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第2章 異世界での冒険
メツマ誘拐事件
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二人は2か月前馬車で通った道を駆け抜けていく。速さが凄まじいため、周りに突風が発生している。景色を置き去りにして進んでいき、あれから1時間ほどでバチク領まで到着した。『身体強化』の魔法を解き、メツマの送り届け先であった友人邸のドアをノックする。するとメイドが出て来た。
「突然すまない。メツマ嬢が帰り際に誘拐されたと、ブヤマキ領主の従者から聞いた。何か情報はあるだろうか? 救助に向かいたい。」
クリスタルの言葉を聞き、メイドが「少々お待ちを」と言い騎士に取り次いだ。出て来た騎士が地図を出しながら情報を話す。
「メツマ様が攫われたのは、バチク領とブヤマキ領の間にあるヂグダの洞窟付近です。何者かに襲撃された様子で、只今我々で隊を組んで救出しようと隊を組んでいたところです。ご助力頂ければ幸いです。」
「誰がメツマ嬢を攫ったのかはわかるか?」
「それが何者かが分からないそうです。雇われの者達ばかり集められているそうですが、その黒幕は判明しておりません。」
「そうか。バチク領主はメツマ嬢の救助の対策本部を作っているのか? 隣の領主の娘が攫われたんだから、協力するのが筋じゃないのか?」
「それが何故か対策本部を作るどころか、我関せずでして……。お恥ずかしい限りです。」
「腰が重い領主だな。まぁ、俺達が先行で救助に向かうから、お前達は周りを警戒しながら後から来てくれ。伏兵がいるかもしれないからな。」
「分かりました。ご協力ありがとうございます。」
騎士に話しを付け、クリスタルとルーグは地図を頼りに『ヂグダの洞窟』へ向かう。鬱蒼とした森の中、ぽっかりと口を開く洞窟を見つける。中からは何人もの人の気配がするが、同時に二人の周りからも気配が感じられる。
「ルーグ、お前は周りを片づけろ。俺は救助に向かう。」
「了解。気を付けて。」
『身体強化』後に、二手に別れる。ルーグは気配の感じるまま辺りを駆け巡る。見れば草木に扮した者達が突然姿を消した自分達を探している。その首にナイフを振り下ろせば、血しぶきが上がる。それさえ避けてルーグは次の気配を探り、血だまりを作っていく。
一方のクリスタルは洞窟内部に入っていった。侵入して早速荒くれ者が数人出てくる。
「お嬢ちゃん、こんな所にきて危なグフッ!!」
出て来た荒くれ者の鳩尾に蹴りを入れ、吹き飛ばす。唖然としている荒くれ者の背後をとり、急所に拳や肘を入れて潰していく。騒ぎを聞きつけた荒くれ者も同様だ。最奥に進めば、荒くれ者に跨がわれ今にも襲われそうになっているメツマがいた。
「いやぁ……! たすけ……!」
それを見たクリスタルは 荒くれ者にタックルして転がし、仰向けになったところで股間を踏みつぶした。
「……この外道がッ!」
「あがッ……!!」
そう言い荒くれ者は気絶する。もう再起不能だろう。それを見てクリスタルは寝転がっているメツマに手を差し伸べる。
「救助に来た元護衛だ。覚えているか?」
「あ、あの……。」
「怖い目にあったばかりだからな、上手く話せないだろう。外に向かうぞ。友人の騎士団まで送り届けるから。」
「あ、ありが、とう……。」
震えながらもメツマはクリスタルの手を取る。メツマの歩行ペースに合わせながらゆっくり先導をする。ヂグダの洞窟を出れば、ルーグと一緒に騎士団とメツマの友人が待っていた。
「メツマ! 無事!? 怪我はない!?」
「あ、ああ……!」
メツマは友人に抱き着き、泣き声を上げた。
「怖かった……! 怖かったよぉ……!! うああああああぁぁぁ……!!」
それを見て騎士団は&したように胸を撫でおろした。クリスタルが騎士団に向かう。
「荒くれ者が10数人、洞窟内に居る。特に最奥の奴はメツマ嬢を襲いかけていた重罪人だ。処罰を頼む。」
「そうでしたか……! 本当にありがとうございました。」
クリスタルはルーグに目配せして、騎士団に告げる。
「俺達は急ぎブヤマキ領主にメツマ嬢の無事を話しに行く。メツマ嬢は落ち着いてから、お宅らが送ってやってくれ。」
「もとより我々がお送りする心づもりです。では言伝をお願い致します。」
