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二部 晃と霧恵編
弱いアルファでいいですか? 10
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下着姿でバスルームから出ようとしても、小さな布地から中心がはみ出そうになっているのか、モジモジと膝を擦り合わせて動けない晃に、霧恵が手をのべる。抱き上げてしまうと、霧恵の下着姿に反応している一物が勃ち上がって布地を押し上げて、横からも上からもはみ出ているような状態だった。
「みらんといてぇ」
「晃のここも、ここも、全部あたしのなんだから、良いじゃない」
ベッドの上に下ろした晃のはみ出ている中心を指先で突き、小さなお尻を揉むと、「ぴゃん!?」と可愛い悲鳴を上げてシーツの上で跳ねるのが可愛い。
「アナタも触って良いのよ?」
促せば、余程気に入っているのか、霧恵のたっぷりとした胸に手を伸ばして、晃がふにふにと揉んでくる。手の平に余るような大きさのそれは、指先を埋めるほどに柔らかく、弾力がある。揉まれて乳首しか隠さない刺繍の下に指を入れて尖りを摘んで捏ねるのも気持ち良くて、霧恵も興奮してきた。
舌なめずりして、サイドテーブルの上から、避妊具と一緒にアクセサリーを入れるビロードの箱を持ち上げる。アクセサリーショップで必死に晃が霧恵のイヤリングを選んでいた間に、霧恵も晃にアクセサリーを選んでいたのだ。
しゃらりと取り出したそれを、興味津々に見つめる晃は、それが何か分かっていないだろう。フリルのブラジャーをずらして、色の薄い小さな粒のような胸の尖りにリングを付けると、晃の口から悲鳴が上がった。
「ちべたっ!?」
「冷たかった? すぐに慣れるわ」
乳首に装着する飾りのついたリングと繋がったチェーンは、首のチョーカーの上に巻き付ける。
「ニップルネックレスって言うのよ。こうやって、可愛い晃の胸を飾って、気持ち良くさせるものなの」
胸の間で繋がっているチェーンに指を引っ掛けて引っ張ると、ビクビクとシーツの上で晃が跳ねる。
「ひぁっ!?」
「感度良好ね。とっても可愛いわ」
戸惑う晃の口をキスで塞いで、霧恵は下着を履かせたまま、ずらして中心を取り出して、避妊具を被せる。脱げかけた下着に、ずれたブラジャーから覗くニップルネックレスが輝いて、非常に嫌らしくて最高に興奮する。戸惑って泣き出しそうな晃の中心を、濡れて熱い場所に導いて、腰を落として飲み込んでしまうと、その顔が快楽に蕩けた。
「晃は、今からお馬さんになるのよ。上手に跳ねてみせて?」
乗りこなしてみせるから。
くいくいと手綱を取るようにニップルネックレスのチェーンを指で引くと、胸の尖りが引っ張られて感じるのか、ビクビクと晃が跳ねる。その拍子に腰も跳ね上げて突き上げてくるのが、気持ち良くて、霧恵は容赦なくニップルネックレスを引いた。
「ひぃっ! やぁっ! とれてまうぅ!」
「そんなに簡単に取れないものよ。……おっぱい、吸う?」
「すう!」
突き上げてくる晃を締め付けているので、悦くないわけではないだろうが、未知の快感に泣き出してしまった晃に、霧恵は胸を押し付けた。顔に押し付けられた胸を揉んで、刺繍をずらして晃が幼子のようにちゅうちゅうと尖りを吸う様子に、本当に母親にでもなったような気になってしまう。
「しばらくは、パパにはなれなさそうね」
「んっ、ふぇ?」
「なんでもないわ」
本人がまだ甘えたい時期を越えなければ、赤ん坊ができても父親になるのは難しい。結婚をしなくても、子どもを産んで育てる自信も財力もある霧恵だが、晃にその心の準備ができていなければ、まだ作る気はなかった。
「パパって……ひぁぁっ!」
「あたしに溺れて忘れてしまいなさい」
