馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

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闘犬、番犬、躾けられてお預け

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 戻った宿屋で煙草を吸う師匠の足元に座ってたら、ため息を吐かれて頭をわしゃわしゃされた。じっと見続けてたせいかもしれない。
 髪の毛をぐしゃぐしゃにするような手付きだけど、師匠に撫でてもらえるのは嬉しい。

「師匠、ちゃんと護衛したからご褒美がほしい」

 王都から聖なる泉までちゃんと護衛したし、王都まできちんと無事に連れて帰ってきた。師匠がいるから危ないことにならないのは当然だけど、俺も魔物は倒したし、神官とか神殿兵にも親切にしたつもりだ。ムカついて渋い木の実渡したのは、神殿兵の方が師匠に失礼なことしたせいだから、俺は悪くない。
 動きの止まった手に自分で頭を擦り付けて甘えてたら、師匠がまたため息を吐いた。

「テメェはすぐそれだな……」
「……ご褒美ないなら、あんまりやりたくない」

 師匠にやれって言われたら何でもするけど、ご褒美をもらえる方がずっと嬉しい。むに、と頬を摘ままれて引っ張られる。ちょっと痛い。首を振って逃げたら師匠が立ち上がって、顎で座っていた椅子を示された。よくわからないまま床からそっちに座り直したら、師匠が俺の足の間に座って、下衣に手を掛けてくる。

「え」

 下衣と下穿きをずらされて出てきた俺のモノに、師匠が躊躇いなく舌を這わせた。

「疲れてんだよ……ケツはしんどいから、こっちで我慢しろ」

 我慢も、何も。

 柔らかい唇が触れて、少しざらついた舌が先っぽを撫でるように舐めてくれる。感触だけじゃなくて、師匠の綺麗な顔が俺のを咥えている光景にもぞくぞくした。舐めたり噛んだり、頬の内側で擦るせいで輪郭が歪むのも気にせずに、師匠が俺を高めてくれる。舌や口が触ってくれなくても、長い指や剣を握って硬くなった手が、細やかに面倒を見てくれる。
 気持ちいい。
 ちゅう、と鈴口を吸われて息を詰めて、師匠の金色の髪に触れた。

「し、しょう」

 ちらりと碧の視線がこちらを向いて、しゃぶりついていたモノを口から出して、大切なものにするように口付けてくれる。俺の好きな宝石みたいな瞳が、ずっと俺に注がれているのが嬉しい。

「……フェラ、どこで覚えたの」

 他の人を知らないから何とも言えないけど、師匠はフェラが上手い、と思う。キスだって上手いしセックスだって上手いけど、でも、フェラは誰かのを咥えなきゃいけない。咥えるだけじゃ相手は気持ち良くならないし、ぺろぺろ舐めてるだけでもだめだ。積極的に動かないといけないから練習する相手が必要だったはずで、そうなるとやっぱり、気になってしまう。

「……ヤってる時に他の野郎の話するか?」

 苦笑するような顔で、師匠が俺のモノに唇を寄せる。紅を引かなくても綺麗に色付いていて、生々しい欲望と並んでいると、いけないことをしている気持ちが強くなる。

「気に、なって……」

 弧を描いたものが何度も押し当てられて、見た目だけでくらくらしそうだ。

「……上も下も、何人咥えたか覚えてねぇよ」

 下りきった唇が玉を含んで、口の中で弄んでくる。手も口も弛まず俺を気持ち良くしてくれて、長い睫毛が宝石に陰影をもたらして綺麗だ。師匠が俺に奉仕してくれることに息を漏らして、金色の髪に指を通す。いつでもさらさらしてて、触ると気持ちいい。舐め上げながら口の中から解放されて、腰の辺りがそわそわした。

「……萎えねぇのな」

 師匠にしてもらってたら、萎えるはずがない。それに。

「今は俺が一番たくさん師匠をもらってるから」

 師匠が娼館に行くとしても、旅をしているから毎回同じ店というわけでもない。町ごとに店は決まってても、指名する娼婦や男娼は決まってても、俺よりずっと回数は少ない。

 師匠の一番近くは、俺のはずだ。

「…………馬鹿犬」

 呼ばれたわけじゃない。なんか貶された。
 眉を寄せたら師匠が口を開けて俺のモノを飲み込み始めて、何も言えなくなった。

 いつも、より、奥まで入ってる、気がする。

「し、しょ」

 師匠に苦しい思いはさせたくない。瞳に薄っすら涙の幕が張られている気がする。けど、たぶん喉の奥まで迎え入れてくれていて、きゅ、きゅ、と時折締めてくれて、ナカに挿れた時みたいで気持ちいい。

「ッ、ん……腰、振りたきゃ振れよ。飲んでやる」

 ずるりと俺を引き抜いた口で露悪的に笑って、あ、と無防備に構えられた。引き寄せられるように椅子を倒して立ち上がって、師匠の頭を抱える。俺の足に手を添えて、師匠が俺を見上げてくれる。

 止まれ、ないかも。

 ぞわりと肌が粟立って、師匠の喉を目掛けて腰を突き入れた。苦しげな声が聞こえて師匠の目から涙が零れてるのもわかるけど、気持ち良くて、ぞくぞくして、我慢が出来ない。

 だって、師匠の手は俺を止めようとしてない。

 奥まで挿れた時にぐっと喉を締められて、堪らず迸らせる。喉が動いて、不規則に締め付けられて気持ちいい。息をついて、急いで師匠の口から抜いて跪いた。

「っ、ししょ、ごめんなさい……」

 涎とか涙とかで師匠の顔がぐちゃぐちゃだ。苦しげに呼吸を乱しているけど、床には一滴も俺の種は零れてない。

「……ごほーび、だからな」

 ぐい、と自分の袖で顔を拭いて、けろっとした顔で師匠が床に座り直す。

「満足したかよ」
「……ありがとうございました」
「よくできました」

 ぽんぽんと頭を撫でられて、もう大人のはずなのに師匠の中では俺はまだ子供みたいで、口を尖らせて抗議するしかなかった。
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