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【227話】 狂騎士の斧作戦終了
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歴702年も年末になっている。
ルーダリア地方は温かい地方だが日陰でしばらく静かにしていると少し肌寒く感じる季節。
リリアはビケットの仕事をから戻ってきてノンビリ仕事モード。
ビケットの仕事の最終日、リリアは特に活躍しなかった。
ビケットが渡した情報を元に保安部の兵士達が盗賊団のアジト数か所を一斉強襲に踏み切ったが、それなりの人数と規模で行われたため事前に動きを察知されたらしく思ったより賊メンバーを捉えられなかった。
賊側の逮捕者は死傷者と合わせて十名前後だったが、捜索願いが出されていた者を数名保護、わずかだが盗難品を押えたられたようだった。
ビケット達のメンバーも十名以上でガサ入れから山中を逃れようとする賊を数名捕縛、あるいは討ち取った。
ちなみにこんな場合放置された荷物や貴重品は兵士に見つからなければ取り放題。
公には保安部にレポートしなければならないのだが、クエストの獲得アイテムということでグレーゾーン。こんなうま味でもなければ冒険者達はボランティアしない。
高価な物が手に入る事は少ないが掘り出し物がみつかる場合もある。
ビケットのメンバーも通信のイヤリングで連絡が取られ討ち取ったり捕らえた賊はただちにブリザとビケットが馬車で駆けつけてきて確認をしていた。
この日、イヤリングからは各冒険者グループや保安部の通信がオープンに行われて賑やかだった。
「リリア、今朝の場所にいてもどうせ人っ子一人通らないでしょ、馬車の護衛をしなさい」
ブリザに呼ばれてリリア達も街道を馬車へ移動した。
「リリア、残党狩りに参加しないのか?賞金首と捜索願が出されている人以外の戦利は持って行き放題なんだ、参加してきたら良いじゃないか」ビケットが言う。
「ボーナスも出るみたいだし、別にいいよ。接近戦好きじゃないんだよね。それに向かってくる相手なら戦えるけど、逃げ回る人を追い回すのは… もう今回はいいよ…」リリアは馬車上のビケットとブリザを見ながら答える。
「だと思ったわ、それならフラフラしていて良いから逮捕者が出た時だけ周囲の警戒をしなさいよ。奪還に来られることがあるようならそいつらを叩くのよ」ブリザが言う。
「じゃ、そうしてるよ。ところで今日は収穫あったの?」
リリアが聞きながら馬車の荷台を覗くと手足を拘束された男が一人転がっている。
「今日は期待出来ないだろう。皆にとってもボーナスタイムだと思ってもらった方が良い」ビケットが答える。
「そいつは1Gにもならないけど生きたまま捕まえたから、盗難品の売り先や人身売買先を吐かせる予定。大した知識も無い小者だろうけど」ブリザがぶっきら棒に言う。
「…… 拷問するの?…」リリア。
下着姿で拘束されている情けない恰好のせいか、どうみても重要な情報を持っているようには見えない男だが…
「するわ、誰かにさせるわ。どんな小さな事でも次の仕事につなげる貴重な情報になりえるわ。私達は山中に残るガラクタよりこっちの方が価値あるのよ。何も出てこないなら適当に始末… 協力してくれたら保安部に渡して延命だけはさせてあげるけど」ブリザは淡々としている。
「… そうなんだね… で、こいつを奪還に来る連中を見張れば良いんだね」リリア。
「こんなイモを取り返しにくる奴がいると思ってるの?こんな雑魚見捨てて逃げた方がよっぽど自分のためよ、私が言うのはこれから捕まえる奴の中にそれなりの玉がいるかも知れないって話し」ブリザ。
「まぁ、そうか… わかったよ」
リリアは荷台の幌を閉めるとダーゴとその辺の見張りに立った。
リリアは通信のイヤリングを聞きながら馬車の護衛をしていた。
ダーゴと一緒に時にはその辺をブラブラ、時にはその辺に腰かけ、あるいは馬車に乗っておしゃべりして時間が過ぎていく。
通信のイヤリングは賑やかだ。
保安部が派手に動いているので大物取りに加わっている者は独自の暗号を使うもののほぼオープンに通信している。
リリアも聞きながら状況を想像して適当に楽しんでいる。
「今、アジトまで保安部の一小隊が踏み込んだわね。逮捕者無し、残留品も特に無し」ブリザが時々解説してくれる。
「今の会話でそんな事言ってたの?」リリアが聞き返す。
「軍も保安部の暗号もだいたい理解してるわよ」ブリザは言う。
リリアはふーんと頷く。
作戦最終日はこんな様子で時間が過ぎて行ったが結局大物取りは無しだった。
