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殿下のお茶会
しおりを挟むすったもんだの後、私は一度トバイアス侯爵家に戻った。兄様の婚活に必要な情報を集めるために!
家に帰ると、執事に招待状を渡された。
「マーセディア殿下からのお誘いですって?!」
兄様のお見合い相手候補その1、マーセディア殿下。ミリオネイア王国唯一の王女であり、国一番の美女でもある。物語の中から出てきたかのような金髪碧眼は国民全員を虜にしている。
「こんなの行くしかないでしょう」
私が兄様と出会った時、マーセディア殿下が兄様を気に入って婚約者にしようとしたらしい。こんなに美しい御方を娶ろうとしないだなんて、おかしな兄様。
私はすぐに自室に向かい、返事の手紙を認めた。丁寧に、丁寧に書いた。兄様の未来のお嫁さん候補だもの。
すぐにお茶会の日になった。昨日は緊張で全く寝ることが出来なかったため、クマを隠すのに厚化粧をしている。
「はあ、みんなったら容赦がないんだから……」
私を着飾ってくれた侍女達の手腕に思いを馳せながら、ガタガタと揺れる馬車の乗り心地の悪さに辟易する。おしりの下にクッションを引くことで多少は解消されるけれど、まだまだ痛い。ついでに緊張で胃も痛い。あと吐き気もする。この吐き気が馬車酔いか寝不足か緊張か、どれかは定かでは無いけれどあと少しでもう、限界。
「あ、ああ……早く、早く着いて……私が限界を迎える前に……」
結論から言うと、無事だった。体調は最悪だけれど、無事だった。厚化粧のおかげで、顔色が悪いのを隠せている。目の下だけ厚くすればいいのにと思ったのが間違いだった。ありがとう、みんな――。またそうやって侍女達に思いを馳せていると、後ろから声をかけられた。
「トバイアス嬢」
「――マーセディア王女殿下!」
今日のお茶会の主催者である王女殿下、まさにその人であった。
「殿下主催のお茶会にお招きいただき、身に余る光栄でございます」
「ええ、そうね。お前の身には少し重かったかしら?」
「はい!」
「…………あ、そう」
豪華な扇で口元を隠しながら私を見つめるその姿も、素敵!
「そこのお前、トバイアス嬢を案内しなさい」
近くを通りかかったメイドに声をお掛けになる殿下も、美しい!
「ありがとうございます!殿下、またお話いたしましょうね」
「……ふん、厚かましいわね」
「え?今なんと仰いましたか?」
「別になんでもないわ、早くお行きなさい。もう始まるわよ」
ああ、殿下、殿下、殿下――!
どうして兄様はこんなに素敵な御方との縁談を断られたのかしら。私が兄様だったら、すぐにお受けするのに。
王宮の別室にて――
「クレア・トバイアス!!あの女っ……」
豊かな金髪を振り乱し、部屋を荒らすその女性は、クレアが傾倒してやまないマーセディア・クレア・ミリオネイア第一王女であった。
「あの女がわたくしと同じ名前だなんて!虫唾が走る……それに、私を虚仮にして、ああ……ああああ!!」
テーブルの上にあった花瓶を持ち上げ、振り下ろした。分厚い壁と扉はその花瓶の割れる忌々しい音を通すことは無かった。
「ヴィヴィアンは、わたくしのものよ……」
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