悪役令嬢?それがどうした!~好き勝手生きて何が悪い~

りーさん

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公爵令嬢?それがどうした!

第44話 動きを止めるために

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 さて……どうしよう。手はある。何とかできそうな方法が。でも、それをどのようにするか。順番が違うだけでも、成功確率は格段に変わる。そして、生存率も。
 とりあえず、厨房に行って、例の物・・・を取ってくる。【隠蔽】をして、風魔法で少し宙に浮かんで、足跡でバレないように。
袋に入れてあるけど、【身体強化】した体なら持ち上げられる。
 そして、さっきの場所まで戻ってきた。【隠蔽】は切れかかってる。

 ─────来る!

 右に気配を感じて、咄嗟に後ろに下がった。

 ───痛っ!

 まだ足が完全には治ってないから、激しく動くと痛い。このまま鬼ごっこになったら、また足が悪化するな。

「相変わらず反応速度が速いな。本当に貴族のお嬢様か?」
「公爵の娘が貴族だというならそうなんじゃない?」

 レイがやられたんだろうか?いや、それなら血がついていてもおかしくないはずだ。服は黒いけど、それでもそれっぽいものは見当たらない。だから、レイは大丈夫だろう。

 じゃあ、撒いてきたというの?なんのために?

「聞きたい事があるんだ」
「残念だけど、私にそれに答える口がないの」

 誰が殺人鬼の質問に答えるか!そんな暇があるくらいならもっと遠くに逃げるわ!

 でも、その殺人鬼はそんな事はお構いなしに話し始めた。いや、話しながら攻撃してきた。

「神影から聞いた。あいつの隷属紋を消したんだってな。どうやったんだ?」
「そうやって聞くという事は、あなたにも隷属紋があるのね」

 そうでもなきゃ、聞く理由は一つだけだ。自分達しか知り得ないはずなのに、どうやって知ったのかを聞き出すため。でも、そんな事をしなくても、すでに手には目の前の子供を殺せる武器がある。わざわざ聞き出すよりも、消してから調べる方が良い。

 私が本当の事を言っていると証明する方法はないし、そっちの方が確実だ。

 にしても……隷属紋が二人か……この話はどこかで見聞きしたような……?それに、神影……?って考え事している場合じゃない!

 少しでも油断したらそれは死を意味するんだから!袋があるぶん、動きが鈍くなるというのに!

「消したいの?」
「別に好きである訳ではないからな」

 私に斬りかかりながらそんな事を言われましてもねぇ。そして、本当に足が痛い!!骨が折れててもおかしくないかもしれない。

 それよりも、隷属紋……なら仕方ないのか?隷属紋は確か、意識はあるものの、自分とは違う意志が体を操るはずだ。からくり人形みたいに。命令を忠実に守るため、機転が効かない。やめたいと思っても、それが主の意向に背くなら実行しない。だからレイも逃げなかった。

 今思えば、レイの最初の頃のあの生意気な口は、元の性格もあるんだろうけど、私を殺さないためだったのかもしれない。私を怒らせて魔道具を使わせる事で、体が物理的に動かせないようにしたのだ。

 私に危害を加えてパパさんにチョンパされるよりは、こっちの方が命の危機はない。

 アルト達が来た頃に何も言わなくなってきたのは、命令が変更されたからととれる。

 私の方が利用されたって事かよ!本当にあいつに勝てた試しがない。

 でも……隷属紋がなくなっても、助けてくれたのは間違いなくレイの意志だ。なんでかはまったく分からないけど。

「なら、動くのを止めてくれないと」
「それが出来たら苦労しないな」

 苦労なんてしてねぇだろ、絶対!私と似たタイプだって!やりたい事には全力だけどそれ以外はのらりくらりっていうタイプですって!分かるもん!

 それはともかく、止まれないというなら、本当にあの方法を試すしかないかな。多分、レイなら刺される覚悟で止める事は可能だろう。でも、それは私が納得がいかない。

 ……やっぱり、あの手しかないかな。なら、被害が少なくなるように誘導しなければ。

「私も、黙って殺される真似はしないから!」

 そう言って後ろに跳ねる。また鬼ごっこだ。誘導はレイの時もやったけど、足の痛みと、相手は電光石火のような足の速さなので、難易度はその比じゃない。

 隷属紋を消すなら、その紋に触れる必要がある。だけど、手に持っている武器がなくなったところで、子供の私を殺す手段なんて、他にいくらでもある。だから、物理的に行動不能にしなければならない。

 隷属紋も、さすがに本体が気を失っていたら、動きは鈍る。その間なら何とか消せるだろう。そうでなくても、拘束してしまえば問題ない。

 さて、やるか。後でそれぞれ三時間はパパさんとママさんとシズハとケーナに説教されそうだけど……そんな事を恐れては生き残れないのだ。やりたいなら、その事だけを考えるんだ!いろいろな考えは動きが鈍り、結果的に判断力が落ちる。

 今は誘導する事だけを考えろ。それ以外は何も考えるな。そんな思いで何度も攻撃を避けては逃げるを繰り返す。

 避ける。逃げる。避ける。逃げる。ずっとこの流れ作業。

 やっと人気ひとけのないところまで来た。

「ここで良いかな」
「何するつもりだ?」
「……強制停止させようかなって思ってね」

 これは、私も無傷ではすまない。そして、これは私が前世の記憶があるから可能な事だ。

 改めて、周りに人がいないのを確認する。……人はいない。よし。

「受け身をとった方が良いよ?」

 私はそう言って、目の前に近づいた。【身体強化】で強化した腕でナイフを持っている腕を抑える。そして、私ごと【砂嵐】で包み込む。その衝撃で、袋の中の物が出てきて、そのまま風に巻き込まれていく。その時に、手を離した。反動で、少し距離があく。

「……【発火】」

 それと同時に、私と刺客の体に弱めの結界も張っておく。防御力を上げる程度だ。

 【発火】は、火をつけるだけの魔法。それだけなら、ただ火傷を負うくらいの弱さだ。でも、この袋に入っていたものがあり、それが宙を舞っているなら話は別だ。

 私が撒いたのは……小麦粉。勘の良い人なら分かっただろう。

 狙ったのはそう───粉塵爆発。

 私の予想通り、周辺は、まばゆい光と火に包まれた。

 ドォォォン!!!

 激しい音が鳴り響く。結界を張ってなかったら即死だっただろう。この音でみんな起きただろうな。
 
 私も、防御力を上げただけ。爆発の衝撃で、確実に骨が折れている。でも、左腕はなんとか使えるので、それで這うように刺客の元に行った。多分、死んでない。そう思いながら。

 数分かかって、刺客のところに来れた。手には武器を持っていない。爆発の衝撃で吹っ飛んでいったみたいだ。

「死んでないみたいね」
「受け身とってなかったら死んでたがな」

 お互い、軽口を叩く余裕はあるようだ。でも、私は視界がボヤけてきている。気を失う前に、終わらせないと。

「武器ないなら大丈夫ね。今のうちにやっちゃいましょう」

 もう感覚も分からない右腕で支えながら、左腕を伸ばして、隷属紋に触れる。

 そして、レイの時と同じように解除した。

「これで……もう、だいじょ───」

 あっ、ヤバいな。

 そう軽く思いながら、私は意識を失くした。
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