山狩りに参加していたメンバーは放置されたアイテムを戦利してそこそこ得をした者もいたようだ。
しかし持ち運べて価値のある物は持ち去られるに決まっている。あくまでちょっとしたボーナス上乗せ。
リリアも一日中馬車周辺で大物取り中と聞いていそいそと通行する商人が行き来するのをのん気に眺めて過ごしていた。
その夜、ビケットが集めた作戦メンバーは全員解散、お給料は政府機関から報奨金が支払われ次第リリア達に分配される。
「最近絶好調よ、うっしっし」リリアは結構儲けをだしている。
「金銀の弓を貰ったり… すごいな… もう引退してウッソ村で暮らそうぜ」ダカット。
「あのね、リリアは勇者をもう少しやるの、決心したの。父さんのご自慢の娘になるの。それに暮らそうぜってダカットは故郷に帰るんでしょ?」リリア。
「故郷に戻るのは、そのうちでいいよ。俺はもう少し… あっちこっち見てみたいよ」ダカットはゴニョゴニョと言う。
リリアがルーダ・コートの街戻ると街中はすっかり年末雰囲気。
リリアは年明けまでノンビリ気ままにお仕事をする予定。
「リリア達の仕事依頼、ルーダ港からの街道での盗難、強奪被害は随分と減ったようですね、ビケットの作戦が良かったのでしょうね」コトロがリリアに言う。
「そうだよ、リリアちゃんもすっごいがんばったんだよね。勇者の実力を見せつけてやったわよ!勇者リリア大活躍の巻きだったよ」リリアがバーで誇っている。
「リリたん何やったニャン?」
「一週間以上お風呂に入らずメッチャ見張ってたよ」リリア。
「なんか、活躍って言わないニャン」
「一週間お風呂なしよ!水もろくに飲めない、食事も制限、外で寝泊まりだよ!かなりがんばったんだよ!ニャン子は失礼だ」
「ネーコはたぶんリリたんがボスを倒したりするのを想像してたピョン」
「手伝いをしたんだよ。じっと藪に潜んで情報をゲットして見張ってたんだって、思ったより大変な仕事なんだよ」リリアが口を尖らせている。
「一大勢力の窃盗団を根絶やしにする大事な仕事をチームプレイヤーとしてこなしたって事ですね。派手な役ではないがリリアの仕事が無ければ賊も退治はできないパートを引き受けていたって事ですね」コトロが補足する。
「そうそう、勇者だからって先頭で戦闘するとは限らないのよ、さすがコトロ」リリアはちょっとドヤ顔している。
「… まぁ、一般的には勇者は先頭の立ち位置なのですが…」
コトロは独りを言いながら夜の仕込み中。
ルーダリア地方は温かい地方だが日陰でしばらく静かにしていると少し肌寒く感じる季節。
リリアはビケットの仕事をから戻ってきてノンビリ仕事モード。
ビケットの仕事の最終日、リリアは特に活躍しなかった。
ビケットが渡した情報を元に保安部の兵士達が盗賊団のアジト数か所を一斉強襲に踏み切ったが、それなりの人数と規模で行われたため事前に動きを察知されたらしく思ったより賊メンバーを捉えられなかった。
賊側の逮捕者は死傷者と合わせて十名前後だったが、捜索願いが出されていた者を数名保護、わずかだが盗難品を押えたられたようだった。
ビケット達のメンバーも十名以上でガサ入れから山中を逃れようとする賊を数名捕縛、あるいは討ち取った。
ちなみにこんな場合放置された荷物や貴重品は兵士に見つからなければ取り放題。
公には保安部にレポートしなければならないのだが、クエストの獲得アイテムということでグレーゾーン。こんなうま味でもなければ冒険者達はボランティアしない。
高価な物が手に入る事は少ないが掘り出し物がみつかる場合もある。
ビケットのメンバーも通信のイヤリングで連絡が取られ討ち取ったり捕らえた賊はただちにブリザとビケットが馬車で駆けつけてきて確認をしていた。
この日、イヤリングからは各冒険者グループや保安部の通信がオープンに行われて賑やかだった。
「リリア、今朝の場所にいてもどうせ人っ子一人通らないでしょ、馬車の護衛をしなさい」
ブリザに呼ばれてリリア達も街道を馬車へ移動した。
「リリア、残党狩りに参加しないのか?賞金首と捜索願が出されている人以外の戦利は持って行き放題なんだ、参加してきたら良いじゃないか」ビケットが言う。
「ボーナスも出るみたいだし、別にいいよ。接近戦好きじゃないんだよね。それに向かってくる相手なら戦えるけど、逃げ回る人を追い回すのは… もう今回はいいよ…」リリアは馬車上のビケットとブリザを見ながら答える。
「だと思ったわ、それならフラフラしていて良いから逮捕者が出た時だけ周囲の警戒をしなさいよ。奪還に来られることがあるようならそいつらを叩くのよ」ブリザが言う。
「じゃ、そうしてるよ。ところで今日は収穫あったの?」
