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魔法少女遭遇編
07話 事前の準備は大事
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奴隷商の店をでる。
すでに日は落ちかけており、コールディンを追いかけるならば――すぐに行動しなくてはならない。
「あ、あの、ご主人様。私たちはどうすれば」
僕の後ろを付いてくるミミモケ族が言う。
年端もいかない子が二人、僕と同い年くらいの子が一人、皆その姿はすごく怯えて見える。
これからなにをされるのか、恐怖に苛まれた表情だった。
「安心して、大丈夫だよ。君たちを解放する」
「えっ? か、解放、ですか?」
「うん。故郷は近いのかな?」
「は、はい。先ほどお二人が話されていた場所、そこをさらに北東に登った『ファーポッシ』という村です。狩りをしていた最中、盗賊に襲われてしまいまして」
盗賊、か。
解放したとてまた同じことが起きる可能性は高い。現状、すぐに考えられる案は一つだった。
僕はミミモケ族の皆を前に、これからのことを打診する。
「さっきも言った通り君たちを解放するんだけれど、僕を信じて奴隷輪はそのままでもいいかな?」
「そのまま、ですか?」
「奴隷輪の上書きはできないから、僕という主を残して予防線を張っておきたいんだ。僕は特に君たちになにかをしてほしいという考えは持っていない。自身の用事の最中、君たちにたまたま出会って、お金でどうにかなるのであればと思って助けたんだ」
僕は頭を下げる。
まさに言葉通り、ただの偶然ただの偽善だ。お金を持っていたから、そんな些細な理由にすぎない。
「なにを謝るのでしょう。どんな理由であれ助けてくれたことは事実です。私たちはあなたに救われました。ありがとうございます、ご主人様」
ミミモケ族の皆が、口を揃えて同じことを言う。
「そう言ってくれると嬉しいよ。それじゃ、ファーポッシの道中まで一緒に向かおう。街中に『飛車』の貸出所があるから乗って行こうか」
「……本当にありがとうございます、ご主人様」
「あはは。ご主人様なんて堅苦しく呼ばなくていいよ」
「は、はいっ! では、お姉様とお呼びしても?」
「……」
ぉ、お姉様か。
その呼び方に対し上手く説明できる気がしないため、僕は頷き返すしかないのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
飛車とは、空を飛ぶ竜の乗り物である。
スピード重視であり、乗車人数は3人~4人ほどが限界となっている。値段も高額であるため、緊急でない限り使用する人は少ない乗り物だ。
その他、地上を走るトカゲの乗り物の『角車』があるのだが――こちらは真逆、荷物を大量に載せられるぶんスピードが遅い乗り物となっていた。
まず間違いなく、コールディンは後者だろう。
ここまで向かう最中、例のルートに向かって走る一台の角車が空の上から見えた。
ファーポッシの道中にて、僕は単独で降車し――ミミモケ族の皆と別れる。
先回りは成功、マップを広げて再度ルートを確認する。奴隷商のおっさんが言っていた道は間違いなくここだ。
僕は大きい一本道を観察しながら歩く。
時刻は夜のはじめごろ、すでに日は落ちている。暗闇に溶け込んで仕掛けるには丁度いい頃合いだろう。
アイテムボックスを表示し、使えそうなアイテムをピックアップしていく。
うーむ、襲撃する以上顔は隠しておきたいな。
・ 雪だるまんフード(これで君も雪だるま?)
頭に装着、戦隊ヒーローよろしく決めポーズをとってみる。
水着に雪だるまかぁ、季節感にメリハリついてるぅっ! これってもうただの変質者じゃ――細かいことは考えないでおこう。
ある程度顔が隠れたらそれでいいんだ。
……さて、どこで仕掛ける?
仕掛けるに当たって問題は山積みだ。可能性として高いのが護衛だろう。モンスターが出現する道中、その点に対して対策がされていないとは考えられない。
はたして、戦闘になったら勝てるのだろうか?
