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2章「冒険者になろう!」
14話 新生活・開幕
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ここはオーカの首都ディルフィン。
レーヴェ領からは馬車に揺られて一時間ほどの場所に位置している。自然溢れるレーヴェとは違い、ここは人工物に溢れている。
前世の『私』の記憶にある近代的な街とは違い、道路は石畳。周囲の建物も石造りや木造など歴史感ある街並みだ。
通りには市場があり、店先にはカラフルな野菜や果物、パンや、美味しそうな食べ物が並んでいる。
「すごい……!」
「リラはあまり街には来たことなかったよね。落ち着いたら遊びにきてみよう」
馬車の窓に張り付いて外を眺めるわたしをリオンは楽しそうに見つめていた。
中心部から離れて程なく、馬車は一軒の家の前でぴたりと止った。
「さあ、着いたよ」
「ここがリオンのお家」
三階建ての細長いシックな一軒家。
周りの建物も同じような造りをしているからここはきっと住宅街なんだろう。
「馬車に揺られて疲れただろう。お茶のでも飲んで一休みしようか――」
扉を開けたリオン。その瞬間、室内から埃臭さがぶわりと漂ってくる。
「すごい……家だね」
玄関から真っ直ぐ伸びる廊下。
至る所に蜘蛛の巣が張り巡らされ、ネズミが走り回っている。
「まあ、数年帰ってなかったからこうなるよね……」
「お茶の前に、掃除だね」
リオンの家での新生活。
その幕開けは掃除からだった。
*
「いやあ……お疲れ様」
「人が住まない家ってこうなるんだね」
私たちはぐったりと椅子にもたれかかる。
昼間に帰ってきたはずなのに、すっかり夜になっていた。
私たちは一先ず最低限の生活が送れるようにと埃だらけの家中を掃除した。
幸いリオンは最低限の家具しか置いていなかったため、時間はかかったけれど掃除は容易だった。
ようやく私たちはお茶を飲みながらほっと一息ついているところだ。
「調理器具とか家具とか色々買いに行かなきゃだね」
「それはまあ明日から少しずつ買いそろえて行けばいいさ。それよりも、まずは今後の話をしよう」
椅子にもたれかかっていたリオンは体を起こす。
真面目な顔をしたりオンが話し出す前に、私はテーブルに両手をついてリオンを見る。
「わたし、クランを取り戻したい! レーヴェはお父様が作った大切な場所だもの。あんな奴らにやられっぱなしは嫌!」
「それは私もどうにかしなければと考えていた。だが、レーヴェは既に私や君の手を離れてしまった。今回のことは完全にフィスにしてやられた。私も年を取ったものだよ」
リオンの表情は真剣だ。冷たい瞳。どことなく殺気が篭もっているのを感じる。
「リオン、怒ってる……?」
「君だって怒っているだろう。私たちの大切な家を奪われたんだ。タダやられっぱなしというのも癪に障るだろう」
「よかった……リオンもわたしと同じ気持ちだったのね!」
リオンは親友と築き上げてきた場所を、そしてわたしは生まれ育った場所を追放された。
裏切ったフィスに対する怒りは同じ。
それならきっとリオンはわたしがこれからする提案にも賛同してくれるはずだ。
「だからこそ、これからは慎重に動いていかないといけない。フィスがなにを仕掛けてくるか――」
「あのね、リオン。わたし、考えたの!」
リオンの言葉を遮って、私はテーブルを叩いて立ち上がる。
「わたし、冒険者になりたいの!」
レーヴェ領からは馬車に揺られて一時間ほどの場所に位置している。自然溢れるレーヴェとは違い、ここは人工物に溢れている。
前世の『私』の記憶にある近代的な街とは違い、道路は石畳。周囲の建物も石造りや木造など歴史感ある街並みだ。
通りには市場があり、店先にはカラフルな野菜や果物、パンや、美味しそうな食べ物が並んでいる。
「すごい……!」
「リラはあまり街には来たことなかったよね。落ち着いたら遊びにきてみよう」
馬車の窓に張り付いて外を眺めるわたしをリオンは楽しそうに見つめていた。
中心部から離れて程なく、馬車は一軒の家の前でぴたりと止った。
「さあ、着いたよ」
「ここがリオンのお家」
三階建ての細長いシックな一軒家。
周りの建物も同じような造りをしているからここはきっと住宅街なんだろう。
「馬車に揺られて疲れただろう。お茶のでも飲んで一休みしようか――」
扉を開けたリオン。その瞬間、室内から埃臭さがぶわりと漂ってくる。
「すごい……家だね」
玄関から真っ直ぐ伸びる廊下。
至る所に蜘蛛の巣が張り巡らされ、ネズミが走り回っている。
「まあ、数年帰ってなかったからこうなるよね……」
「お茶の前に、掃除だね」
リオンの家での新生活。
その幕開けは掃除からだった。
*
「いやあ……お疲れ様」
「人が住まない家ってこうなるんだね」
私たちはぐったりと椅子にもたれかかる。
昼間に帰ってきたはずなのに、すっかり夜になっていた。
私たちは一先ず最低限の生活が送れるようにと埃だらけの家中を掃除した。
幸いリオンは最低限の家具しか置いていなかったため、時間はかかったけれど掃除は容易だった。
ようやく私たちはお茶を飲みながらほっと一息ついているところだ。
「調理器具とか家具とか色々買いに行かなきゃだね」
「それはまあ明日から少しずつ買いそろえて行けばいいさ。それよりも、まずは今後の話をしよう」
椅子にもたれかかっていたリオンは体を起こす。
真面目な顔をしたりオンが話し出す前に、私はテーブルに両手をついてリオンを見る。
「わたし、クランを取り戻したい! レーヴェはお父様が作った大切な場所だもの。あんな奴らにやられっぱなしは嫌!」
「それは私もどうにかしなければと考えていた。だが、レーヴェは既に私や君の手を離れてしまった。今回のことは完全にフィスにしてやられた。私も年を取ったものだよ」
リオンの表情は真剣だ。冷たい瞳。どことなく殺気が篭もっているのを感じる。
「リオン、怒ってる……?」
「君だって怒っているだろう。私たちの大切な家を奪われたんだ。タダやられっぱなしというのも癪に障るだろう」
「よかった……リオンもわたしと同じ気持ちだったのね!」
リオンは親友と築き上げてきた場所を、そしてわたしは生まれ育った場所を追放された。
裏切ったフィスに対する怒りは同じ。
それならきっとリオンはわたしがこれからする提案にも賛同してくれるはずだ。
「だからこそ、これからは慎重に動いていかないといけない。フィスがなにを仕掛けてくるか――」
「あのね、リオン。わたし、考えたの!」
リオンの言葉を遮って、私はテーブルを叩いて立ち上がる。
「わたし、冒険者になりたいの!」
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