Crystal Asiro【クリスタルアシロ】

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第2章 異世界での冒険

夕飯ゲットだぜ!

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「これが紹介状だ。受付にでも見せてくれ。達者でな。」

「お世話になりました。お達者で。」

「じゃあ、気を付けてなー。」

 サマラタウンに着いたクリスタルとルーグは、ブモ一行と別れると背後にあるギルド組合へ入っていく。武装した人間達がまばらに集まり話をしたり、張り出されているクエスト一覧を眺めていたりする。二人は周りの視線を気にもせず、受付へ向かう。

「いらっしゃいませ。ご用件をお伺いします。」

「ギルドに入りたい者だ。二人でパーティを組む。とある商人からの紹介状もある。」

「拝見します。」
 
 受付が紹介状を一通り見る。

「ギルド長へ報告いたします。少々お待ちください。」

「分かった。」

 数分立てば、受付が戻って来る。

「ギルド長判断で、貴方方はギルド加入試験をパスしての加入を認められました。Gランクからのスタートです。」

 その手には『ランクG』と書かれた鉛製のプレートが2つある。クリスタルとルーグの名前がそれぞれ記載されている。
 
「どうも。クエストは向こうのを受ければいいんだろう?」

「そうです。ゴブリン討伐をされてはおりますので、最初は薬草採取かゴブリン討伐のどちらかから受ければ良いでしょう。」

「サンキュー。行ってくる。」

 ルーグはチップを渡してクリスタルに向き直る。クリスタルは早速クエスト掲示板に向かっていた。慌ててルーグが向かう。

「先に行くなよ。一応俺は護衛なんだからな?」

「いつも旅でやってる事だぞ? 聞かなくても良いし。さて、同時に2つのクエストは無理らしいし、薬草採取でもするか。いいな?」

「いいけど、相談くらいはしろよなぁ……。全く、お前は……。」

 薬草採取について書かれたクエストの紙を千切り、クリスタルはポケットに入れる。

「食料調達も兼ねてトワキ森にでも行くぞ。薬草はその辺りにも生えてるらしいし。」

「了解。行こうか。」

 二人はサマラタウンの門を出て、街を後にした。

  ______
 1時間歩き、トワキ森にたどり着く。動物の気配もするが、魔物の気配もする。クエストの紙を見れば、森の手前から中ほどにかけて生えているらしい。
 
「ルーグ、目的にモノは中ほどにかけて生えているそうだ。よく見といてくれ。」

「了解。お前もな。」

 人が通れる道はあるものの、二人はあえて獣道を選び進んでいく。人の通る道に目当ての薬草が生えているなら、そもそもクエストにはならないからだ。獣道を行けば、猪が何か草を食んでいる。二人は立ち止まり、ルーグが輪になっているワイヤーを投げる。猪の首にワイヤーの輪が引っ掛かり、苦し気に呻く。その間にクリスタルが猪に近付き、首を刎ねた。あっさりと首はもげ、辺りは血の海と化す。

「猪ゲットだぜ!」

「夕飯の心配がなくなったな。時間があれば、皮も加工して売ろう。」

「そうするか。……てか猪が食べてたもの、目的の薬草じゃないか?」

「本当だ。採取して帰るか?」

「採取はしよう。だがもうしばらく金になる物を探そう。この薬草、肉の臭み消しになるかもしれないから、晩飯に使ってみたいし。」

 クリスタルは猪の血抜きをしつつ答える。ルーグは先ほどのワイヤーを手にぐるぐると巻き付けて片づけている。

「ルーグ、ついでだからワイヤーで薬草刈り取っておけ。」

「なんで片づけている今言うんだよ! 仕舞うの面倒なんだぞ!」

「しゃちょー、そう言わずに~。」

「誰が『しゃちょー』だ!」

 そう言ってルーグは先ほどのワイヤーを出す。ワイヤーの先に小さなナイフを付け地面に刺す。そうしてナイフとの間にあるワイヤーを使い、薬草を一気に刈り取る。雑草と薬草を仕分けつつ地道に集めとる。

