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第一章 最強の少年
3 魔力が多すぎて
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街の外に出たルイスは、依頼書に描いてあった姿形を元に、それっぽいのを探して、魔力を注いでみる。
特に何も起こらないものもあったが、三本目で、やっと目的のものを探り当てた。
手に魔力を集め、蕾に魔力を注ぐ。
これは、魔法の練習をする時と感覚は似ているので、難なくできたーーが。
「あれ~……?」
魔力を注いで数分もしないうちに、その植物は、一瞬で萎れ始めた。
五本目、六本目、十本目も同様だった。他は、そもそも何も変化がなかったので、アノリカルではなかったのだろうが……
「おかしいな~……」
何か間違っているのだろうかと頭を捻っていると、後ろから「魔力が多すぎるんだよ」と声がする。
ルイスが振り向くと、鎧を着た男の人が立っている。彼は、ルイスも見たことがある。街の門に立っている兵士の一人だ。
街の近くでいくつも見つかるので、いつもと違い、まだ門の近くにいたので、声をかけられたようだ。
「お前、あの噂になってる冒険者のちびっこだろ?さっきから見てたが、見た目どおりに魔力が多いみたいだな」
「見た目どおり……?」
「いや、黒い髪を持っているやつは、魔力が多いって言われてるんだ。信憑性はあまりないが、少なくともお前は当てはまってるらしい。黒い瞳は初めて見たから知らないが」
ルイスは、黒髪黒目だ。その見た目どおりに魔力が多いというのを、この兵士は言いたいらしい。
ルイスは、自分の魔力量が多いことは知っていたが、髪との関連性は知らなかったので、へぇ~と感心する。
だが、すぐに兵士の最初の言葉に引っかかった。
「あの……多すぎるってどういうことですか?」
「アノリカルは、確かに魔力を込めて咲かせることができるが、与えすぎると、根腐れを起こして枯れるんだよ」
「そ、そうだったんですか!?」
ダグラスからは、魔力を注いだらいいとしか言われなかったので、ルイスは、何の躊躇いもなく魔力を注いでしまっていた。
まさか、それが原因なんて思わなかった。
(だからあんなこと言ったのか!)
ルイスは、依頼を受けた時のダグラスの言葉を思い出す。
『お前がたっぷり注がなきゃな』
あの時はからかわれたことへの怒りでいっぱいで気づかなかったが、もしかしたら、注ぎすぎないようにというアドバイスしてくれたのかもしれない。
そう思うと、むきになった自分がなんだか恥ずかしく感じられた。
(魔物の討伐じゃないけど……これも手加減の特訓だ!)
ルイスは、兵士に「ありがとうございます」とだけ言って、次のアノリカルに魔力を注ぐ。今度は、魔法を練習する時のように慎重に。
ゆっくり、ゆっくりと魔力を注いでいくと、花びらが少しずつ開き始めた。
やった!……と、ルイスが思ったところで、集中が切れてしまい、感情のままに魔力を乗せてしまった。
結果、またもや魔力過剰で枯れてしまった。
ルイスは、しまったと思うと同時に落胆する。
「あう~……失敗だ」
落胆しているルイスに、兵士ーールカは何の言葉もかけられない。それは、かける言葉が見つからないのではなく、かける余裕がなかった。
(こいつ、どれだけ魔力があるんだ!?)
アノリカルが珍しいのは、花がなかなか咲かないからだ。だから、人工的に咲かせようとした者たちはいくらでもいる。
だが、全員がある壁にぶつかる。魔力不足だ。
アノリカルは、蕾になった時に、大気中の魔力を百年分取り込めば花を咲かせる。
それを、一日中休まずに行っているわけだから、微量ずつとはいえ、全体にすれば大量の魔力が必要だ。
一般的な魔法使いの魔力を1とするのであれば、50人は必要なくらいだ。魔法使い自体がそれほど多いわけでもないのに、それが50人となると、どんな金持ちだとしても、簡単に集められるものではない。
それなのに、自分が見ただけでも、もう五本に魔力を注いでいる。
単純計算で、彼は一般の魔法使いの250倍の魔力量を持っていることになる。それは、城に仕えている魔法使いと良い勝負……いや、勝負にならないかもしれない。
そんなに大量の魔力を消費しているだろうに、まったく疲れている様子がないのは、彼にとっては大した量じゃないということだろう。
「あ~あ。また失敗」
言葉を失っている兵士の様子にまったく気づいていないルイスは、今度こそと新たな花に魔力を注ぎ始める。
これで、もう八本目だ。
(こいつ、本当に人間か……?)