細い晃の腰の上で下着を着けたまま、ずらしただけの状態で腰を振れば、擦り上げられた晃の中心が一際大きく膨れ上がって、弾けるのを感じる。
避妊具を取り替えるために一度引き抜くと、晃が霧恵の手元を見詰めていた。
「霧恵さんが、着けなあかんって言うなら、着けるけど……いつかは……」
「そうね、いつかはね」
それが成人した後なのか、大学を卒業した後なのか、それとももっと先なのか、霧恵にも分からない。年の差が10歳あるので、できれば産めるうちにして欲しいが、意外と霧恵は『上位オメガ』だから高齢出産も大丈夫かもしれないなどと、楽観視していた。
どうなろうと、もう番になってしまったのだから、晃には霧恵しかいないし、霧恵には晃しかいないのだ。分からない未来を悲観するよりも、今の快楽を存分に享受する方が、霧恵には合っている。
ゴムを取り替えて再び飲み込むと、晃の手が必死に霧恵の胸に伸びて揉んできた。お返しとばかりにニップルネックレスのチェーンを引けば、泣いて悲鳴を上げながら突き上げてくる。内壁を抉られるたびに、快感の喘ぎ声を上げて霧恵は晃の腰の上で喉を反らした。
「んぁっ、とっても上手よぉ。気持ち良いわ」
「おれ、じょーじゅ?」
「素敵よ」
泣きながらぐしゃぐしゃの顔で笑う晃に、霧恵はご褒美のキスをした。
大学に行きながら晃は霧恵の部屋に住んで、授業のない日はアシスタントも勤める。モデルは霧恵のように本質的に強いオメガばかりではないから、数名のマネージャーが守るようにして撮影現場に連れて行っているが、トラブルは絶えなかった。霧恵付きのマネージャーも、有能なので自分についてもらうよりも他のオメガを守る方に専念してもらっている。
「今、霧恵さんに、何しようとしはりましたん?」
控え室で着替えようとしていた霧恵の部屋に入り込んでいた不審者を見つけた晃が、普段は絶対に見せない冷たい目で不審者を引きずり出して警備員に引き渡したのには、霧恵も驚いた。警備員が不審者を連れて行ってくれた後には、「こあかった。きりえしゃんが、無事でよかった」とプルプル震えながら霧恵の胸に埋まってくるのを、髪を撫でて労う。
「ちゃんとオーラ出てたわよ」
「俺が? ほんまに?」
アルファ特有のオーラが晃を包んで、不審者を動かないようにさせていた。それを目撃した霧恵は、「大事なものを守るために、頑張れたのね」と晃をたっぷりと褒める。髪を撫でられ、胸に顔を埋めて褒められて、晃は顔を真っ赤にして喜んでいた。
大学一年の終わりに、着物姿の小柄な女性が霧恵のマンションを訪ねてきた。
「都築玲、言います。晃の従姉です」
「舞園霧恵よ。ご挨拶に来て下さって嬉しいわ」
今年の5月には成人するとはいえ、まだ晃は未成年である。一緒に暮らしているのだから、いつかは保護者代わりの晃が酷く怖がっている従姉と会わねばならないと思っていた。
「大学に確認しましたら、住所がこちらに変わってましたんや。随分とお世話になったようで……アレのこと、番にしはりましたん?」
「大事に育ててるわよ。もうちょっと大人になるまで、子どもはお預けだって言っているけれど」
「アレの精神的な幼さを見抜いてくださってはるんやな。ええ方に巡り会えたようで、うちも安心しました」
聞けば、晃は玲の言う通りに製薬会社に就職もするし、玲の望む薬の開発もする。道場に戻ること以外なら、なんでも玲の言うことを聞くと土下座して、玲に霧恵との仲を認めてくれるように願い出たらしい。
「結婚やなんて、両者の同意以外いらへんのに、何をあんなに怖がってるのか。アレが自分でそのことに気付けるまでは、待ってやってくれますか?」
「大丈夫よ、あの子の一生に責任を持つと決めたの。いつまでも待つわ」
携帯電話を水没させたと聞いていたので、話の通じない相手かと思えば、意外に晃のことをしっかりと考えてくれている。両親と引き離すために、10歳から都築の本家で15歳の玲と一緒に育ったのだが、晃は臆病で玲と目も合わせられなかったという。
