勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【239話】リリアはコンコン

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リリアは遅刻して査問会に登場した。
半ば押し込まれるように公聴室に入る。
大きな部屋、ひな壇席になっていて正面の高い位置に、帽子が高く髭の長い偉そうな老人が並び、その下にも中くらいに偉そうなのが並んでいる。
そして、円を描くように賢そうな連中が席に座り、リリアの背後にグルっと公聴席がある。
真正面の特別一番高いところに王様が座っている。
リリアはそんな間取りの中央に引っ張り出された。

ど遅刻したリリアは怒られるかと思っていたが、既になにやら議論が始まっていた。
が、「……………」
リリアが登場して場が静まり返った。
リリアはドキドキしながら頻りに丈のやたらと短いメイド服のスカートを直している。お尻が丸見えになっていそうで気になる。恥ずかし…
「… あぁー… オホン… これこれ、勝手に入って来てはいかん、今日は査問会があると伝えてあったはずじゃが… 今日は掃除はよい」偉そうなやつが言う。
突然、メイド服でホウキを手に胸と尻をプリプリさせて登場した女性に全員目が釘付け。
「えぇ… 皆さんごきげよう… あたしが勇者リリアです。えー… 帰って良いなら帰ります。 えぇ…勇者リリアでした」
リリアはちゃっかり帰ろうとしている。すぐにつまみ出そうとする兵士と事情を知って連れて来た者の間で混乱が始まった。
リリアは愛想笑いをしながら、頻りにスカートを直している。


ようやく事情が判明し、査問が開始されようとしている。
男性は円形席のど真ん中で、何故か胸と尻をプリプリさせたメイド服の女勇者に目線を奪われている。
その視線の先ではリリアがモジモジしながら胸元を直し、胸元を直すと服がまくりあがるので、スカートをオズオズと直す、そんな動作を繰り返している。

「それではこれより勇者リリアの… 容疑につき… 真実の神ジャスティミネロスとルーダリア国王の御前で… 嘘偽りなく… 誓約書に…」偉そうなのがリリアの目の前に紙を掲げて言う。
どうやら、リリアが偽証しないように魔法の誓約書に誓わされるようだ。

「… ウム… フム…」
偉そうなのは、長い口上をスラスラと言い終えると頻りにリリアを上から下まで舐めるように見て、誓約書を読み返している。
“……”リリアは黙って立っている。
「… ウム…」
偉そうなのはちょっと頷くと誓約書に何やらペンを走らせてからリリアに差し出した。

“…嘘偽りを述べ、査問会に対し不遜な発言をしたる時は… 舌は腐り落ち、目は炎で焼かれ…”の部分が丁寧に横棒二線で訂正され
“…嘘偽りを述べ、査問会に対し不遜な発言をしたる時は… 狐ミミ亜人のごとく耳と尻尾が生える…”となっている。

“なんじゃ… これ…”
リリアが思っていると、
「… 痛ッ!!」
素早く掌をナイフでカットされ、誓約書に血判をおされて、フルネームでサインをさせられ、首輪をつけられた。

「これで、そなたは神と国王の御前の査問会にて、誠の言葉を発する誓いを立てた。もしそなたが偽りの言葉を発した時には… 狐ミミと尻尾が生えるであろう…」偉そうなのが厳かに言う。

「これからいくつか質問をする。おまえは必ず“はい”と答えるのだ」偉そうに言う。
「… はい」リリア。
「おまえはこの国の公認勇者、勇者リリアであるか」
「はい」
「おまえはガウムドを父に、メルディアを母に持つウッソ村出身の勇者の血を引く娘で間違いないか」
「はい」
「おまえは、ゴブリン種族か」
「…いいえ」
「全部“はい”で答えるのじゃ。おまえの種族はゴブリンか」
「… はい」
リリアが“はい”と答えた途端、リリアの頭から狐の耳とお尻からは大きくフサフサな琥珀の尻尾が生えて来た。

「おぉぉ……」
周囲からなんとも言えない、ため息が漏れる。
正直、狐リリア可愛い。
「いやぁ!何これぇ!恥ずかしいコン!戻すコン!」
コン語をしゃべり、三角の小さな耳をピンと立て、大きな尻尾をフリフリしながら頻りにスカートを直している。
尻から尻尾がスカートをまくり上げ、下着を押し下げて生えて来たのだ。
メッチャ恥ずかしがってしゃがみこんでいる。
スゲェ仕草が可愛い!
「おまえは人間か」偉そうに問う。
「ちょ、ちょっと!早くなおすコン!こんなのセクハラこん!やめるコン!」
「安心せい。嘘偽りなく話せば元の姿に戻る。おまえは人間か」
「コン!コン!」
リリアが答えると、スルスルっと耳と尻尾は引っ込んだ。
「ちょっと!なんなのよこれ!ふざけてるでしょ!個人的な趣味コン!勇者をバカにしているコン!」
「老院を侮辱すると誓約が発動されますぞ、言葉には気を付けることじゃ」
「コン!コン!」
誓約書にサインをさせられたリリアは適切な発言をすると狐亜人になるよう誓わされてしまった。
尻尾をフリフリし、スカートと下着を直しながらコン語で頻りに腹を立てている。
大きな尻尾がスカートから飛び出す度に「おぉぉ…」と何とも感情を計り知れない感嘆の声があがる。

嘘ついたとたん、目が焼かれたり、舌が腐ったり、子豚にされるのも嫌だが、公聴席のど真ん中で、ピッチピチメイド服で尻尾と尻をだす、強制露出プレーはその上を行くレベルのペナルティだ。


「何よこれ!お城って酷くない?まだ何も査問していないのに、公開処刑しながら査問なのよ、あり得ないよね」リリアはブツブツ言っている。
「これは完全に、エロジジイ達の趣味だろ。変態ジジイ」ダカットは憤慨しているようだ。

こうして、勇者リリアの査問会は大幅に遅れて、大幅に脱線しがちに始まった。
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