Crystal Asiro【クリスタルアシロ】

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第3章 国際首脳会議

国際首脳会議、終了

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 レイレード王国で開かれている国際会議も、いよいよ終わりを迎えようとしていた。最後の交渉相手はライトとレフトである。今回も正式な交渉と言う事でクリスタルとルーグ、そしてライトとレフトも正装をしている。シンプルで洗練されたデザインの衣服を身にまとう二人と二柱の図は、まさに壮観である。いつものようにクリスタルが脚を組み、資料を見ながら交渉を進める。

「では交渉でも始めようか、創造神殿に破壊神殿。」

「そうだね、始めよ……、始めましょう。」

「ライt、ライルート様、口調が乱れていますよ。」

「ソレは貴方もよ、ルーグ……閣下。」

 交渉早々に普段の仲の良さが出てしまっており、口調が崩れている者が数名出ているが。ライトが苦笑いを浮かべて提案する。

「……もう普段の口調で喋っていいかな? どうしても人が居ないと敬語が抜けちゃうよ。」

「それ俺も思った~! もう普通に喋るか。」

「ソうよ! もうこのメンツだけシか居ないんだかラ!」

「いいのかこんな緩い会議で……。」

 一気に雰囲気がいつもの四人の会話の緩さになってしまう。それでも内容はしっかりと進める。

「で、今回の俺の要望は『穀物用の農薬の取引』『食肉用家畜の輸入』だ。前者はライト、後者はレフトに頼みたい。」

「僕はいいよ! 代わりに僕は『畑の収穫機械の技法』を知りたいな!」

「アタシもいいけど、『飼育用の餌の輸入』シてね? 儲かラないかラ。」

 クリスタルの性格を知っている以上、ライトとレフトは早速要望を言う。長い挨拶やおだてがあるより、こちらの方がクリスタルの性格に合っているのを二人は知っているからこそ、スムーズに進められる交渉だ。クリスタルとルーグはそれぞれの要望を聞き、少し悩む。そしてルーグがクリスタルに提案する。

「ライトの内容だと、俺らの収益が少なくなるな。クリスタル、もう1つ何か軽めの要望を出さないか? それと皆、アフタヌーンティーいるか?」

「なら、内容をもう少し変えさせて貰うか。『果樹の飼育方法』ではどうだ? アフタヌーンティーはくれ。」

「僕も欲しいな!」

「お菓子も出シてね!」

 アフタヌーンティーの話まで出している交渉だが、今まで一番の交渉の進み具合である。ルーグが一度退出し、アフタヌーンティーを用意しに向かう。残ったクリスタルとライトとレフトは続けて交渉を続ける。

「アフタヌーンティーが出てくるまでに交渉同意書作ろうぜ。お茶やら菓子やらで汚れちまうから。」

「賛成! サッサと話進めルわよ!」

「だね! 交渉のお話に戻ると、技術の交換の内容だよね? 機械はクリスタルの国から輸入させて貰って僕が知識を得ればいいけど、果樹の飼育方法はどうやって伝える?」

 ライトの疑問にクリスタルが顎に手を当て考える。

「そっちの技術者をこちらに呼ぶのもな……。だがその逆もちょっとな……。」

「死者が神の世界に来るのは、住んでいる神からいい顔はされないからね。『死んだ者が神の世界を汚すな』って。」

「アタシの所だと、信者を増やソうと襲ってくル神がいルわ。ソレは危険よ。」

「……あ。」

 二柱が悩んでいると、クリスタルが声を出す。そしていつものニヤリとした顔をする。

「決めた! 俺が視察に行く!」

「結局そういうオチなのね……。」

「貴方、本当に視察好きよね~。いいじゃない!」

「え、何? 視察するのか?」

 アフタヌーンティーセットをカートに乗せて入って来たルーグは、何事かと三人を見渡す。そんなルーグにクリスタルが近づき肩を叩いて、告げる。

「ライトとレフトん家に遊びに行くぞ! 上司命令だ!」

「『視察』を『遊びに行く』って言うな! わかったけどさ!」

 クリスタルの唐突の命令に、ルーグはツッコミながらも同意する。そしてアフタヌーンティーを用意しつつ、菓子も差し出す。今日はマカロンやプチケーキ、サンドイッチ、ミニバーガーなどがある。

「先に頂きまース!」

「おい! まだハーブティー入れてないから待ってろ!」

「でもつまみ食いしたくなるよね! クリスタルの所のご飯美味しいもの!」

「だろ? 選別してるからな!」

 アフタヌーンティーをしつつ、座談会となった交渉の場は穏やかに進む。そして途中で契約書を作るのを忘れていたのを思い出すのであった。
 __________

 ライトとレフトとの交渉も無事済み、各国首脳会議が終わる。今は会議が終わった記念の晩餐会が行われている。今回は各国からの挨拶は無いものの、お礼のラッシュが待っていた。

「レイレード国王様、会議の件では申し訳ございませんでした。」

「レイレード国王様、また是非交渉の場を設けましょう。」

 お礼ラッシュにクリスタルは辟易する。持っているグラスにピシリとヒビが入る。その様子を見て、周りが一歩引いている。

「面倒だ……。何でまたこうも挨拶して来るんだ。」

「陛下、顔に出ております。お控え下さい。」

 クリスタルの態度に、背後で控えているルーグが苦言を呈する。それに対してクリスタルが文句を言う。

「面倒なものは面倒だ。ただでさえ疲れてるってのに……。」

「それでも態度には出さないで頂きたい。周りに影響が出ますので。」

「じゃあこの挨拶ラッシュ、どうにかしてくれ。」

 そのクリスタルの言葉に、ルーグがクスリと笑う。

「1つ、良い案がございますよ。」

「何だ? 言ってみろ。」

「では僭越ながら、」
 
 ルーグはクリスタルの目の前で跪いて、手を差し出す。

「俺と一曲、踊って頂けませんか? 国王陛下。」

 クリスタルは面食らうが、それも一瞬。すぐにニヤリと笑ってルーグの手を取る。

「いいだろう。踊ってやる。」

 ルーグのエスコートでクリスタルは会場の中心へ移動する。オーケストラにルーグが手を上げ合図を出せば、曲が始まる。弦楽器とハープが特徴的なゆったりとした曲だ。クリスタルとルーグは一礼をして、互いの手を取る。息を合わせて、曲に合わせて。二人は慣れた様子で踊り始める。周りが息を吞む程優雅に踊るその様は、何処か洗礼された美しさがある。周りの目を気にせず、二人は踊る。その最中ルーグが囁く。

「な? 誰も話しかけない、良い案だろう?」

「ハハッ、確かにな。」

「どうする? 暫く踊るか?」

「そうしよう。話しかけられるのは、ダンスパートナーだけでいい。」

 晩餐会は、深夜まで続く。
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