「うちにも事情があって、無理やり結婚させられるのが嫌で、晃を引き合いに出してる分、晃にはまだ結婚してもらったら困るゆう理由があるんです」
「なるほど……それじゃあ、あたしたち共犯者ね」
手を差し出すと、玲が霧恵の手を握る。武芸を嗜んでいるだけあって、手のひらの皮の厚いしっかりとした手だが、小柄なのでそれは小さかった。
「晃にはあんさんの匂いがべったりで守ってはるし、晃もあんさんにオーラを纏わせて守らせてもろうとるみたいで」
「あたしに……? 気付いてなかったわ。もう、チワワちゃんったら」
気付かぬうちに霧恵も晃に守られていたのを、玲に指摘されるまで気付かなかったのだから、晃もやはり優秀なアルファだ。
「大事な子よ。大切に育てるわ」
「うちも、何かあったらよろしくお願いします」
綺麗な姿勢で一礼して、玲は帰って行った。
大学から戻ってきた晃が、ドアを開けた瞬間、悲鳴を上げたのは言うまでもない。
「うぎゃー!? 玲ちゃんの匂いと気配がするー!?」
「ご挨拶に来てくれたのよ。まだ結婚は許せないけど、一緒に暮らすのは構わないって」
「ほ、ほんま? 俺、頑張って良かった……」
玲の前に出るだけでも怖かったのに、必死に土下座して頼んだ結婚は果たされなかったが、反対したり、引き離したりされることはなかった。
「少しの間、製薬会社で働いてみるのも良いと思うわ。あたしがオメガの抑制剤の浸透促進のポスターをお願いされた会社があるの。そこで働いてみて、いずれはあたし専属のマネージャーになってくれる?」
番を持った霧恵は『上位オメガ』としての力を、アルファのオーラのようなものを若干出せる以外は、ほとんど晃にしか向けられなくなっている。オメガだと言うのを狙う不埒な不審者が控え室に紛れ込んでいても、晃が一緒にいてくれれば安心だった。
「就職しても、勤務時間はきっちり守ってもらうし、空いた時間は霧恵さんと一緒におる。俺は霧恵さんの番やもん」
その首に巻かれた艶のあるブルーのチョーカーを誇らしげに撫でて言う晃を、霧恵は抱き締めた。
霧恵と晃が結婚するまでは、まだ時間がかかる。
「みらんといてぇ」
「晃のここも、ここも、全部あたしのなんだから、良いじゃない」
ベッドの上に下ろした晃のはみ出ている中心を指先で突き、小さなお尻を揉むと、「ぴゃん!?」と可愛い悲鳴を上げてシーツの上で跳ねるのが可愛い。
「アナタも触って良いのよ?」
促せば、余程気に入っているのか、霧恵のたっぷりとした胸に手を伸ばして、晃がふにふにと揉んでくる。手の平に余るような大きさのそれは、指先を埋めるほどに柔らかく、弾力がある。揉まれて乳首しか隠さない刺繍の下に指を入れて尖りを摘んで捏ねるのも気持ち良くて、霧恵も興奮してきた。
舌なめずりして、サイドテーブルの上から、避妊具と一緒にアクセサリーを入れるビロードの箱を持ち上げる。アクセサリーショップで必死に晃が霧恵のイヤリングを選んでいた間に、霧恵も晃にアクセサリーを選んでいたのだ。
しゃらりと取り出したそれを、興味津々に見つめる晃は、それが何か分かっていないだろう。フリルのブラジャーをずらして、色の薄い小さな粒のような胸の尖りにリングを付けると、晃の口から悲鳴が上がった。
「ちべたっ!?」
「冷たかった? すぐに慣れるわ」
乳首に装着する飾りのついたリングと繋がったチェーンは、首のチョーカーの上に巻き付ける。
「ニップルネックレスって言うのよ。こうやって、可愛い晃の胸を飾って、気持ち良くさせるものなの」
胸の間で繋がっているチェーンに指を引っ掛けて引っ張ると、ビクビクとシーツの上で晃が跳ねる。
「ひぁっ!?」
「感度良好ね。とっても可愛いわ」