ルカは、また花の開花に失敗して頭を抱えているルイスに、畏怖を抱き始める。
だが、仮にルイスが人間じゃない何かだとして、何で魔物が倒せないなどという噂が回っているのかわからない。
魔力量だけでも、それに物を言わせて押しきれば、街の周辺にいる魔物くらいは、退治できそうな気がする。
彼が、魔物を殺せないくらいに心優しいとでもいうのだろうか?子どもなら、あり得る話ではあるが……
それとも、こんな馬鹿みたいな魔力を持っていながら魔法が使えないのだろうか?いや、そんなことはないだろう。そんな話は聞いたことがない。
「お、おい。ちびっこ」
「僕の名前はルイスです」
こちらを振り向きもしないで冷たくそう言う。
「……ルイス。一つ、聞いてもいいか?」
「なんですか?」
名前を呼んだら、ルイスはこちらのほうを向いた。
「なんで討伐依頼を受けないんだ?ルイスの力ならできそうな気がするが……」
ルカが尋ねると、ルイスはそっと目をそらす。
何か、話しにくい理由なのかと、ルカは言葉を撤回しようとする。
「話したくないならーー」
「いえ、そんなことはありません。ただ、言ってもあまり信じてもらえないというかーー」
う~んとルイスは悩む。話してもいいのだろうか。別に養父母やダグラスからは、内緒にするようにとは言われていない。
「信じるも信じないも、聞いてみなきゃわかんないだろ」
ルカがそう言うと、ルイスは静かに答えた。
「……残らないんです」
「ん?何が」
「僕の魔法とか、拳とかの威力が強くて……素材がまともに残らないんです。欠片が拾えればいいほうで……」
「…………」
兵士は、何も言わない。こんな現実味のない言葉は、やはり信じてもらえないのかもしれないと、ルイスは落胆する。そして、再び花を咲かせようと、兵士に背を向けた。
だが、実際はーー
(えっ!?素材が残らない!?魔法や拳の威力が強すぎて!?こいつ、マジで人間じゃねぇぞ!!)
驚きすぎて声が出てなかっただけであった。
特に何も起こらないものもあったが、三本目で、やっと目的のものを探り当てた。
手に魔力を集め、蕾に魔力を注ぐ。
これは、魔法の練習をする時と感覚は似ているので、難なくできたーーが。
「あれ~……?」
魔力を注いで数分もしないうちに、その植物は、一瞬で萎れ始めた。
五本目、六本目、十本目も同様だった。他は、そもそも何も変化がなかったので、アノリカルではなかったのだろうが……
「おかしいな~……」
何か間違っているのだろうかと頭を捻っていると、後ろから「魔力が多すぎるんだよ」と声がする。
ルイスが振り向くと、鎧を着た男の人が立っている。彼は、ルイスも見たことがある。街の門に立っている兵士の一人だ。
街の近くでいくつも見つかるので、いつもと違い、まだ門の近くにいたので、声をかけられたようだ。
「お前、あの噂になってる冒険者のちびっこだろ?さっきから見てたが、見た目どおりに魔力が多いみたいだな」
「見た目どおり……?」
「いや、黒い髪を持っているやつは、魔力が多いって言われてるんだ。信憑性はあまりないが、少なくともお前は当てはまってるらしい。黒い瞳は初めて見たから知らないが」
ルイスは、黒髪黒目だ。その見た目どおりに魔力が多いというのを、この兵士は言いたいらしい。
ルイスは、自分の魔力量が多いことは知っていたが、髪との関連性は知らなかったので、へぇ~と感心する。
だが、すぐに兵士の最初の言葉に引っかかった。
「あの……多すぎるってどういうことですか?」
「アノリカルは、確かに魔力を込めて咲かせることができるが、与えすぎると、根腐れを起こして枯れるんだよ」
「そ、そうだったんですか!?」
ダグラスからは、魔力を注いだらいいとしか言われなかったので、ルイスは、何の躊躇いもなく魔力を注いでしまっていた。
まさか、それが原因なんて思わなかった。
(だからあんなこと言ったのか!)
