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第十三章 陰謀の気配
第百六十六話 心の暗雲
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侵入者騒ぎや精霊騒ぎも落ち着いた所で、イズミは本来の目的である旅の再開準備を始めていた。
ブロズムナード辺境伯からの饗しもあったが、あまり慣れていなかったイズミとベリアはとても緊張した食事を経験した。
気にせずに食べてくれと言われても、高級なテーブルクロスに美しい食器、辺境伯お抱えの料理人が腕によりをかけて作った品々なのだ。
気にするなと言われても、流石に無理な話である。
「イズミよ。聞きたい事がある」
そんな緊張疲れを癒すべく、日が沈みきった空を見ながらマスタングを停めている馬車置場の側で、1人コーヒーを作っているイズミに向かい、ゾルダが声をかけてきた。
「お前の旅の目的は何だ?」
ゾルダの質問を聞いたイズミは、少し考える。
「その地でしか食べられないような、美味い飯を食べる為。それじゃ駄目か?」
「私には、無理矢理に理由を作っているように見える。何かを隠すような、逃避に近いものを感じる」
「なぜ、そう思う?」
ゾルダの言う逃避について、イズミはどう見えているのかが気になった。
「最初に感じたのは模擬戦の時だ…初めは渋っていたのに、戦闘が始まるとまるで別人だった。過去に戦った魔物や賊とも違う、まるで行き場のない怒りをぶつけているかのようだった」
イズミは削り終えた豆と水を小鍋に入れ、焚火で熱し始める。
「次に、私やエレナ様に話した魔法での戦闘術だ。効率的に戦力や戦意を削ぐ戦術、確実に殺す事に特化した魔法運用、何か強い怨みでも抱いているのか、戦いに楽しみでも見出したのかと疑った程だ」
ゾルダは話を続ける。
「そんな男が美味い飯の為に旅をしていると言われても、納得は出来ないな」
「怒り、怨みね…」
そう言って、イズミは力無く笑った。
元いた世界に対する未練のようなものが、脳裏をよぎったのだ。
この世界に転移していなければ、出来た事やれた事が沢山ある。
それをほぼ全て奪われた理不尽さに、真に理解をしてくれる者がいない寂しさに。
行き場のない感情が、何かの拍子に溢れたり零れたりする。
その切っ掛けになるのは、現状では戦闘なのだ。
戦いで怒りの感情を発散している?
そんな疑問が浮かんだイズミは、コーヒーを啜り小さくため息をついた。
面倒な事を考えるのはなるべく止めたいが、生きている限りそれは無理なようだ。
「そんな感情もあるかもしれないが…アンタには関係の無い話だな」
「何に対しての怒りだ?」
「…理不尽、かな」
イズミは小鍋からコーヒーをカップへ注ぎ、マスタングに頼んでウイスキーを実体化させる。
生クリーム無しのアイリッシュウイスキーもどきを作り、静かに飲んだ。
「感情の捌け口として戦いに時間を費やすくらいなら、旅をして美味い飯を食いたいね」
考えるだけ時間の無駄なのだ。
イズミはもう1つカップを出して、ゾルダに飲んでみるか聞いた。
「コーヒーって飲み物だ。俺の作り方が下手で苦い。酒は入れてないが、飲むか?」
「戴こう…黒いな。カップの底が見えない」
ゾルダがカップを受け取ると、湯気の出るコーヒーを恐る恐る口へと運んだ。
「ブヴァッ!?なんという苦さだ!」
勢い良く噎せたゾルダだったが、一度落ち着いてから再度挑戦する。
「…飲めない訳では無いが、飲みたいとは思わぬ味わいだ。苦味が強過ぎる」
「もう少し酸味があった方がバランスが良いよな」
「そう言う話でもないと思うが」
イズミがゾルダに酒瓶を渡そうとした時、マスタングが魔法反応を検知した。
「マスター、敷地外に反応を検知しました。数は6名、侵入する可能性が高いです」
イズミはカップに残ったコーヒーを一口で飲み干すと、ショルダーバッグを持って立ち上がる。
バッグからメガネを取り出してかけると、遠くに魔力の揺らめきが見えた。
「どうやらお客さんが来たみたいだ…とりあえず挨拶に行くとしますか」
イズミがマグナムを抜いて歩き出す後ろで、ゾルダが屋敷に報告をすると行って行動を始めた。
