上 下
14 / 20
1章「運命の幕開け」

13話 コンテニューなしのニューゲーム!

しおりを挟む
「これからのことを話しましょう」

 翌朝、私たちは三人で今後のことを話し合うことになった。
 私が眠っている一週間の内にリオンが一人で色々調べに動いてくれていたらしい。

「まず、結論から。ノエル……いや、私たちは完全に出し抜かれていた」

 テーブルの上にリオンは書類を並べていく。 
 そこにはクランの成立証書やお父様の遺言、さらには領地の権利書などがずらりと並んでいる。

「フィスたちはノエルが死んだ騒ぎに乗じ、遺書を偽造し、役所からクラン・レーヴェの権利を相続する手続きを行っていたのです」
「わたしたちを騙したってこと?」
「ええ。役所の人間も賄賂を掴まされていたようで……かなり計画的な犯行ですね」
「ノエルはどうして事前に防がなかったんだい」

 シスターの声にリオンは無理ですよ、と笑う。

「ノエルの死は突然のこと。まあ、彼らは虎視眈々と計画を練っていたのかもしれませんが……。ノエルは冒険者としての腕はピカイチですが、それ以外はからっきしですからね。いかんせん人を信じすぎる」
「じゃあ……わたしたちは本当にレーヴェから追い出されたって……こと? フィスたちが、お父様が作ったクランを乗っ取った、ってこと?」
「残念ながら……そうなります」

 言葉を失った。
 前世のわたしもクランを乗っ取られたことはある。だが、それはあくまでもゲーム内での話。

「一文無し……」

 だが、これは現実。お父様たちがコツコツと貯めた貯金、装備を彼らが根こそぎ奪ったんだ。
 やるせなくて拳を握る。こんな想いをまたもう一度することになるなんて。

「……すまない、リラ。私の責任だ。もっとちゃんと彼らの動向に目を配るべきだった」
「フィスはずっと従順なフリをしてたんだよ。お父様に危機が迫るのをじっと待ってた。だから……リオンのせいじゃない」

 涙を堪えながらリオンを見上げると、彼は悲しそうに笑いながらありがとうと頭を撫でてくれた。

「しかし、二人ともこれからどうするつもりだい? クランを追われてしまったということは、帰る場所もないんだろう。暫くここに――」
「街にある私宅に行こうと思います」

 笑顔のリオンにわたしとシスターは固まる。

「え……リオンのお家?」
「ええ。実は、私はレーヴェのメンバーではないんですよ」
「で、でも……今までずっと一緒に暮してたよね……?」

 衝撃の事実に私は開いた口が塞がらない。

「クランの創設メンバーというだけで、リラが生まれて少ししてから脱退し、裏方に回っています」
「じゃあ……なんで?」
「ノエルは私の親友です。そして、親友の大切な一人娘の成長を私も傍で見ていたかった」
「リオン……」
「それに、ノエルから貴女を託されましたからね」
 
 リオンの笑顔がどことなく怪しい。
 すると彼はどん、と大きな袋をテーブルの上に置いた。その衝撃でずしんと軋むくらいの重さ。

「なにこれ……お金?」
「はい。個人で色々仕事をしてコツコツ貯めていた貯金です」

 中には信じられない位のお金が入っていた。
 これにはシスターも目を見開いている。

「リラ、貴女一人育てていく分にはなんの問題もありません。共に街に行きましょう」
「うん!」
「まあ……リオンと一緒にいるのが一番安全だろう。達者でな、リラ。健やかに育つんだよ」
 
 シスターは優しく抱きしめてくれた。
 温かい。お花の優しい匂いがした。

「それじゃあ行きましょうかリラ」
「うん。これからよろしくね、リオン」

 二人で馬車に乗り込み街を目指す。
 ここから先は未知の世界。わたしのコンテニューなしのニューゲームがはじまっていくんだ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

テイムしたトカゲに魔石を与え続けるとドラゴンになりました。

暁 とと
ファンタジー
テイムしたトカゲはドラゴンになる

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

処理中です...