「面倒だな……。次からアイテムボックス持って行かないか?」

「あってもいいが、不便さも大事だぞ? その気になったらアイテムボックス作れるし。」

「よそでは高級品のアイテムボックスが、作れるのが不思議ではあるんだが……。」

「仕組みが分かれば量産なんて簡単だぞ? さっさと手を動かせ。」

「動かしてますよ、国王様。」

「旅の時は『ただの旅人のクリスタル』だ。『国王クリスタル』はどっかにいった。」

「我儘な。」

 二人はそれぞれ作業をしつつ談笑する。作業が終われば金になる物探しのため、森の奥へ進んでいく。
 
  ______

 さらに3時間ほど歩くと、もう日が暮れかかっており森の中も暗くなってきている。

「今日はここで野営だ。準備しろ。」

 少し開けた場所でクリスタルはそう言った。ルーグが荷物を降ろす。

「了解。俺は飯作っておくから、そっちは寝る場所作っておいてくれ。」

「はいはーい。」

 クリスタルはロープとプラスチック製のシートを持ち出す。シートの端の穴にロープを通し、木の太い枝や幹に括り付けて簡易的なテントを作る。床に大きな布を敷き、荷物をテントの中に入れる。
 ルーグは開けた場所に枝と石を組み合わせて火をつける。焚火が出来上がったところで荷物から鉄の棒らしきもの3本、ヤカンや鍋と言った調理器具と食器類、仕留めた猪を持ち出す。ルーグが鍋に人参、ジャガイモ、ネギ、薬味と先ほどの薬草を入れ、軽く炒めて水を入れる。そこへ一口大に切った猪肉を入れて煮込む。その間クリスタルは猪の皮を外に干す。

「ルーグ、今日の飯は何だ?」

「今日は猪汁だ。肉が余ったら乾燥させて日持ちさせよう。」

「そうだな。内臓とかは処理しといたから大丈夫だとは思うが、皮についた血を狙って魔物がくるかもしれないから、火は絶やすなよ?」

「分かっているっての。」

 そのうち鍋が煮たたりヤカンの湯も沸騰し始める。ルーグは鍋に豆から作った調味料を入れて味を整え、クリスタルはコップにティーパックとヤカンのお湯を入れる。猪汁が完成すると容器に取り分けスプーンを用意する。二人で火を囲み猪汁とお茶を頂く。

「頂きまーす。」

「召し上がれ。」

 猪汁を啜ると発酵した豆の風味と薬味が合わさり、何とも言えぬ旨味が広がる。薬味の効果か、体も温まっていくようだ。ルーグは順調に食べ進めていくが、クリスタルは猪肉ばかり食べており野菜と汁は手つかずだ。

「クリスタル、熱いの苦手なのは分かるが肉ばっか食うなよ。野菜も食えよ。」

「肉が上手いから仕方ない。野菜も汁も食べるが、熱いから今は無理だ。」

「まぁ、後で食べるならいいけど、言うほど熱いか?」

「少なくとも俺には熱すぎるな。お前の『ぬるい』は俺にとっての『熱い』だからな。」

「流石は氷の種族……。」

 談笑しながら食事を終え、お茶を飲みながら食器と調理器具を片づける。それが終わった頃、ルーグが1つあくびをする。

「ふぁあ……。ねむ……。」

「さすがに疲れが出たな。俺が先に火の番するから、ルーグは寝てろ。暫く寝たら交代してくれ。」

「了解。ありがとな。」

「いいって事よ。おやすみー。」

「お休み。」

 ルーグはテントに入り、着替えを腹にかけるとそのまま眠りについた。クリスタルは焚火に薪を入れつつ、2杯目のお茶を啜る。虫の声をBGMに、夜空を見上げ天気の予測をする。明日も晴れが続きそうだ。
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