異世界無宿

ゆきねる

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第九章 海を目指して

第百十四話 面倒事を押し付け、颯爽と走り去る男

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「上位のドラゴン相手ですと、現在のマスターの使用可能な装備では落とすのも困難かと」

「せめて50口径は必要といった所か。後で考えるとしよう」

そんな話をしている間に、馬車がマスタングの近くまでやって来る。
相手も安全を考慮して距離をとってはいるが、それはイズミやマスタングに対してよりもドラゴン対策に近いだろう。

イズミは肩から下げたマグナムを相手が馬車から降りてくる前に抜いて、様子見に降りてきた男の動きを観察した。

「派手にやられたな…アンタ無事か?」

肌は浅黒く、武器を取り出す動作に無駄は無いように見える。
盾は持っておらず、巨大な両手剣1つを構えてイズミへ話しかけてきた。

「まあな。だが、俺の武器では止めを刺しきれなくてね」

イズミは瀕死のドラゴンを左手で指差しながら、男の反応を確かめた。

「レッドドラゴンを地面に落とすだけでも、かなり大変なんだがな…俺が止めを刺そうか?」

両手剣を持ち上げてアピールして来た男に、イズミは毎度の事ながら面倒を押し付けようと決めた。

「それは助かる。金貨10枚くれるなら、そのドラゴンの素材は譲るよ」

でも、1本くらい牙は欲しいかな?
そんな冗談を笑いながら言いつつ男を見ると、男が何かを考える素振りをみせると口笛を吹いた。
その音を聞いた仲間が、馬車から何人か降りてきた。

「クロード、何か問題でもあった?」

降りてきた仲間の1人、身体の急所を金属のプレートで保護している女剣士が聞いた。

「うむ。この男がドラゴンを落としたのだが、締めれば金貨10枚で素材を譲ると言うんでね…乗るか?」

女剣士がイズミを睨みつけた。

「ドラゴンを落とすだけでも大戦果だ。それを何故譲るのだ?」

「…俺は気楽な旅をしている無宿人でね。素材を手にしても運べないし、売れる相手も知らない。なら、有効活用出来そうな奴にさっさと渡すのが楽なのさ」

イズミが当然のように答えたので、目の前にいる男達は相談に入った。

「仲間と相談する前に、そのドラゴンの首は落としておくよ」

クロードと呼ばれた男が注意しつつドラゴンに近付き、両手剣を何度か振り下ろしてドラゴンの首を落としきった。

俺もあんな剣捌きが出来た方が良いのだろうか?
そんな事を考えていたら、マスタングから現実的な指摘を受けた。

「マスター、剣よりも射撃の練習をして下さい。マスターの射撃スタイルは古いのですから、練習をしてより実戦的にならなければ、武器の利点を活かしきれません」

「…せめてクラシックと言って欲しいな」

射撃スタイルが古いのは、一昔前とかのアクション映画が好きだった影響だ。
1970年代~90年代、物によっては60年代のアクション映画を良く見ていたのだ。
それは仕方がない。

「相談し終えたぞ…アンタ名前は?」

「イズミだ。それで、相談結果は?」

イズミが聞くとクロードが金貨を10枚取り出した。

「数十倍とかの稼ぎになるが、本当に金貨10枚で良いのか?」

「男に二言は無いさ」

金貨10枚を受け取ったイズミがマスタングに乗り込もうとしたら、クロードに止められた。

「おい待て!せめてこの位は持って行ってくれ」

そう言ったクロード達が、手際良くドラゴンの素材を取り始めた。
渡されたのは、大きな牙が2本と、爪が1本だった。

「それだけでも旅先で金欠になっても金になる。これだけは受け取ってくれ」

イズミはそれを受け取ると、改めてマスタングに乗り込んだ。

「ところで、アンタはこれから何処へ行くんだい?」

女剣士が聞いて来たので、窓を開けてから声を大きめにして言った。

「海を見に行くのさ」

イズミはアクセルを踏み込むと、マスタングがゆっくりと前進を始める。

「マスター。まずは10時方向に進みましょう」

マスタングの指示に従って走り出す。
イズミにとって、ドラゴンで騒いでいる場合ではないのだ。
海が、海鮮料理が待っている。

その期待感が、イズミの旅をする原動力の1つとなっていた。
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