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おまけ1.俺の隣には
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見ていてすぐに分かった。兄ちゃんは瀬良さんのことが好きなんだって。
だって、兄ちゃんの目がそう言ってる。
兄ちゃんはモテる。背が高くてイケメンだし、運動神経もよくて、頭もいい。ちょっととっつきにくいらしいけど、すごく優しい。
我が兄ながら、完璧だと思う。
だから、最初は『なんでわざわざ男なの?』って思った。
確かに瀬良さんはアイドルみたいにかわいい顔してるけど、それでもやっぱり男だ。
俺とは違って、兄ちゃんはモテるんだから、かわいい女の子にすればいいのに。
「最近、兄ちゃん全然家にいないよね」
「休みの日は瀬良くんのところに入り浸りだもんねぇ」
もともと平日は部活で帰りが遅いし、休みの日は瀬良さんの家に泊まりに行ってほぼいない。
「……母さんはいいの?」
俺が気付いてるくらいだから、母さんが気付かなわけがない。はぐらかした聞き方をしたけど、察しのいい母さんならきっと、俺が言わんとしていることぐらいわかるだろう。
「んー、瀬良くんが迷惑じゃないならいいんじゃない?」
「そっか」
迷惑どころか、きっと瀬良さんも兄ちゃんのことが好きだ。
やっぱり付き合ってるんだろうな。
「瀬良さん、いらっしゃい!」
進路を考えるようになって、俺はやっぱり兄ちゃんと瀬良さんが通ってる鳳沢学園に目指すことにした。瀬良さんと同じeスポーツ部に入りたい、それがおっきな理由だ。
でも、うちは裕福な家庭なわけではないから、“奨学生枠”を目指して、週に一回、土曜日に瀬良さんに勉強を教えてもらうことになった。
兄ちゃんは不満そうな顔をしたけど、瀬良さんは学年一位、全国でもトップクラスだって聞いたから、適任でしょ。
「基礎は問題ないし、応用がしっかりできるようになれば、全然問題ないと思うよ」
瀬良さんは優しい。ゲームもすっごいうまくて、かっこいい。勉強を教えるのも上手だ。俺の進路に影響与えるくらい、尊敬してるし、憧れの人だ。
だから、俺は二人でいられるこの時間がすごく嬉しい。
「うん、目指すからにはちゃんと“奨学生枠”に入れるようにがんばるよ。でも、入学できても瀬良さんがいないのだけはホントに残念だな~」
瀬良さんとは学年が三つ違うから、俺が入学するときには卒業してしまう。多分、卒業してもこうやって家には遊びに来てくれるだろうけど、兄ちゃんみたいに、学校生活を一緒に送るっていうことをしてみたかった。
「大丈夫だよ、後輩もいい奴らばっかりだから」
瀬良さんは机に頬杖を突きながら、反対の手で俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
瀬良さんはよく、こうやって俺の頭を撫でる。子ども扱いされてるのはちょっと悔しいけど、その優しい眼差しとか、温かい手は、嫌じゃない。
「瀬良さん、俺のこと完全にガキ扱いしてるよね」
「ガキ扱いしてるつもりはないけど、敦也は弟感あるから、つい撫でたくなる」
そう言ってまた俺の頭を優しい顔で撫でる。
“弟”……俺はその言葉に胸に小さな棘が刺さったような痛みを感じた。
「高槻家は俺の癒しだわ。敦也も真矢ちゃんもホントかわいい」
初めのころは小さい子供に慣れていない、って瀬良さんは妹の真矢には余所余所しかった。でも慣れてきたのか、最近はめちゃくちゃに愛でているのが見てとれる。
瀬良さんにとって俺と、真矢は同じ枠の中にいる。
違うのはきっと、兄ちゃんだけ。
「……兄ちゃんは?」
聞いてから、ハッとした。俺はなんて答えてほしいんだろう。
「柊哉もかわいいよ」
