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番外編 永遠の迷宮探索者 ~新月の伝承と竜のつがい~
3.小鳥(side レリア)
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下にはもっと危険が魔物がいるはずだと言う私に
「そうだろうね」
そう言って、テオはまた気負う様子もなく頷いて見せた。
そうして、そんな彼を見て覚悟を決めた私に、
「おいで」
そう言って。
テオはまるで恋人にするかのようにその両の腕を広げてみせた。
初めて会った時の様に抱きしめられた瞬間、彼の首筋辺りから漂う、これまで以上に濃い彼の香りにあてられ何も考えられなくなった。
「************」
テオがクスリと嗤って何か言った。
しかし、もう彼の言葉は私にとってただの綺麗な音の並びでしかなくて。
彼が何を言っているのか私は理解することは出来なかった。
******
テオに優しく体を揺すって起こされた。
「***、***」
おそらく名前を呼ばれているのであろうことは分かったが、相変わらず言葉として理解が出来ない。
しかし、そんな事以上に体が熱くて仕方がなかった。
そんな私の様子に気づいてくれたのだろう。
テオが鞄から水筒を出すと、そっと飲み口を私の口に押し当ててくれた。
喉は酷く乾いているのに。
どうしてだろう。
体が思うように動いてくれず、飲み込めない水は口の端を零れ、私のブラウスを濡らした。
それをもどかしく思った時だった。
テオが、水筒の水を自らの口に含むと、そっと私の唇に唇で触れた。
まるで、小鳥の求愛給餌のようだなと思った瞬間、ふっと体が軽くなった。
まだ少しぼんやりする頭のまま介抱してもらった礼を言おうとした時だ。
私は、すぐそばに転がる巨大な顎を持つアリジゴクに似た魔獣の死骸を見つけ、思わず悲鳴を上げた。
まっぷたつにされたその太刀筋から、言われずともあっさりテオが討伐したのだろう事は分かった。
テオは、もうここには魔物はいないから大丈夫だとすっかりくつろいだ様子を見せていたが……。
それでも、あの魔獣が潜んでいたという落ち葉の山に似た堆積物の中に自ら手を入れ薬草を探すのは、なかなかに勇気のいる事だった。
しばらくは、靴の先で堆積物の塊である大きなリターをひっくり返して見たりもしたが、どうしても薬草は見つからず。
私が、覚悟を決めてその中に手を入れ懸命に探していた時だった。
何かが指先に触れたと思ったその次の瞬間、地面の中にぐいと手を引っ張られた。
「きゃぁ!!」
あの魔獣がもう一匹潜んでいたのだ。
そう思い、死を覚悟した瞬間だった。
「っ!!」
肘と肘が触れてしまう位すぐ側で、膝を突き同じように薬草を探してくれていたテオが噴き出した。
それにハッとして手を引き挙げてみれば、私の手を掴んでいたのは、何とテオだった。
「もう! 魔獣かと思って心臓が止まるかと思ったじゃないですか!!」
そう言って怒れば、よほど私の驚き具合が滑稽だったのだろう。
テオは笑いをこらえられないようで肩で顔を隠しながらも、その体を笑いに震わせていた。
今は落ち着いたお兄さんだが、テオはどうやら子供の頃はどうしようもないいたずらっ子だったらしい。
故郷について語るテオの目は、笑っているのに何処か少し寂し気で。
私は繋がれたその手が解かれぬよう、思わず自ら小さく指を絡めた。
「そうだろうね」
そう言って、テオはまた気負う様子もなく頷いて見せた。
そうして、そんな彼を見て覚悟を決めた私に、
「おいで」
そう言って。
テオはまるで恋人にするかのようにその両の腕を広げてみせた。
初めて会った時の様に抱きしめられた瞬間、彼の首筋辺りから漂う、これまで以上に濃い彼の香りにあてられ何も考えられなくなった。
「************」
テオがクスリと嗤って何か言った。
しかし、もう彼の言葉は私にとってただの綺麗な音の並びでしかなくて。
彼が何を言っているのか私は理解することは出来なかった。
******
テオに優しく体を揺すって起こされた。
「***、***」
おそらく名前を呼ばれているのであろうことは分かったが、相変わらず言葉として理解が出来ない。
しかし、そんな事以上に体が熱くて仕方がなかった。
そんな私の様子に気づいてくれたのだろう。
テオが鞄から水筒を出すと、そっと飲み口を私の口に押し当ててくれた。
喉は酷く乾いているのに。
どうしてだろう。
体が思うように動いてくれず、飲み込めない水は口の端を零れ、私のブラウスを濡らした。
それをもどかしく思った時だった。
テオが、水筒の水を自らの口に含むと、そっと私の唇に唇で触れた。
まるで、小鳥の求愛給餌のようだなと思った瞬間、ふっと体が軽くなった。
まだ少しぼんやりする頭のまま介抱してもらった礼を言おうとした時だ。
私は、すぐそばに転がる巨大な顎を持つアリジゴクに似た魔獣の死骸を見つけ、思わず悲鳴を上げた。
まっぷたつにされたその太刀筋から、言われずともあっさりテオが討伐したのだろう事は分かった。
テオは、もうここには魔物はいないから大丈夫だとすっかりくつろいだ様子を見せていたが……。
それでも、あの魔獣が潜んでいたという落ち葉の山に似た堆積物の中に自ら手を入れ薬草を探すのは、なかなかに勇気のいる事だった。
しばらくは、靴の先で堆積物の塊である大きなリターをひっくり返して見たりもしたが、どうしても薬草は見つからず。
私が、覚悟を決めてその中に手を入れ懸命に探していた時だった。
何かが指先に触れたと思ったその次の瞬間、地面の中にぐいと手を引っ張られた。
「きゃぁ!!」
あの魔獣がもう一匹潜んでいたのだ。
そう思い、死を覚悟した瞬間だった。
「っ!!」
肘と肘が触れてしまう位すぐ側で、膝を突き同じように薬草を探してくれていたテオが噴き出した。
それにハッとして手を引き挙げてみれば、私の手を掴んでいたのは、何とテオだった。
「もう! 魔獣かと思って心臓が止まるかと思ったじゃないですか!!」
そう言って怒れば、よほど私の驚き具合が滑稽だったのだろう。
テオは笑いをこらえられないようで肩で顔を隠しながらも、その体を笑いに震わせていた。
今は落ち着いたお兄さんだが、テオはどうやら子供の頃はどうしようもないいたずらっ子だったらしい。
故郷について語るテオの目は、笑っているのに何処か少し寂し気で。
私は繋がれたその手が解かれぬよう、思わず自ら小さく指を絡めた。
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