。石突きが尖ってるな。
ただ、ステッキにしてはグリップに魔石が埋め込まれてるのがなんか妙だな。

 うん、、、なんか妙だよ‥‥
 タイマンの勝負?‥‥
 違う、絶対違う。
 なんだろう、この違和感は‥‥
 考えろ、考えろ!

 ステッキという鞘を外したカパルと、レイピアのメイズさんが5メルほどの至近距離で向き合ったんだ。

 そうだ!
 わかった!
 メヒコと一緒なんだ!

 スーーーッッ

 俺もスッとメイズさんの真後ろに移動したんだ。コンマ1秒の遅れが致命傷になるから。

 「では参(る)」

 メイズさんが勝負の開始を自らの口で伝え終わる前だった。

 ダーーーーーンッッッ!

 ステッキの先端から砲撃のように火花が散った。やっぱりそうだ。メギドだ!


























 咄嗟に。メイズさんの前に3体の人型土兵を発現したんだ。

 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!

 くそーっ!土遁!って言う暇もないじゃないか!

 ボワワワッッッ!

 瞬時に。直線に並ぶ土兵が1体崩れ去った。

 ボワッッッ!

  でも2体めは半壊って感じかな。当然ゆっくりと崩れるけど。

 「アレク君ありがとう!助かったよ」

 メイズさんが振り返りもせずに言ったんだ。

 「いえ、メイズさん」

 「ほぉ。メギドを防ぎましたか」

 「防ぐじゃねぇだろ。この卑怯者め!」

 陸軍大将のサムさんが背の大刀を抜いて、上段から斬撃を放ったんだ。

 ブウウゥゥゥンッッッッ!

 ザクククッッッ!

 一瞬。ほんの一瞬。
たしかにカパルの背中側の景色が見えたよ。
 だけど、肩から腰にかけて斜めに斬ったはずの身体はそのまま磁石が引っ付くみたいに元に戻ったんだ。

 「「「「!!」」」

 「あ、ああ危ないですな。クックック。そんなことくらいで私が倒れると思いましたか」

 余裕綽々に応えるカパル。
 だけど、絶対ビビったよな。目も泳いでたし、言葉も最初は呂律が回ってなかったもん。

 「お返しです。3人まとめて塵におなりなさい」
 
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」

 カパルが剣先からメギドを連射したんだ。
 だけど‥‥同じ手は食わないぞ。そんでもって今度はちゃんと言うからな!

 「土遁。オヤジ分身の術!」

 ダンジョンでは夜の野営食堂の護りをしてくれたレベッカ寮長の等身大フィギュア。これのオヤジバージョンだ!ポージングするのは、はっきり言って暑苦しいゴリラオヤジ……。

 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!
 ズズズーーッッ!

 タケノコが地中から出るみたいに発現したんだ。

 ニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキ‥‥

 等身大フィギュアのオヤジバージョンだぜ!

 しかも1年のときよりさらに魔力も精度も上がったから、ガッチガチに仕上げたオヤジだよ。
 だからたとえメギドでもそう簡単に燃えてたまるかよ!
 いきなりの100体オヤジ。

 「な、な、な、なんだこれは!?」

 カパルが腰を抜かさんばかりに驚いたよ。

 「「「はぁぁぁ!?」」」

 それはメイズさんもサムさんも、なぜか声だけ聞こえるタムラさんもだ。

 「アレク‥‥あんたバカなの?あははははは‥‥」

 シルフィが腹抱えて笑ってるよ。
 この機を逃さないのがメイズさんだ。

 シュッッッ!
 シュッッッ!

 5メルの距離を保ったまま、レイピアの連撃を放ったんだ。

 ドンッッッ!
 ドンッッッ!

 カパルの胸部と腹部に硬貨ほどの穴が空いたんだ。だけど……。

 ジュワジュワジュワジュワ‥‥

 穴が埋まっていったよ。

 「ヒュ、ヒュ、ヒューマンのくせにやりますな。クックック。だ、だがこんな攻撃など造作もありませんぞ」

 余裕綽々、カパルが言ったんだ。

 「今度はもっとたくさん差し上げましょう。防げますかな。まぁヒューマン如きには無理でしょうな」
 
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」
 「メギド!」

 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!
 ダーーーーーンッッッ!

 「そんなもん効くもんか!頼むぜゴリラオヤジ!」

 ニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキニョキ‥‥

 
 もうわかったんだよ。
 それは俺でさえわかったんだから、強者の3人はもっとわかってるだろうな。

 「「「わかった!」」」

 コクコク
 こくこく
 コクコク
 
 それから見えないタムラさんにむけても

 コクコク
 こくこく
 コクコク

 「じゃあ、今度は俺らの番だな」

 どこからともなくタムラさんの声が聞こえたんだ。


――――――――――


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