そう言った瀬良さんは、やっぱり俺や真矢に向けるものとは全然違う顔をしていた。
その顔に、また俺の胸が痛んだ。
「勉強、はかどってるか?」
短いノックの後、部活から帰ってきた兄ちゃんが部屋に入ってきた。集中して勉強していたら、いつの間にか夕方になっていたみたいだ。
「柊哉、おかえり。部活、お疲れ様」
「はい、火月さんもお疲れ様です。敦也はちゃんと勉強してましたか?」
いつの間にか、兄ちゃんは瀬良さんのことを下の名前で呼ぶようになった。そして、本当に大切なものに向ける目で瀬良さんを見る。
それは瀬良さんも同じで、二人には、二人だけの、他の人には入れない空気がある。
「敦也は優秀だし、俺なんて必要ないくらいだよ」
「えっ必要だよ?!」
俺の言葉に驚いた顔をしたのは兄ちゃんだった。瀬良さんは真矢を愛でている時と同じ顔で、また俺の頭を優しくなでる。
「そう言ってもらえると、嬉しいよ」
でも、俺を撫でていた手は、少しムッとした顔をした兄ちゃんにすぐにはがされてしまった。
弟に妬かないでよ。
何がどう転がっても、俺は“弟”なんだから。
兄ちゃんに向けられる顔が、俺に向けられることはないんだから。
今日の勉強時間を終えて、夕食を一緒に食べると、あっという間に瀬良さんの帰る時間になる。やっぱり兄ちゃんは今日も瀬良さんの家に泊まりに行くらしい。
「いつもごちそうさまです」
「いえいえ、兄弟そろってお世話になってるんだもの。むしろ足りないくらいよ」
母さんの言葉に、瀬良さんは複雑そうに笑った。素直に受け止めていいのか、きっと悩んでしまったんだろう。
でも、大丈夫。うちの家族はみんな、瀬良さんのことが大好きだよ。
「瀬良さん、また来週」
「うん、また来週。お邪魔しました」
家を出て、並んで歩く兄ちゃんと瀬良さんは、どこからどう見ても“恋人同士”だ。
それを見て、俺の胸に刺さる小さな棘がまた増える。
でも、その棘が何なのかは、わからないままでいい。
だって、あの人の隣にいるのは俺じゃない。
未来の俺の隣には、どんな人がいてくれるかな。
だって、兄ちゃんの目がそう言ってる。
兄ちゃんはモテる。背が高くてイケメンだし、運動神経もよくて、頭もいい。ちょっととっつきにくいらしいけど、すごく優しい。
我が兄ながら、完璧だと思う。
だから、最初は『なんでわざわざ男なの?』って思った。
確かに瀬良さんはアイドルみたいにかわいい顔してるけど、それでもやっぱり男だ。
俺とは違って、兄ちゃんはモテるんだから、かわいい女の子にすればいいのに。
「最近、兄ちゃん全然家にいないよね」
「休みの日は瀬良くんのところに入り浸りだもんねぇ」
もともと平日は部活で帰りが遅いし、休みの日は瀬良さんの家に泊まりに行ってほぼいない。
「……母さんはいいの?」
俺が気付いてるくらいだから、母さんが気付かなわけがない。はぐらかした聞き方をしたけど、察しのいい母さんならきっと、俺が言わんとしていることぐらいわかるだろう。
「んー、瀬良くんが迷惑じゃないならいいんじゃない?」
「そっか」
迷惑どころか、きっと瀬良さんも兄ちゃんのことが好きだ。
やっぱり付き合ってるんだろうな。
「瀬良さん、いらっしゃい!」
進路を考えるようになって、俺はやっぱり兄ちゃんと瀬良さんが通ってる鳳沢学園に目指すことにした。瀬良さんと同じeスポーツ部に入りたい、それがおっきな理由だ。
でも、うちは裕福な家庭なわけではないから、“奨学生枠”を目指して、週に一回、土曜日に瀬良さんに勉強を教えてもらうことになった。
兄ちゃんは不満そうな顔をしたけど、瀬良さんは学年一位、全国でもトップクラスだって聞いたから、適任でしょ。
「基礎は問題ないし、応用がしっかりできるようになれば、全然問題ないと思うよ」
瀬良さんは優しい。ゲームもすっごいうまくて、かっこいい。勉強を教えるのも上手だ。俺の進路に影響与えるくらい、尊敬してるし、憧れの人だ。