「怒りか」
そんな言葉が漏れ出たが、直ぐにかき消して反応のある方向へ進んで行った。
ブロズムナード辺境伯からの饗しもあったが、あまり慣れていなかったイズミとベリアはとても緊張した食事を経験した。
気にせずに食べてくれと言われても、高級なテーブルクロスに美しい食器、辺境伯お抱えの料理人が腕によりをかけて作った品々なのだ。
気にするなと言われても、流石に無理な話である。
「イズミよ。聞きたい事がある」
そんな緊張疲れを癒すべく、日が沈みきった空を見ながらマスタングを停めている馬車置場の側で、1人コーヒーを作っているイズミに向かい、ゾルダが声をかけてきた。
「お前の旅の目的は何だ?」
ゾルダの質問を聞いたイズミは、少し考える。
「その地でしか食べられないような、美味い飯を食べる為。それじゃ駄目か?」
「私には、無理矢理に理由を作っているように見える。何かを隠すような、逃避に近いものを感じる」
「なぜ、そう思う?」
ゾルダの言う逃避について、イズミはどう見えているのかが気になった。
「最初に感じたのは模擬戦の時だ…初めは渋っていたのに、戦闘が始まるとまるで別人だった。過去に戦った魔物や賊とも違う、まるで行き場のない怒りをぶつけているかのようだった」
イズミは削り終えた豆と水を小鍋に入れ、焚火で熱し始める。
「次に、私やエレナ様に話した魔法での戦闘術だ。効率的に戦力や戦意を削ぐ戦術、確実に殺す事に特化した魔法運用、何か強い怨みでも抱いているのか、戦いに楽しみでも見出したのかと疑った程だ」
ゾルダは話を続ける。
「そんな男が美味い飯の為に旅をしていると言われても、納得は出来ないな」
「怒り、怨みね…」
そう言って、イズミは力無く笑った。
元いた世界に対する未練のようなものが、脳裏をよぎったのだ。
この世界に転移していなければ、出来た事やれた事が沢山ある。
それをほぼ全て奪われた理不尽さに、真に理解をしてくれる者がいない寂しさに。
行き場のない感情が、何かの拍子に溢れたり零れたりする。
その切っ掛けになるのは、現状では戦闘なのだ。
戦いで怒りの感情を発散している?
そんな疑問が浮かんだイズミは、コーヒーを啜り小さくため息をついた。
面倒な事を考えるのはなるべく止めたいが、生きている限りそれは無理なようだ。
「そんな感情もあるかもしれないが…アンタには関係の無い話だな」
「何に対しての怒りだ?」
「…理不尽、かな」
イズミは小鍋からコーヒーをカップへ注ぎ、マスタングに頼んでウイスキーを実体化させる。
生クリーム無しのアイリッシュウイスキーもどきを作り、静かに飲んだ。
「感情の捌け口として戦いに時間を費やすくらいなら、旅をして美味い飯を食いたいね」
考えるだけ時間の無駄なのだ。
イズミはもう1つカップを出して、ゾルダに飲んでみるか聞いた。
「コーヒーって飲み物だ。俺の作り方が下手で苦い。酒は入れてないが、飲むか?」
「戴こう…黒いな。カップの底が見えない」
ゾルダがカップを受け取ると、湯気の出るコーヒーを恐る恐る口へと運んだ。
「ブヴァッ!?なんという苦さだ!」
勢い良く噎せたゾルダだったが、一度落ち着いてから再度挑戦する。
「…飲めない訳では無いが、飲みたいとは思わぬ味わいだ。苦味が強過ぎる」
「もう少し酸味があった方がバランスが良いよな」
「そう言う話でもないと思うが」
イズミがゾルダに酒瓶を渡そうとした時、マスタングが魔法反応を検知した。
「マスター、敷地外に反応を検知しました。数は6名、侵入する可能性が高いです」
イズミはカップに残ったコーヒーを一口で飲み干すと、ショルダーバッグを持って立ち上がる。
バッグからメガネを取り出してかけると、遠くに魔力の揺らめきが見えた。
「どうやらお客さんが来たみたいだ…とりあえず挨拶に行くとしますか」
イズミがマグナムを抜いて歩き出す後ろで、ゾルダが屋敷に報告をすると行って行動を始めた。
「怒りか」
そんな言葉が漏れ出たが、直ぐにかき消して反応のある方向へ進んで行った。
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