戸惑う晃の口をキスで塞いで、霧恵は下着を履かせたまま、ずらして中心を取り出して、避妊具を被せる。脱げかけた下着に、ずれたブラジャーから覗くニップルネックレスが輝いて、非常に嫌らしくて最高に興奮する。戸惑って泣き出しそうな晃の中心を、濡れて熱い場所に導いて、腰を落として飲み込んでしまうと、その顔が快楽に蕩けた。
「晃は、今からお馬さんになるのよ。上手に跳ねてみせて?」
乗りこなしてみせるから。
くいくいと手綱を取るようにニップルネックレスのチェーンを指で引くと、胸の尖りが引っ張られて感じるのか、ビクビクと晃が跳ねる。その拍子に腰も跳ね上げて突き上げてくるのが、気持ち良くて、霧恵は容赦なくニップルネックレスを引いた。
「ひぃっ! やぁっ! とれてまうぅ!」
「そんなに簡単に取れないものよ。……おっぱい、吸う?」
「すう!」
突き上げてくる晃を締め付けているので、悦くないわけではないだろうが、未知の快感に泣き出してしまった晃に、霧恵は胸を押し付けた。顔に押し付けられた胸を揉んで、刺繍をずらして晃が幼子のようにちゅうちゅうと尖りを吸う様子に、本当に母親にでもなったような気になってしまう。
「しばらくは、パパにはなれなさそうね」
「んっ、ふぇ?」
「なんでもないわ」
本人がまだ甘えたい時期を越えなければ、赤ん坊ができても父親になるのは難しい。結婚をしなくても、子どもを産んで育てる自信も財力もある霧恵だが、晃にその心の準備ができていなければ、まだ作る気はなかった。
「パパって……ひぁぁっ!」
「あたしに溺れて忘れてしまいなさい」
細い晃の腰の上で下着を着けたまま、ずらしただけの状態で腰を振れば、擦り上げられた晃の中心が一際大きく膨れ上がって、弾けるのを感じる。
避妊具を取り替えるために一度引き抜くと、晃が霧恵の手元を見詰めていた。
「霧恵さんが、着けなあかんって言うなら、着けるけど……いつかは……」
「そうね、いつかはね」
それが成人した後なのか、大学を卒業した後なのか、それとももっと先なのか、霧恵にも分からない。年の差が10歳あるので、できれば産めるうちにして欲しいが、意外と霧恵は『上位オメガ』だから高齢出産も大丈夫かもしれないなどと、楽観視していた。
どうなろうと、もう番になってしまったのだから、晃には霧恵しかいないし、霧恵には晃しかいないのだ。分からない未来を悲観するよりも、今の快楽を存分に享受する方が、霧恵には合っている。
ゴムを取り替えて再び飲み込むと、晃の手が必死に霧恵の胸に伸びて揉んできた。お返しとばかりにニップルネックレスのチェーンを引けば、泣いて悲鳴を上げながら突き上げてくる。内壁を抉られるたびに、快感の喘ぎ声を上げて霧恵は晃の腰の上で喉を反らした。
「んぁっ、とっても上手よぉ。気持ち良いわ」
「おれ、じょーじゅ?」
「素敵よ」
泣きながらぐしゃぐしゃの顔で笑う晃に、霧恵はご褒美のキスをした。
大学に行きながら晃は霧恵の部屋に住んで、授業のない日はアシスタントも勤める。モデルは霧恵のように本質的に強いオメガばかりではないから、数名のマネージャーが守るようにして撮影現場に連れて行っているが、トラブルは絶えなかった。霧恵付きのマネージャーも、有能なので自分についてもらうよりも他のオメガを守る方に専念してもらっている。
「今、霧恵さんに、何しようとしはりましたん?」
控え室で着替えようとしていた霧恵の部屋に入り込んでいた不審者を見つけた晃が、普段は絶対に見せない冷たい目で不審者を引きずり出して警備員に引き渡したのには、霧恵も驚いた。警備員が不審者を連れて行ってくれた後には、「こあかった。きりえしゃんが、無事でよかった」とプルプル震えながら霧恵の胸に埋まってくるのを、髪を撫でて労う。
「ちゃんとオーラ出てたわよ」
「俺が? ほんまに?」
アルファ特有のオーラが晃を包んで、不審者を動かないようにさせていた。それを目撃した霧恵は、「大事なものを守るために、頑張れたのね」と晃をたっぷりと褒める。髪を撫でられ、胸に顔を埋めて褒められて、晃は顔を真っ赤にして喜んでいた。
