Crystal Asiro【クリスタルアシロ】

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第4章 神の領域

エリトラ闘技場

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 木材を使わず、石材で出来た家に店。普通ならば即死してしまうようなガスで灯る街灯。店には肉や魚、金で出来た装飾が並ぶ。食品はどれも鮮度が良く、中には生き物を丸々一匹売ってる所もある。そんな街並みを眺め、二人と二柱は馬車に乗り視察を行う。

「破壊神様、こちらの品物をどうぞ。」

「レイレード国王様、閣下様。ようこそお越しくださいました!」

「破壊神様、我が商品も見ていって下さい!」

 馬車の外から『奉仕種族』からの歓待を受けるが、誰一人ライトに声をかける者はいない。ライトもそれは覚悟をしていたようで、気にしていない様子である。

「ここも案の定か……。まぁ、多くの邪神が集まる場ではないだけマシなのかもしれないけどさ。」

「でもアタシは嫌よ、こんなの! ライトが差別サレル筋合いはないのに……。」

「でもレフトだって、僕の所でのけ者にされていた。君だって差別されて良いはずがないよ!」

「気持ちは分かるが、全員落ち着け。此処は大通りの真ん中。いくらなんでも馬車の中でも落ち着け。」

 クリスタルが諫めて、三人は少し興奮を冷ます。だが、それでも聞こえる差別の声。それを避ける様に、馬車はとある会場に向かう。

 __________

 たどり着いた場所は、闘技場。会場からは大勢の騒めきが聞こえる。通りには屋台が並び、様々な食べ物や飲み物、そして名状しがたき何かがお土産として売られている。それらを素通りして馬車はVIP専用の入り口にたどり着く。

「ようこそお越しくださいました、破壊神様とレイレード国王様。そしてレイレード王国閣下様と創造神様。」

「歓迎ありがとうごさいます。闘技場を拝見させて頂きます。」

「本日は楽しませて頂きます。」

 支配人が一礼をして挨拶をする。ライトとルーグも同様に挨拶をする。しかしクリスタルとレフトは不満げだ。レフトに至っては何処からともなく殺気を感じる。

「挨拶の順番が可笑しくはないか? どうして身分の低いルーグの方がライトよりも先に挨拶されている?」

「差別案件かシラね? アタシの鎌でぶった切ラレたいのかシラ?」

 レフトはいつの間にか取り出した大鎌を、当てられた殺気で動けない支配人の首元に当てる。

「レフト! 止めてあげて!」

 ライトが大鎌を持つレフトの手を取り押さえる。レフトはそれを解こうと暴れる。

「どうシて!? 貴方侮辱サレたのよ!? 止めないでよ!」

「僕を思うなら、猶更彼を死なせないで! 僕がそういうの見るの嫌なの知ってるでしょう!?」

「……ッ! 分かったわよ、ライト……。」

 ガンッ!と音を立てて大鎌を床に叩きつけ、レフトは大鎌を神力で何処かへ仕舞う。それを見て、支配人は気を失い倒れ込む。周りのスタッフが支配人を運び出し、支配人代理が慌てて四人の前に出てくる。

「我が支配人が申し訳ございませんでした……! 御慈悲を下さりありがとうございました、創造神様、破壊神様。」

「……今後は発言に気を付けル様に言っておきなサい。」

「お礼はいいよ。支配人さんの事、お願いしますね。」

 ひと悶着あったものの、四人は支配人代理の案内でVIP席に案内されていった。

 __________

「勝者、赤コーナー!」

 観客の歓声を聞き、勝者が拳を挙げる。その様子を二人と二柱は歓談しながら楽しむ。

「彼、強いね! 邪神のようだけれども、何の邪神だったんだろう?」

「確か『モノを腐食サセル邪神』よ。彼が神力を使って素手で触ったものは、全て腐食スルわ。今はソの気がないかラ腐食をシない訳よ。」

「にしても、この闘技場は面白いな。どんな手でもいいから『相手を気絶させれば勝ち』だろ? 今回はグロテスクな戦いじゃなかったから、グロいのが苦手なライトも平気な様子で見られたが。」

「まぁ、場合によってはライトは見られないだろうな。『どんな手でもいい』んだからな。」

「……その場合は、僕はそっとお手洗いに逃げようかな。」

 血の様な色の紅茶を飲みつつ歓談し、二人と二柱は次の試合を見る。しばらく仲良く見学をしていたが、次第にレフトの動きがうずうずし始めた。最初はうずうずしていただけだったが、次第にその紅い左目が爛々と輝く。しきりに腕も振り回し、今にも試合に飛び入り参加しそうな様子だ。そんな様子のレフトにクリスタルが問いかける。

「レフト。お前の様子からして『手合わせしたくなった』、とかか?」

 レフトが普段の笑顔ではない、口元まで裂けるかの様な邪悪な笑みを浮かべる。紅い左眼は、何処となく光って見える。

「そうね……。クリスタル、久シぶリに手合わせシてくれないかシラ?」

 その質問に反して、『反論は認めない』と輝く眼が物語っている。クリスタルがいつものニヤリ顔で答える。

「いいだろう。ライトでも見られる試合なら、手合わせを受け入れてもいい。」
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