勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【233.5話】 勇者は門前でもめている

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リリアはルーダ・コートの街に戻ってきている。
ミミック捕獲計画は無事に成功し、今はミミック保管計画になっている。


ミミックにリリアが食べられかけた五日目の夜からのリリア達の足取り

六日目
三匹捕まえたミミックの内、一匹が小さいのと、前日リリアを救出する際にガスコインがミミックを傷つけたので可能ならミミック探しを続けたいがリリアの体調が悪く、そのままルーダ・コートの街に向けて出発。
「そうだね、ミミックが小さいのと傷ついて弱っているけど… まぁいいよ。ミミックはミミック。腐ってもミミック。それよりパウロ・コートに寄って帰ろう」とリリアは言っていた。
どちらかと言うと、ミミックよりもどうやらパウロ・コートで久々オフェリアに会いたかったようだ。
午前、ガスコイン達が魔物を倒して馬車に戻るとリリアとコロットが大ゲンカ。リリアが辛勝。
「リリアはこう見えても勇者よ!素人に負けるかっての!ワンパンでお終いよ!ワンパンウーマンよ!」っと鼻息を荒くしていた。
「ギリギリ感があったが… まぁいいか」ガスコイン。
夕方早めにパウロ・コートの街で一泊。オフェリアと再会。

七日目 ミミック捕獲計画期限の日
「あたしちょっと体調が… あの… まだミミックに食べられた後遺症が…」
昨日、コロットとの喧嘩から明らかに元気だったリリア。
お酒の飲み過ぎの言い訳にミミックを使っているのは明らか!
オフェリアとシルバーソードのメンバーに見送られながらパウロ・コートを出発。
午前中は「ミミックが… 貧血で…」を連発しながら護衛席で居眠りして過ごす。
馬車を急がせて夕刻ギリギリにルーダ・コートの街に帰還。

入門しようとして衛兵ともめる。
「ミミックは街中に持ち込み禁止? え?だってルーダ・コートの街だって年末ジャンボミミックを開催してるよね?街が良くて国民がやっちゃだめって変だよね?… 書類が必用?あぁ…フユネコさんが言ってたね…えっと、書類があったはず… はい、これが書類。それじゃご苦労さ… えぇ?まだなにかあるの?… これは委任状とサービス業の一環としてミミックを持ち込むことへの許可書?持ち込む側の書類が必用?… あのね、あたし勇者だよ。ルーダリア王国の公認勇者、勇者リリア。これが冒険者証… だからなんだって?勇者が保障するから大丈夫って話よ。そんなの関係ねぇ?おっぱっぴー? あのね、冒険者だって仲間にした魔物を連れて街に入っている人いるでしょ。あれが可能ならリリアだって連れ込んで可能でしょ。 えぇ?仲間を連れて歩くのと魔物を連れ込むのは違う?何も違わないじゃない!… おまえは仲間をロープで縛り上げるのかって?… そ、そうよ、ミミックは大切な仲間だけど… こいつら全員変態ドMなの!縛られて萌えるタイプ、痴態を晒すドMミミック!リリアちゃんは調教女王様よ!勇者の調教女王とM奴隷ミミックよ! 何でダメなのよ!おかしいでしょ!冒険者が連れていけて勇者がダメなの?冒険者の中でも優れた者が勇者よ!これは差別だ!職権乱用だ!自称勇者じゃだめ?おかしいよ…だって… ほら!あそこ、魔物仲間を連れて入ってるじゃない、オグレオが連れて行った、書類の確認もしてない! え?オグレオは毎日ここを通る?魔物使いの身分証明と魔物調教師の免許を持っているのを知っている? ちょっと!リリアだってここ通ってるよ!顔は知っているけど免許は見たことない?だから冒険者証を見せたよね!ルーダリア王国の紋章が入ったハンカチもあるわよ!何の証明にもなっていない?ふざけないでよ!魔物使いが証明されて何で勇者が証明できないのよ!」
門で大論争に発展している。
知り合いの冒険者が“あいつまた何かやらかしたか?”的な目で通っていく。

「勇者をバカにしてるでしょ!サンキャット!これはあなた達が頼んだ仕事でしょ!何とかしな… あれ?」
リリアが振り返ったら皆どこかに居なくなっている…
当たり前だ、この街で一番人通りする場所でリリアが揉めているのだ、しかも理屈のこね方がメチャクチャ…
皆他人のふりしてどこかに隠れてしまった。


サンキャット達が父親に連絡し、書類を揃えて門まで戻った時、リリアは衛兵に三人がかりで取り押さえられていた。
とにかくフユネコが揃えられた書類とどうにもならなかった書類の分として袖の下を渡してリリアは解放され、ミミックも街に入れた。

「おまえ書類の事知らなかったのかよ…」ガスコインが呆れている。
「だって皆連れて歩いてるじゃないの… おかしいよこんなの」リリアはだいぶ不満そうだ。
「顔の知られた連中の話しだろ。よそ者はちゃんと調べられて書類を提出して通っているぜ、おまえも見た事あるだろ」ガスコイン。
「見たことはあったけど…結構書類って身分証明から色々あるじゃない。リリアは勇者なんだけどなぁ…」リリアはぶつくさ言っている。

と、まぁ、リリアのもめ事が長くなったが、何とかフユネコから頼まれたミミック三匹を捕獲して持ち帰りクエストは終了。


「やぁ、リリアちゃん、お帰り。ミミック三匹獲ってきてくれたみたいだね。息子から聞いたよ、大変だったそうだね?うっかりミミックに食べられかけて皆に救助されたんだって?」フユネコがリリアを労う。
「大変っちゃぁ大変だったけど、余裕だよ。ミミックにちょっと噛まれたけどその他は四六時中、素人集団を護衛しながらいなり忙しかったよ」
噛まれたところだけ強調されたせいかリリアは結構むきになっているようだ。
「思ったより小さいけど、初めはこんな物かな?もうちょっと見栄えが良かったらなぁ… 何か傷もけっこうあるし…しかし、リリアちゃんの命には代えられんな。皆に救助してもらえてよかったな」
檻に入ったミミックを見てお腹をさすりながらニコニコとフユネコが言う。
悪気はないのだろうが…
「だからね、ちょっと噛まれた事もあったけど、リリアは素人集団を朝から護衛して、現地では一番に暗い遺跡に入ってね、大活躍だったよ」リリアの口元は笑っているが結構目に力が入っているのが見て取れる。
「わかったわかった、準備が忙しいから、これはミミックは倉庫に運び込んで世話をしておいてくれよ」フユネコ。
「え?…世話?」リリアが聞き返す。
「ん?… 説明してなかったかな?… 契約書に書いてあるよ… えぇっと…ほらここ。商店街のミニミミック祭りは明後日だからそれまで保管しないと。俺達には無理だよ」フユネコは事も無げに言う。
「あたし、魔物使いじゃないんだけど… やったことないし…」リリアが言う。
「リリアちゃんは勇者だろ?出来るだろ、っというか契約だしやってもらわないと… 誰がやると思ったの?」フユネコが不思議がる。
「…わかった… なんとか…やってみるよ」
リリアは呟くようにしてガスコインを見る。
「俺は倉庫まで運んだら帰るから… がんばれよ!」
ガスコインはきっぱり即答。

「じゃ、リリアちゃんよろしくね」フユネコはニコニコとカウンターに戻って行った。
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