僕の現在のレベルは10、ビギナッツによるパワープレイを施したとて10なのだ。
懸念材料があるとすれば、ここはもう疑いようのない現実であり、全てがリアルだということ。一つ一つの行動に対してやり直しがきかないのだ。
僕は改めてステータスを開示する。
《ネーム》 Kura
《ジョブ》 触術師(レベル10)
《種族》 人族
《保有スキル》 触手 捕食
最初に、ステータスを見た時から気付いていた。
ゲームではお馴染み、見慣れたいつものレベル表記。だが、その中にあるべきはずの重要項目がないのだ。
「……HPとMP、攻撃防御、基本的なステータス数値はどこにいったんだよ」
熟考している間に角車が走る音、地面の振動が身体に伝わってくる。
やるしかない、やるしかない、やるしかない。このチャンスを逃せばもう手がかりは掴めない。
僕は覚悟を決めて、アイテムボックスから『火竜玉』を取り出した。
すでに日は落ちかけており、コールディンを追いかけるならば――すぐに行動しなくてはならない。
「あ、あの、ご主人様。私たちはどうすれば」
僕の後ろを付いてくるミミモケ族が言う。
年端もいかない子が二人、僕と同い年くらいの子が一人、皆その姿はすごく怯えて見える。
これからなにをされるのか、恐怖に苛まれた表情だった。
「安心して、大丈夫だよ。君たちを解放する」
「えっ? か、解放、ですか?」
「うん。故郷は近いのかな?」
「は、はい。先ほどお二人が話されていた場所、そこをさらに北東に登った『ファーポッシ』という村です。狩りをしていた最中、盗賊に襲われてしまいまして」
盗賊、か。
解放したとてまた同じことが起きる可能性は高い。現状、すぐに考えられる案は一つだった。
僕はミミモケ族の皆を前に、これからのことを打診する。
「さっきも言った通り君たちを解放するんだけれど、僕を信じて奴隷輪はそのままでもいいかな?」
「そのまま、ですか?」
「奴隷輪の上書きはできないから、僕という主を残して予防線を張っておきたいんだ。僕は特に君たちになにかをしてほしいという考えは持っていない。自身の用事の最中、君たちにたまたま出会って、お金でどうにかなるのであればと思って助けたんだ」
僕は頭を下げる。
まさに言葉通り、ただの偶然ただの偽善だ。お金を持っていたから、そんな些細な理由にすぎない。
「なにを謝るのでしょう。どんな理由であれ助けてくれたことは事実です。私たちはあなたに救われました。ありがとうございます、ご主人様」
ミミモケ族の皆が、口を揃えて同じことを言う。
「そう言ってくれると嬉しいよ。それじゃ、ファーポッシの道中まで一緒に向かおう。街中に『飛車』の貸出所があるから乗って行こうか」
「……本当にありがとうございます、ご主人様」
「あはは。ご主人様なんて堅苦しく呼ばなくていいよ」
「は、はいっ! では、お姉様とお呼びしても?」
「……」
ぉ、お姉様か。
その呼び方に対し上手く説明できる気がしないため、僕は頷き返すしかないのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
飛車とは、空を飛ぶ竜の乗り物である。
スピード重視であり、乗車人数は3人~4人ほどが限界となっている。値段も高額であるため、緊急でない限り使用する人は少ない乗り物だ。
その他、地上を走るトカゲの乗り物の『角車』があるのだが――こちらは真逆、荷物を大量に載せられるぶんスピードが遅い乗り物となっていた。
まず間違いなく、コールディンは後者だろう。
ここまで向かう最中、例のルートに向かって走る一台の角車が空の上から見えた。
ファーポッシの道中にて、僕は単独で降車し――ミミモケ族の皆と別れる。
先回りは成功、マップを広げて再度ルートを確認する。奴隷商のおっさんが言っていた道は間違いなくここだ。
僕は大きい一本道を観察しながら歩く。
時刻は夜のはじめごろ、すでに日は落ちている。暗闇に溶け込んで仕掛けるには丁度いい頃合いだろう。
アイテムボックスを表示し、使えそうなアイテムをピックアップしていく。
うーむ、襲撃する以上顔は隠しておきたいな。
・ 雪だるまんフード(これで君も雪だるま?)
頭に装着、戦隊ヒーローよろしく決めポーズをとってみる。
水着に雪だるまかぁ、季節感にメリハリついてるぅっ! これってもうただの変質者じゃ――細かいことは考えないでおこう。
ある程度顔が隠れたらそれでいいんだ。
……さて、どこで仕掛ける?
仕掛けるに当たって問題は山積みだ。可能性として高いのが護衛だろう。モンスターが出現する道中、その点に対して対策がされていないとは考えられない。
はたして、戦闘になったら勝てるのだろうか?
僕の現在のレベルは10、ビギナッツによるパワープレイを施したとて10なのだ。
懸念材料があるとすれば、ここはもう疑いようのない現実であり、全てがリアルだということ。一つ一つの行動に対してやり直しがきかないのだ。
僕は改めてステータスを開示する。
《ネーム》 Kura
《ジョブ》 触術師(レベル10)
《種族》 人族
《保有スキル》 触手 捕食
最初に、ステータスを見た時から気付いていた。
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「……HPとMP、攻撃防御、基本的なステータス数値はどこにいったんだよ」
熟考している間に角車が走る音、地面の振動が身体に伝わってくる。
やるしかない、やるしかない、やるしかない。このチャンスを逃せばもう手がかりは掴めない。
僕は覚悟を決めて、アイテムボックスから『火竜玉』を取り出した。
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