ルイスは、依頼を受けた時のダグラスの言葉を思い出す。
『お前がたっぷり注がなきゃな』
あの時はからかわれたことへの怒りでいっぱいで気づかなかったが、もしかしたら、注ぎすぎないようにというアドバイスしてくれたのかもしれない。
そう思うと、むきになった自分がなんだか恥ずかしく感じられた。
(魔物の討伐じゃないけど……これも手加減の特訓だ!)
ルイスは、兵士に「ありがとうございます」とだけ言って、次のアノリカルに魔力を注ぐ。今度は、魔法を練習する時のように慎重に。
ゆっくり、ゆっくりと魔力を注いでいくと、花びらが少しずつ開き始めた。
やった!……と、ルイスが思ったところで、集中が切れてしまい、感情のままに魔力を乗せてしまった。
結果、またもや魔力過剰で枯れてしまった。
ルイスは、しまったと思うと同時に落胆する。
「あう~……失敗だ」
落胆しているルイスに、兵士ーールカは何の言葉もかけられない。それは、かける言葉が見つからないのではなく、かける余裕がなかった。
(こいつ、どれだけ魔力があるんだ!?)
アノリカルが珍しいのは、花がなかなか咲かないからだ。だから、人工的に咲かせようとした者たちはいくらでもいる。
だが、全員がある壁にぶつかる。魔力不足だ。
アノリカルは、蕾になった時に、大気中の魔力を百年分取り込めば花を咲かせる。
それを、一日中休まずに行っているわけだから、微量ずつとはいえ、全体にすれば大量の魔力が必要だ。
一般的な魔法使いの魔力を1とするのであれば、50人は必要なくらいだ。魔法使い自体がそれほど多いわけでもないのに、それが50人となると、どんな金持ちだとしても、簡単に集められるものではない。
それなのに、自分が見ただけでも、もう五本に魔力を注いでいる。
単純計算で、彼は一般の魔法使いの250倍の魔力量を持っていることになる。それは、城に仕えている魔法使いと良い勝負……いや、勝負にならないかもしれない。
そんなに大量の魔力を消費しているだろうに、まったく疲れている様子がないのは、彼にとっては大した量じゃないということだろう。
「あ~あ。また失敗」
言葉を失っている兵士の様子にまったく気づいていないルイスは、今度こそと新たな花に魔力を注ぎ始める。
これで、もう八本目だ。
(こいつ、本当に人間か……?)
ルカは、また花の開花に失敗して頭を抱えているルイスに、畏怖を抱き始める。
だが、仮にルイスが人間じゃない何かだとして、何で魔物が倒せないなどという噂が回っているのかわからない。
魔力量だけでも、それに物を言わせて押しきれば、街の周辺にいる魔物くらいは、退治できそうな気がする。
彼が、魔物を殺せないくらいに心優しいとでもいうのだろうか?子どもなら、あり得る話ではあるが……
それとも、こんな馬鹿みたいな魔力を持っていながら魔法が使えないのだろうか?いや、そんなことはないだろう。そんな話は聞いたことがない。
「お、おい。ちびっこ」
「僕の名前はルイスです」
こちらを振り向きもしないで冷たくそう言う。
「……ルイス。一つ、聞いてもいいか?」
「なんですか?」
名前を呼んだら、ルイスはこちらのほうを向いた。
「なんで討伐依頼を受けないんだ?ルイスの力ならできそうな気がするが……」
ルカが尋ねると、ルイスはそっと目をそらす。
何か、話しにくい理由なのかと、ルカは言葉を撤回しようとする。
「話したくないならーー」
「いえ、そんなことはありません。ただ、言ってもあまり信じてもらえないというかーー」
う~んとルイスは悩む。話してもいいのだろうか。別に養父母やダグラスからは、内緒にするようにとは言われていない。
「信じるも信じないも、聞いてみなきゃわかんないだろ」
ルカがそう言うと、ルイスは静かに答えた。
「……残らないんです」
「ん?何が」
「僕の魔法とか、拳とかの威力が強くて……素材がまともに残らないんです。欠片が拾えればいいほうで……」
「…………」
兵士は、何も言わない。こんな現実味のない言葉は、やはり信じてもらえないのかもしれないと、ルイスは落胆する。そして、再び花を咲かせようと、兵士に背を向けた。
だが、実際はーー
(えっ!?素材が残らない!?魔法や拳の威力が強すぎて!?こいつ、マジで人間じゃねぇぞ!!)
驚きすぎて声が出てなかっただけであった。
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