メツマと友人、騎士団を見送る。クリスタルはルーグに中での出来事を話しながら、ブヤマキ領主邸へまた走りながら向かう。
「……という感じで、かなり危なかったな。」
「マジかよ……。トラウマものだろ、そんなの。」
ルーグの顔色が悪い。それに気づいたクリスタルが「しまった」という顔をした。
「……なんかすまん。お前のトラウマ刺激したか?」
「若干は、な。でもメツマ嬢は未遂で終わってるから、まだ気分は平気だ。」
「それならいいが、気分悪くなったら言えよ?」
「そうする。」
二人は行きより少し速度を落としながら、ブヤマキ領に入っていく。空は少々曇り気味になり始めている。
______
ブヤマキ領主にメツマの無事を伝えると、感謝の言葉と共に謝礼の金貨が送られた。
「いやぁ、娘が世話になったな。これは受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。」
「ところで二人は、以前メツマの護衛をした方では?」
「そうだな。以前護衛依頼を受けた者で間違いはない。」
「なら質問がある。メツマの馬車を襲わせる計画が、何者かに妨害されたようなのだ。何か知らないか?」
「妨害された? それで『襲撃がある』と言われてたのに何事も無かったのか。」
「申し訳ございません、俺達には何があったのか分かりません。お嬢様にお聞きしても良いですが、俺達は本当に何事も無く護衛をしているのが証言されるかと。」
「そ、そうか……。それならいいんだ。何せ証拠も残っていないから、犯人の特定もできていない。お前達がやった証拠もないし、メツマから証言が取れるなら本当に何もないだろう……。」
「俺達は暫くオンシー集落に居る。何かあれば使いでも出してくれ。」
「そうか、何かあれば連絡しよう。では、もう行って良いぞ。」
「では失礼します。」
「じゃあな。」
邸宅を出て、二人は通りを歩く。野菜や雑貨に目を奪われながら、ルーグがクリスタルに問う。
「で、次はオンシー集落に向かうのか?」
「そうだな。まだボスオーガから『対価』を貰っていない。あと『奢り』もあるしな。」
「暫く飲まず食わずだったしな。ご飯食べに行こう。ちなみに『対価』は決まっているのか?」
「ああ、今の俺達に必要なモノだ。」
クリスタルがニヤリと笑う。それを見てルーグは笑いながらため息をつく。
「なんか嫌な予感がするから先に言っとくが、あんまり食い過ぎるなよ?」
「突然すまない。メツマ嬢が帰り際に誘拐されたと、ブヤマキ領主の従者から聞いた。何か情報はあるだろうか? 救助に向かいたい。」
クリスタルの言葉を聞き、メイドが「少々お待ちを」と言い騎士に取り次いだ。出て来た騎士が地図を出しながら情報を話す。
「メツマ様が攫われたのは、バチク領とブヤマキ領の間にあるヂグダの洞窟付近です。何者かに襲撃された様子で、只今我々で隊を組んで救出しようと隊を組んでいたところです。ご助力頂ければ幸いです。」
「誰がメツマ嬢を攫ったのかはわかるか?」
「それが何者かが分からないそうです。雇われの者達ばかり集められているそうですが、その黒幕は判明しておりません。」
「そうか。バチク領主はメツマ嬢の救助の対策本部を作っているのか? 隣の領主の娘が攫われたんだから、協力するのが筋じゃないのか?」
「それが何故か対策本部を作るどころか、我関せずでして……。お恥ずかしい限りです。」
「腰が重い領主だな。まぁ、俺達が先行で救助に向かうから、お前達は周りを警戒しながら後から来てくれ。伏兵がいるかもしれないからな。」
「分かりました。ご協力ありがとうございます。」
騎士に話しを付け、クリスタルとルーグは地図を頼りに『ヂグダの洞窟』へ向かう。鬱蒼とした森の中、ぽっかりと口を開く洞窟を見つける。中からは何人もの人の気配がするが、同時に二人の周りからも気配が感じられる。
「ルーグ、お前は周りを片づけろ。俺は救助に向かう。」
「了解。気を付けて。」
『身体強化』後に、二手に別れる。ルーグは気配の感じるまま辺りを駆け巡る。見れば草木に扮した者達が突然姿を消した自分達を探している。その首にナイフを振り下ろせば、血しぶきが上がる。それさえ避けてルーグは次の気配を探り、血だまりを作っていく。
一方のクリスタルは洞窟内部に入っていった。侵入して早速荒くれ者が数人出てくる。
「お嬢ちゃん、こんな所にきて危なグフッ!!」
