アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

590 想定内 想定外

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 「もうわかった。君は悪魔そのものじゃないね。悪魔の部下‥‥そう、眷属だろうね」

 騎士団長のメイズさんが確信をついたんだ。

 「たしかにな。メイズの言うように、あんたからは勝てないほどの魔力は感じねぇしな」

 陸軍大将のサムさんも続いたんだ。

 「そ、そ、それがどうした?か、下等なヒューマン風情が!」

 あらら。カパルだっけ、コイツ動揺しまくってるよ。
 余裕綽々、穏やかな笑顔で登場したロマンスグレーの紳士キャラだったのに。
 今じゃただのキレた般若だな。

 「それだけじゃないね。そのメギドって魔法はその杖がないと発現できないよね?」

 「ち、違う!そ、そ、そんなことあるか!クソクソクソクソ糞ヒューマンめーー!」

 もうね、俺たちみんなが気づいていたんだよ。
 カパル、コイツのメギドはこのステッキから発現されてるってことに。だからステッキのハンドル部分(持ち手)に動力源の魔石が装着されているんだ。

 「(アレク、メイズとサムのあとも話し続けろ。できるだけ動揺を誘え)」

 会話を途切れさせなきようにと、姿が見えない冒険者のタムラさんが言ったんだ。

 「(はい)」

 タムラさんのその意味もわかったよ。だってカパルが落ち着いて反撃したり、或いは逃走を図って全方位にメギドを発現したりなんかしたら‥‥後方に控えてる仲間の誰かが傷つくことになるからね。
 そうならないためにも、コイツの意識をこっちに繋ぎとめとかないとな。

 メイズさんとサムさんの推理と解答が続いたんだ。

 「その杖と魔石がメギドを発現する魔力の源だね」

 「そ、そ、そんなことあるわけないだろ!ない‥‥でしょう」

 あーキャラ崩壊だよ。

 「じゃああんた、その杖なしでメギドを発現してみろよ」

 「‥‥」

 「どうした?ほらやってみろよ」

 「それとね、身体を斬られたり穴を開けられると修復はするけど魔力もかなり消費するよね」

 「‥‥」

 「だから僕のレイピアで開けた小穴よりサムが大刀で身体を斬ったほうが消費する魔力も多い。そうだろ?」

 「‥‥」

 「(いけアレク。思いきり罵倒しろ!)」

 「またダンマリかよおっさん。たかが悪魔の眷属の分際で。
 あんたフルフルなんとかの1番弟子みたいな言い方してたよな」

 「(そうだアレク、どんどん話せ)」

 これにシルフィも呼応したんだ。

 「アレク、私の言うとおりを復唱して。
 ガッツリマウントとるわよー!」

 「頼むよシルフィ。俺口下手だからさ」

 「知ってるわよ。あんたがヘタレなことくらい」

 なんで俺をディスるんだよ!泣くぞ!

 「ほら、早く復唱しなさい」

 「えーっとおっさんはカパパだっけ?」

 「カパルだクソガキ!」

 「どっちでもいいよ。おっさんは悪魔の下っ端に仕えてるんだろ。だから眷属の眷属、まぁ糞みたいな存在だな。ゴブリンの糞程度かな」

 「な、な、なんだと!許さんぞクソガキが!」

 カパルがすげぇ怖い顔で睨んでるよ。

 「まぁいいや。おっさんくらい弱っちい奴は何匹いても変わんねぇから。
 結局そのメギドもあと2、3発撃ったら終わりだろ?
 てかステッキの魔石、もう色も変わってんじゃん」

 あっ、確認してるよ。

 「‥‥」

 「だからー、おっさん黙ったってバレバレなんだって」

 「違う違う違う違ーーーう!このクソガキ、糞ヒューマンめーーー!」

 「もういいよ。見てみろよ。周りに俺たちの味方もいるだろ。みんな強いぞ。でもなおっさん、おっさんのま後ろにはいねぇだろ。許しやるよ。ほら、早く逃げろ」

 「だ、だ、誰が逃げたりするものか!」

 そうは言いつつ、カパルに逃走する気配が濃厚になってたんだ。

 「いいよ無理しなくて。逃げておっさんの糞親分に逃げてきましたって伝えろよ。糞カパパが仕える糞親分に」

 「カパパだと!許さん許さん許さん許さん許さん許さん!」

 「えーっと糞のおっさんの糞親分、なんていうんだっけ?糞カパパの糞フル親分?
 糞フル?それともカパパ糞フル?
 受けるわー。わはははは‥‥」

 「ぐぬぬぬぬぬーーーっっ!許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん‥‥!」

 ダンダンダンダンダンダン‥‥!

 糞カパルがステッキで地面を感情のおもむくまま力任せに突きまくったんだ。
 そろそろ集中も切れまくってるな。

 あっ!
 タムラさんが動いた!

 斬ンンンッッッ!

 「痛ぇーーーーー!」

 突然姿を現わした冒険者のタムラさん。
 現れるままカパルのステッキを持った腕ごと斬り飛ばしたんだ。

 スッ‥‥

 あっ、また消えたよ。どこだ?すげぇなこの人。

 「ああ、この杖なんだね。これをこうして‥‥」

 そしてステッキを拾ったメイズさんが‥‥ 
 なんの説明もないままに‥‥

 ダーーーーーンッッッ!

 「や、や、やめろーーーっっ!」

 ステッキの先端から砲撃のように火花が散ったんだ。

 「これは僕でも発現できるんだねメギドが。うん、これは実に便利な杖だね」

 「ハァハァハァハァハァハァ‥‥」

 間一髪避けることに成功したカパル。
 (たぶんメイズさんはわざと外したな)
 メイズさんが撃ったメギドは後方のオヤジフィギュアを直撃したんだ。
 ぼろぼろと崩れるオヤジフィギュア……。

 「おやっさんがかわいそうだろメイズ」

 「そうだねサム」

 わははははは
 ワハハハハハ

 「ハァハァハァハァ‥‥もう許さん。お前たちだけは絶対に許さんからな。かくなる上は‥‥」

 シユユユュュュ‥‥

 カパルのおっさんの身体から黒い煙が噴き出してきたんだ。



 【  フルフル、フルカスside】

 「フルカスよ、お主の部下カパルにもしものとき、よいのかえ?」

 「ははフルカス様。もちろん証拠も何1つ残さぬ形で終わらせまする。1,000人や2,000人すぐに消し飛びますぞ」

 「そうかえ。実験もあとわずか。ではまた一歩ずつ焦らずにやるでおじゃる」

 「はは」



























 「ほらステッキもなくなったよ。どうするよ糞カパパのおっさん?」

 「ほざけ糞ヒューマンのクソがき!」

 シユユユュュュ‥‥

 黒い煙がどんどん湧いてきてるよ、このおっさん。























 (こんな小物、アレク独りで十分だけど‥‥なにかを見落としてるわ‥‥。
 なにせ1,000年前だもの)

 「こうなったらお前たちを道連れに消滅してやるわ。ヒューマンの街なぞ半分は抉ってやる」

 そう言ったカパルに反応したのがシルフィだったんだ。

 「アレク危ないわ!」

 それは久しぶりに聞くシルフィの叫び声だった。
 

――――――――――


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