大学一年の終わりに、着物姿の小柄な女性が霧恵のマンションを訪ねてきた。
「都築玲、言います。晃の従姉です」
「舞園霧恵よ。ご挨拶に来て下さって嬉しいわ」
今年の5月には成人するとはいえ、まだ晃は未成年である。一緒に暮らしているのだから、いつかは保護者代わりの晃が酷く怖がっている従姉と会わねばならないと思っていた。
「大学に確認しましたら、住所がこちらに変わってましたんや。随分とお世話になったようで……アレのこと、番にしはりましたん?」
「大事に育ててるわよ。もうちょっと大人になるまで、子どもはお預けだって言っているけれど」
「アレの精神的な幼さを見抜いてくださってはるんやな。ええ方に巡り会えたようで、うちも安心しました」
聞けば、晃は玲の言う通りに製薬会社に就職もするし、玲の望む薬の開発もする。道場に戻ること以外なら、なんでも玲の言うことを聞くと土下座して、玲に霧恵との仲を認めてくれるように願い出たらしい。
「結婚やなんて、両者の同意以外いらへんのに、何をあんなに怖がってるのか。アレが自分でそのことに気付けるまでは、待ってやってくれますか?」
「大丈夫よ、あの子の一生に責任を持つと決めたの。いつまでも待つわ」
携帯電話を水没させたと聞いていたので、話の通じない相手かと思えば、意外に晃のことをしっかりと考えてくれている。両親と引き離すために、10歳から都築の本家で15歳の玲と一緒に育ったのだが、晃は臆病で玲と目も合わせられなかったという。
「うちにも事情があって、無理やり結婚させられるのが嫌で、晃を引き合いに出してる分、晃にはまだ結婚してもらったら困るゆう理由があるんです」
「なるほど……それじゃあ、あたしたち共犯者ね」
手を差し出すと、玲が霧恵の手を握る。武芸を嗜んでいるだけあって、手のひらの皮の厚いしっかりとした手だが、小柄なのでそれは小さかった。
「晃にはあんさんの匂いがべったりで守ってはるし、晃もあんさんにオーラを纏わせて守らせてもろうとるみたいで」
「あたしに……? 気付いてなかったわ。もう、チワワちゃんったら」
気付かぬうちに霧恵も晃に守られていたのを、玲に指摘されるまで気付かなかったのだから、晃もやはり優秀なアルファだ。
「大事な子よ。大切に育てるわ」
「うちも、何かあったらよろしくお願いします」
綺麗な姿勢で一礼して、玲は帰って行った。
大学から戻ってきた晃が、ドアを開けた瞬間、悲鳴を上げたのは言うまでもない。
「うぎゃー!? 玲ちゃんの匂いと気配がするー!?」
「ご挨拶に来てくれたのよ。まだ結婚は許せないけど、一緒に暮らすのは構わないって」
「ほ、ほんま? 俺、頑張って良かった……」
玲の前に出るだけでも怖かったのに、必死に土下座して頼んだ結婚は果たされなかったが、反対したり、引き離したりされることはなかった。
「少しの間、製薬会社で働いてみるのも良いと思うわ。あたしがオメガの抑制剤の浸透促進のポスターをお願いされた会社があるの。そこで働いてみて、いずれはあたし専属のマネージャーになってくれる?」
番を持った霧恵は『上位オメガ』としての力を、アルファのオーラのようなものを若干出せる以外は、ほとんど晃にしか向けられなくなっている。オメガだと言うのを狙う不埒な不審者が控え室に紛れ込んでいても、晃が一緒にいてくれれば安心だった。
「就職しても、勤務時間はきっちり守ってもらうし、空いた時間は霧恵さんと一緒におる。俺は霧恵さんの番やもん」
その首に巻かれた艶のあるブルーのチョーカーを誇らしげに撫でて言う晃を、霧恵は抱き締めた。
霧恵と晃が結婚するまでは、まだ時間がかかる。
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