リリアが聞きながら馬車の荷台を覗くと手足を拘束された男が一人転がっている。
「今日は期待出来ないだろう。皆にとってもボーナスタイムだと思ってもらった方が良い」ビケットが答える。
「そいつは1Gにもならないけど生きたまま捕まえたから、盗難品の売り先や人身売買先を吐かせる予定。大した知識も無い小者だろうけど」ブリザがぶっきら棒に言う。
「…… 拷問するの?…」リリア。
下着姿で拘束されている情けない恰好のせいか、どうみても重要な情報を持っているようには見えない男だが…
「するわ、誰かにさせるわ。どんな小さな事でも次の仕事につなげる貴重な情報になりえるわ。私達は山中に残るガラクタよりこっちの方が価値あるのよ。何も出てこないなら適当に始末… 協力してくれたら保安部に渡して延命だけはさせてあげるけど」ブリザは淡々としている。
「… そうなんだね… で、こいつを奪還に来る連中を見張れば良いんだね」リリア。
「こんなイモを取り返しにくる奴がいると思ってるの?こんな雑魚見捨てて逃げた方がよっぽど自分のためよ、私が言うのはこれから捕まえる奴の中にそれなりの玉がいるかも知れないって話し」ブリザ。
「まぁ、そうか… わかったよ」
リリアは荷台の幌を閉めるとダーゴとその辺の見張りに立った。
リリアは通信のイヤリングを聞きながら馬車の護衛をしていた。
ダーゴと一緒に時にはその辺をブラブラ、時にはその辺に腰かけ、あるいは馬車に乗っておしゃべりして時間が過ぎていく。
通信のイヤリングは賑やかだ。
保安部が派手に動いているので大物取りに加わっている者は独自の暗号を使うもののほぼオープンに通信している。
リリアも聞きながら状況を想像して適当に楽しんでいる。
「今、アジトまで保安部の一小隊が踏み込んだわね。逮捕者無し、残留品も特に無し」ブリザが時々解説してくれる。
「今の会話でそんな事言ってたの?」リリアが聞き返す。
「軍も保安部の暗号もだいたい理解してるわよ」ブリザは言う。
リリアはふーんと頷く。
作戦最終日はこんな様子で時間が過ぎて行ったが結局大物取りは無しだった。
山狩りに参加していたメンバーは放置されたアイテムを戦利してそこそこ得をした者もいたようだ。
しかし持ち運べて価値のある物は持ち去られるに決まっている。あくまでちょっとしたボーナス上乗せ。
リリアも一日中馬車周辺で大物取り中と聞いていそいそと通行する商人が行き来するのをのん気に眺めて過ごしていた。
その夜、ビケットが集めた作戦メンバーは全員解散、お給料は政府機関から報奨金が支払われ次第リリア達に分配される。
「最近絶好調よ、うっしっし」リリアは結構儲けをだしている。
「金銀の弓を貰ったり… すごいな… もう引退してウッソ村で暮らそうぜ」ダカット。
「あのね、リリアは勇者をもう少しやるの、決心したの。父さんのご自慢の娘になるの。それに暮らそうぜってダカットは故郷に帰るんでしょ?」リリア。
「故郷に戻るのは、そのうちでいいよ。俺はもう少し… あっちこっち見てみたいよ」ダカットはゴニョゴニョと言う。
リリアがルーダ・コートの街戻ると街中はすっかり年末雰囲気。
リリアは年明けまでノンビリ気ままにお仕事をする予定。
「リリア達の仕事依頼、ルーダ港からの街道での盗難、強奪被害は随分と減ったようですね、ビケットの作戦が良かったのでしょうね」コトロがリリアに言う。
「そうだよ、リリアちゃんもすっごいがんばったんだよね。勇者の実力を見せつけてやったわよ!勇者リリア大活躍の巻きだったよ」リリアがバーで誇っている。
「リリたん何やったニャン?」
「一週間以上お風呂に入らずメッチャ見張ってたよ」リリア。
「なんか、活躍って言わないニャン」
「一週間お風呂なしよ!水もろくに飲めない、食事も制限、外で寝泊まりだよ!かなりがんばったんだよ!ニャン子は失礼だ」
「ネーコはたぶんリリたんがボスを倒したりするのを想像してたピョン」
「手伝いをしたんだよ。じっと藪に潜んで情報をゲットして見張ってたんだって、思ったより大変な仕事なんだよ」リリアが口を尖らせている。
「一大勢力の窃盗団を根絶やしにする大事な仕事をチームプレイヤーとしてこなしたって事ですね。派手な役ではないがリリアの仕事が無ければ賊も退治はできないパートを引き受けていたって事ですね」コトロが補足する。
「そうそう、勇者だからって先頭で戦闘するとは限らないのよ、さすがコトロ」リリアはちょっとドヤ顔している。
「… まぁ、一般的には勇者は先頭の立ち位置なのですが…」
コトロは独りを言いながら夜の仕込み中。
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