悪役令嬢?それがどうした!~好き勝手生きて何が悪い~

りーさん

文字の大きさ
35 / 53
公爵令嬢?それがどうした!

第35話 違和感の形

しおりを挟む
「……ぇ。ねぇってば!」
「何ですか?」

 声をかけている方がアニス。この敬語を使っているのは、ケーナね。何の話をしているのかしら?

「ケーナとシズハはどっちなのよ」
「どっち……とは?」
「何の話ですか」
「決まってるでしょ。レイくんとアルトくんどっち派って話よ」

 ────っ!?

 えっ?あるの?この世界?いや国?の女の子もこういう話で盛り上がるものなの!?

 ……でも、ちょっと気になる。

「何でそんな事を聞くんですか!飲んでた水を戻しそうだったんですけど!?」

 まぁ、分かる。私がケーナの立場だったら、間違いなく吹き出してた。

「だって気になるじゃない。二人とも、よくお嬢様や旦那様に呼ばれて仕事で一緒になるんでしょ?」
「あぁ、まぁ……」
「呼ばれ……ます」

 ケーナとシズハが言葉を濁している。少し声も小さく感じる。うん、そりゃそうだよね。使用人としてじゃなくて、裏稼業として一緒になってる方が多いんだもの……

 まぁ、私の場合は普通に用事がある体で呼ぶし、夜の仕事を言いつける時は昼に言うので、夜に呼ぶ事はない。パパさんもうまい事ごまかしているみたい。そんな訳で、ケーナとシズハはもちろん、レイとアルトも正体はバレてませんよ。みんなの演技という名の猫かぶりがうまいせいもありますけど。

 もうちょっと近づいてみようと思い、足音を立てないように注意しながらも、音を消す魔法【消音】をかける。

「何の話してるんです?」

 おっ。この声はアルトだな。機嫌は少しは良くなっているみたい。

「あぁ、それはね──」
「アルト達とよく仕事が一緒になるって話」

 急にアニスが口ごもったので、多分ケーナに口を塞がれたんだろう。

「そういうアニスさんはランカさんと一緒が多いですよね」
「……部屋が一緒だもの。自然とペアになりやすいのよ」
「僕もレイさんとは一緒なんで、仕事が一緒になりやすいんですかね?」

 へぇ~、アルトとレイは部屋が一緒なのか。そういうのは、侍従長が決めるらしいから、私達は知らない。

「おーい、アルト。食事終わったなら食器を下げろ」

 レイの声は少し小さい。他の人達よりも遠い位置にいるとみた。レイも、アルト達には敬語は使わないみたい。性格はそのまんまなんだろうけど。

「え~……レイさんが下げてくれません?いつもやってくれたし……」

 自分でやれよ!働かざる者食うべからずという言葉を知らないのか!ちょっと言ってやらないとと思って、部屋の方に向かった。

「あっ、レイくん!聞きたい事があるんだけど」
「何ですか?」
「レイくん達から見たお嬢様ってどんな人?」
「「「「……えっ?」」」」

 四人の声が揃った。私も思わず足を止めてしまう。

 えっ?大丈夫?これ、私が聞いてても良いやつですか?というか、あの四人には素で接している事が多いから、余計な事を言われそうな気がする。

 そうなったら、一気にイメージ崩壊するんだよなぁ……それはそれで面白いかもしれないけど、今は嫌だ。

「……何で僕達なんですか?」
「だって四人とも新入りでしょー?気になるじゃない♪」

 気になるじゃない♪じゃねぇーーーー!!!ケーナとシズハはともかく、あの男二人がまともな評価すると思うか!?いや、思わない!

 四人は、少し考えているみたいで、「お嬢様かぁ」とかそういう声が聞こえてきた。

「基本的にはお優しい方ですよ」

 そう言ったのはレイだった。よかった。意外とまともな評価……じゃねぇな。“基本的には”って何だ!まるで優しくないところも持っている奴みたいに思われるかもしれないじゃねぇか!一言余計なんだよ!そういう態度が私を苛立たせるとなぜ気づかない?

「でも、騎士と……一緒に……いる、時は……」
「ああ。なんか、狂戦士みたいに見えますね~」

 くそっ!それは否定出来ない!元々体を動かす事自体は好きなのもあって、剣の訓練をしている私は、まるで世紀末にいるようなヒャッハーしてる危ない奴に見られてもおかしくない。

 気分がハイになるんですもん。仕方ないじゃないですか……!

