上 下
135 / 359
王都突入編

134話 王都エレメント

しおりを挟む
「えーと、ゴザルの現在地は王都を囲む『グラン海』ってところかな」

 フレンドリストにはそう表示されていた。
 いやまあ、納得の結果である。それもそのはず、めちゃくちゃ海上付近で落下してたもんね。
 ゴザルについてはあとで合流してくることを信じて保留にしよう。

 大陸龍の飛行は順調に進み、王都が薄っすらと見えてきた。
 巨大な王宮が中心にある国、その規模はウィンウィン、アクアニアス、ストーンヴァイス三国の数倍の国土となっている。
 龍に乗りながら、この光景を目に収めることができるなんて――こうなった境遇は決して幸運とは言えないが、ゲームファン冥利に尽きる。

 僕とナコは遠く視界に入る王都を静かに見つめ続けていた。
 長く険しい今までの旅路を振り返るよう、ただずっと見つめ続ける。これだけの広さならば、僕の妹やナコのお姉さんだっている可能性も高い。
 
 ――ついに、王都エレメントに到着した。
 
 この王都はオンリー・テイルに置いて、全てが集まる国と言われていた。
 レアアイテム、金銀財宝、腕に自身があるもの、富と名声を求めるもの、この王都には全てが集ってくる。
 ゲーム時から変わらず、冒険者の活動拠点となっていた。

「クーラ、王都にたどり着きましたね」
「うん、長かったね」

 感動が胸を押し寄せる。
 旅始めに掲げた目標、ナコと一緒という事実がなによりも嬉しかった。
 まず最初に、ニャニャンと相談し合った結果"Nightmares"のホームに向かうことになった。現在ホームにはHomura ――ホムラが常駐しているという。
 大陸龍から降り立ち、いざ王都というタイミングで僕は重大なことを思い出す。

「今さらなんだけど、ゴザル不在で大丈夫かな」
「私たち同行という形で来ていますもんね」

 そんな心配を一蹴するよう、ニャニャンが僕たちの手を引っ張りながら、

「大丈夫、にゃっちがいればオールオーケー。あー、クランにゃん、"Nightmares"のニャニャン御一行が通るにゃあ」
「はーい。おかえりなさい」

 慣れ親しんだ会話、受付嬢の方と仲良しのようだ。
 ニャニャンは皆が並ぶ列とは別のゲートに、僕たちも身分や冒険所カードを確認されることなく普通に通れた。

「こ、こんな簡単でいいのでしょうか?」
「ナコにゃん、心配ご無用っ! 意外とセキュリティはバッチリ、このゲートに魔石が入っていてね、にゃっちの冒険所カードに反応して通れるようになるの」

 ナコの疑問にニャニャンが答える。

「にゃっちはね、この王都ですっごい尊い存在なのにゃあ。多少、いやかなりの融通は無理やり通せる。順番待ちしなくても、王様態度で楽に通過なのね」
「……ニャニャン、どこのお偉いさんの弱味を握ったんだ」
「どうしてそっち方面ばかり考えるにゃあっ?! ちゃんと王都で武勲を重ねてきたのよ。ソラにゃんがフラフラしてる間にね」
「好きでフラフラしてたわけじゃないよ」
「にゃっちをプレイヤーサーチしたらよかったのに。アクアニアス、ウィンディア・ウィンドなら大陸龍乗り回してる間に何度も滞在してたにゃあ」
「いや、ニャニャンずっとオフにしてたじゃないか」
「ん? してないよ?」

 ニャニャンが首を傾げる。

「にゃっちは常に正々堂々、この世界に転生してからオールオンにゃあっ!」
「えぇっ、Nyanyanで検索してもでてこなかったのにっ!」
「んんぅ? もう一回、にゃっちの前で同じように検索してみろ?」
「プレイヤーサーチ――Nyanyan」
「……」

 僕のウィンドウを見てニャニャンが無言になる。

「ほら、今もでてこないよ」
「……ソラにゃん、一言いいかにゃあ」
「どうかした?」
「ゴザルにゃんと揃いも揃って! ソラにゃんもバカ馬鹿なのっ?! にゃっちのプリティーな名前の『n』が1個抜けてるじゃあにゃいかっ!」

 犬歯を剥き出し、ニャニャンが叫ぶ。
『Nyanyann』と『Nyanyan』、僕がプレイヤーサーチした名前は後者、ニャニャンの言う通り、確かに『n』が一個抜けていた。
 この一文字が運命を左右、僕はなんて致命的なミスを犯していたのだ。
 項垂れる僕、ナコが慰めるよう僕の背中をポンポンしながら、

「つまり、クーラが検索名を間違えていたということですか?」
「そうそう、初歩的なミスね。ソラにゃんさあ、サーチ名ミスってなかったらもっと早くにゃっちと出会えて楽ちんな旅路になったかもしれないのに」
「Nが多すぎるんだよっ! 改名して減らしてこいニャニャンっ!!」
「うわぁっ、まさかまさかの逆ギレにゃあっ! 自分が悪いのに怒るのってどうかと思うのっ!」
「くそぉおお! 正論はやめてくれっ!」
「クーラ! 落ち着いてください!」

 なんとも騒がしい入国、僕とナコの王都第一歩となるのであった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

処理中です...