だから、俺は二人でいられるこの時間がすごく嬉しい。
「うん、目指すからにはちゃんと“奨学生枠”に入れるようにがんばるよ。でも、入学できても瀬良さんがいないのだけはホントに残念だな~」
瀬良さんとは学年が三つ違うから、俺が入学するときには卒業してしまう。多分、卒業してもこうやって家には遊びに来てくれるだろうけど、兄ちゃんみたいに、学校生活を一緒に送るっていうことをしてみたかった。
「大丈夫だよ、後輩もいい奴らばっかりだから」
瀬良さんは机に頬杖を突きながら、反対の手で俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
瀬良さんはよく、こうやって俺の頭を撫でる。子ども扱いされてるのはちょっと悔しいけど、その優しい眼差しとか、温かい手は、嫌じゃない。
「瀬良さん、俺のこと完全にガキ扱いしてるよね」
「ガキ扱いしてるつもりはないけど、敦也は弟感あるから、つい撫でたくなる」
そう言ってまた俺の頭を優しい顔で撫でる。
“弟”……俺はその言葉に胸に小さな棘が刺さったような痛みを感じた。
「高槻家は俺の癒しだわ。敦也も真矢ちゃんもホントかわいい」
初めのころは小さい子供に慣れていない、って瀬良さんは妹の真矢には余所余所しかった。でも慣れてきたのか、最近はめちゃくちゃに愛でているのが見てとれる。
瀬良さんにとって俺と、真矢は同じ枠の中にいる。
違うのはきっと、兄ちゃんだけ。
「……兄ちゃんは?」
聞いてから、ハッとした。俺はなんて答えてほしいんだろう。
「柊哉もかわいいよ」
そう言った瀬良さんは、やっぱり俺や真矢に向けるものとは全然違う顔をしていた。
その顔に、また俺の胸が痛んだ。
「勉強、はかどってるか?」
短いノックの後、部活から帰ってきた兄ちゃんが部屋に入ってきた。集中して勉強していたら、いつの間にか夕方になっていたみたいだ。
「柊哉、おかえり。部活、お疲れ様」
「はい、火月さんもお疲れ様です。敦也はちゃんと勉強してましたか?」
いつの間にか、兄ちゃんは瀬良さんのことを下の名前で呼ぶようになった。そして、本当に大切なものに向ける目で瀬良さんを見る。
それは瀬良さんも同じで、二人には、二人だけの、他の人には入れない空気がある。
「敦也は優秀だし、俺なんて必要ないくらいだよ」
「えっ必要だよ?!」
俺の言葉に驚いた顔をしたのは兄ちゃんだった。瀬良さんは真矢を愛でている時と同じ顔で、また俺の頭を優しくなでる。
「そう言ってもらえると、嬉しいよ」
でも、俺を撫でていた手は、少しムッとした顔をした兄ちゃんにすぐにはがされてしまった。
弟に妬かないでよ。
何がどう転がっても、俺は“弟”なんだから。
兄ちゃんに向けられる顔が、俺に向けられることはないんだから。
今日の勉強時間を終えて、夕食を一緒に食べると、あっという間に瀬良さんの帰る時間になる。やっぱり兄ちゃんは今日も瀬良さんの家に泊まりに行くらしい。
「いつもごちそうさまです」
「いえいえ、兄弟そろってお世話になってるんだもの。むしろ足りないくらいよ」
母さんの言葉に、瀬良さんは複雑そうに笑った。素直に受け止めていいのか、きっと悩んでしまったんだろう。
でも、大丈夫。うちの家族はみんな、瀬良さんのことが大好きだよ。
「瀬良さん、また来週」
「うん、また来週。お邪魔しました」
家を出て、並んで歩く兄ちゃんと瀬良さんは、どこからどう見ても“恋人同士”だ。
それを見て、俺の胸に刺さる小さな棘がまた増える。
でも、その棘が何なのかは、わからないままでいい。
だって、あの人の隣にいるのは俺じゃない。
未来の俺の隣には、どんな人がいてくれるかな。
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