「そうですか?割と普段からあんな感じのような……」

 おいアルト!どういう意味だこの野郎!!普段から狂ってる危ない奴みたいに聞こえるじゃねぇか!

「そんな事はないだろ」

 一応、レイは否定してくれた。でも、アルトは「いやいや!」って否定する。

「レイさんは知ってるでしょ!武器を持ったときのあの化け物みたいな強さにあの狂気を!」

 よし、今から行くから覚悟しろよお前……!そう思って歩き出したら、他の声も聞こえた。これは……騎士のあいつらか。

「分かる!あのお嬢様は人間を止めてるんだ!」
「膝をつかせられねぇもん!」
「どうなってんだあの化け物令嬢って話だよな」

 前言撤回。お前ら全員・・・・・覚悟しろ……!と、その前に……

「シシー。目を瞑って耳を塞いでくれる?そして、向こうを向いていて欲しいの。良いって言うまでね」
「……?……うん」

 シシーちゃんは言われた通りに目を瞑って耳を塞いだ。そして、部屋がある方とは真反対の方角を向いている。ついでに、【消音】をシシーちゃんにかける。これで音は聞こえないはず。まだシシーちゃんの中の私の像を壊す訳にはいかない。

 部屋の方にどんどん近づく。

「……アルト、片づけておいてやるから、頑張れよ」
「えっ?急にどうしたんですか?」

 おっと。レイは何かを察したな。大丈夫だ。キャラはヒビがはいるくらいで壊れないように頑張るから。

「ねぇ、何の話をしてるの?エリーも混ぜてよ」

 ドアをノックして、そう言った。アルトがヤバいという顔をしたのは見逃していない。

「エリカお嬢様!どうされましたか?」

 そう言ってミレラがこっちに来た。まだキャラ崩壊をする訳にはいかない。

「アルトに用があってここに来たら、なんかエリーの事を話してたみたいだから。何の話してたの?」

 何を話していたかは知っているがな!声で誰かも分かっている。でも、みんながどういう反応をするかが見物だ。

「大丈夫です。お嬢様が気にする事はありません」
「分かった。じゃあ、アルトは連れていくね。はい、お菓子の差し入れ」

 アルトの腕を掴みつつ、持っていたお菓子を渡した。

「よし、行こう。これが終わったら後で騎士団にも顔を出すから」

 お前らをしばくのはその時だ!覚悟しとけよ!

 アルトを連れ出して、私達の周りに【消音】の結界を張る。

「でさ、さっきのはどういう意味か教えてくれる?」
「あぁ~……、あれはですね……」
「私に嘘は通用しないよ?素直に謝れば今日は許してあげる」
「……すみませんでした」

 ここでドSによる毒舌が出ていたら危なかったな……キャラ崩壊するところだった。

「ほんと、レイの魔道具をあんたに付け替えしたい」
「やられたくはないですけど、なんでやらないんですか?多分、レイさんはもう逃亡の危険はないんじゃ……」
「ううん、多分逃げて良いって言ったら逃げると思うよ。それに……ちょっと気になる事があるしね」

 何かが引っ掛かる。なぜ、レイにだけパパさんが魔道具による支配を行ったのか。それが分からない。最初は、私に傷をつけた腹いせかと思ったけど、どうも違うみたい。でも、パパさんは教えようとはしてくれない。それなら、自分で探るしかない。

「で、聞きたいんだけど……レイに会った事あるよね?ここに来る前に」
「……なぜそう思うんですか?」
「だって、“いつもやってくれたし”って言ってたじゃない。くれたって過去形でしょ。それなら、昔からの知り合いでしょ。多分、会うどころか、一緒に暮らしてたんじゃない?あの時、レイが知らないって言ったから、みんな合わせているんでしょうけど」

 レイに対して違和感はずっと持っていた。でも、さっきのアルトの言葉で、それが少し形になりつつあった。

「……確かに知り合いですよ。でも、だとしてもなんだって言うんですか」
「アルト達にはまだ秘密~♪」
「それはないでしょう!」

 話すにはまだ時期尚早というやつですよ。話すなら、まずはパパさんが先です。

 まぁ……それも、そう遠くないような気がするけど。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。 なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。 超ご都合主義のハッピーエンド。 誰も不幸にならない大団円です。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...