出て来た荒くれ者の鳩尾に蹴りを入れ、吹き飛ばす。唖然としている荒くれ者の背後をとり、急所に拳や肘を入れて潰していく。騒ぎを聞きつけた荒くれ者も同様だ。最奥に進めば、荒くれ者に跨がわれ今にも襲われそうになっているメツマがいた。
「いやぁ……! たすけ……!」
それを見たクリスタルは 荒くれ者にタックルして転がし、仰向けになったところで股間を踏みつぶした。
「……この外道がッ!」
「あがッ……!!」
そう言い荒くれ者は気絶する。もう再起不能だろう。それを見てクリスタルは寝転がっているメツマに手を差し伸べる。
「救助に来た元護衛だ。覚えているか?」
「あ、あの……。」
「怖い目にあったばかりだからな、上手く話せないだろう。外に向かうぞ。友人の騎士団まで送り届けるから。」
「あ、ありが、とう……。」
震えながらもメツマはクリスタルの手を取る。メツマの歩行ペースに合わせながらゆっくり先導をする。ヂグダの洞窟を出れば、ルーグと一緒に騎士団とメツマの友人が待っていた。
「メツマ! 無事!? 怪我はない!?」
「あ、ああ……!」
メツマは友人に抱き着き、泣き声を上げた。
「怖かった……! 怖かったよぉ……!! うああああああぁぁぁ……!!」
それを見て騎士団は&したように胸を撫でおろした。クリスタルが騎士団に向かう。
「荒くれ者が10数人、洞窟内に居る。特に最奥の奴はメツマ嬢を襲いかけていた重罪人だ。処罰を頼む。」
「そうでしたか……! 本当にありがとうございました。」
クリスタルはルーグに目配せして、騎士団に告げる。
「俺達は急ぎブヤマキ領主にメツマ嬢の無事を話しに行く。メツマ嬢は落ち着いてから、お宅らが送ってやってくれ。」
「もとより我々がお送りする心づもりです。では言伝をお願い致します。」
メツマと友人、騎士団を見送る。クリスタルはルーグに中での出来事を話しながら、ブヤマキ領主邸へまた走りながら向かう。
「……という感じで、かなり危なかったな。」
「マジかよ……。トラウマものだろ、そんなの。」
ルーグの顔色が悪い。それに気づいたクリスタルが「しまった」という顔をした。
「……なんかすまん。お前のトラウマ刺激したか?」
「若干は、な。でもメツマ嬢は未遂で終わってるから、まだ気分は平気だ。」
「それならいいが、気分悪くなったら言えよ?」
「そうする。」
二人は行きより少し速度を落としながら、ブヤマキ領に入っていく。空は少々曇り気味になり始めている。
______
ブヤマキ領主にメツマの無事を伝えると、感謝の言葉と共に謝礼の金貨が送られた。
「いやぁ、娘が世話になったな。これは受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。」
「ところで二人は、以前メツマの護衛をした方では?」
「そうだな。以前護衛依頼を受けた者で間違いはない。」
「なら質問がある。メツマの馬車を襲わせる計画が、何者かに妨害されたようなのだ。何か知らないか?」
「妨害された? それで『襲撃がある』と言われてたのに何事も無かったのか。」
「申し訳ございません、俺達には何があったのか分かりません。お嬢様にお聞きしても良いですが、俺達は本当に何事も無く護衛をしているのが証言されるかと。」
「そ、そうか……。それならいいんだ。何せ証拠も残っていないから、犯人の特定もできていない。お前達がやった証拠もないし、メツマから証言が取れるなら本当に何もないだろう……。」
「俺達は暫くオンシー集落に居る。何かあれば使いでも出してくれ。」
「そうか、何かあれば連絡しよう。では、もう行って良いぞ。」
「では失礼します。」
「じゃあな。」
邸宅を出て、二人は通りを歩く。野菜や雑貨に目を奪われながら、ルーグがクリスタルに問う。
「で、次はオンシー集落に向かうのか?」
「そうだな。まだボスオーガから『対価』を貰っていない。あと『奢り』もあるしな。」
「暫く飲まず食わずだったしな。ご飯食べに行こう。ちなみに『対価』は決まっているのか?」
「ああ、今の俺達に必要なモノだ。」
クリスタルがニヤリと笑う。それを見てルーグは笑いながらため息をつく。
「なんか嫌な予感がするから先に言っとくが、あんまり食い過ぎるなよ?」
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