勇者の血を継ぐ者

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【216話】 狂騎士の斧作戦五日目

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狂騎士の斧作戦五日目
リリアはルーダ港からルーダ・コートの街に向かう街道と東に向かう支道の分かれ道近くの高台にカモフラージュテントを作ってゴブリンのダーゴと道を監視している。

リリアの行動は以下
・一日目 リリアとブリザで村から往復の道と周辺の地形等を確認
・二日目 前日と反対方面の道筋等をリリアとブリザで確認
・三日目 リリア達にゴブリンのダーゴが合流
     ブリザはウェセフ村周辺の確認
     リリアは一日目より先の道と周囲の確認
・四日目 作成された賊マップの情報を元に山の中に入って地形と状況を確認
・今日  街道と支道近くの見張りと状況確認

ダーゴはビケットに雇われて三日目にリリア達と村で合流。
表向きは原材料採取の助手。役割はリリアの助手。ブリザは三日目からリリアと別に行動している。普段は情報収集と分析担当だがさすがにリリア一人でカバーするのは範囲的に無理があったと思う様で積極的に外に出ている。
単独行動は良くないがこの辺の魔物ならブリザ一人でも無理しなければ問題ないだろう。
「山や森の中では待ち伏せ系と神経を侵す系植物魔物が多いからそれは気を付けてね。それから必要無ければ逃げてね」リリアがブリザに言う。
リリアに言わせれば下手に倒して死骸が見られれば人がウロウロしていることがバレるそうだ。
事実リリアも作戦開始からほぼ戦闘にならないように魔物がいたら逃げて回避している。弓も基本的に厳禁。矢を射ることがあれば注意深く拾いに行っている。また、ロストするような距離では射なようにしている。
「ゴブリンでもいいからって言ったら本当にゴブリンの助手が来たのね」
リリアはダーゴと合流して呟く。
ビケットにしては人件費をケチったのかと思えば、知り合いの紹介で人間社会に長い優秀なゴブリンを紹介してもらったとかで、確かに要領の読み込みが良い。
「まぁ、身軽で緑に溶け込んでステルスには申し分ないわね」リリアが独り言を言う。
「お?リリア、ナニかいったのか?」荷物を担いでダーゴが聞き返す。
なかなかナチュラルだがはやり若干訛りが残る発音。
助手がついてくれてリリアもどこかに登るにしても隠れるにしてもたいぶ楽になった。
スナイパーはスナイプに集中しなけれならない。ダーゴが雑用をこなしてくれれば集中できる。ブリザはリリアの管理者だし性格的に言ってもリリアの方が気を使わなければならず結構大変なのだ。

ここまでは目立った成果はない。
もちろん周囲の交通量、地形、廃屋の存在等は少し確認できたが、なんたってエリアが広い。
道を見張り可能な場所といってもいくらでもある。目ぼしい場所に見当をつけて登り、今まで四カ所程人が使った形跡があったが残念ならがら恐らく旅行者等が景色を楽しんで帰ったと思われる程度のものだった。
「たぶん、この辺の山の中にアジトがありそうだけど… 山の中で近づくとバレバレになりそうだから、この場所から… この辺の道を見張ってみたら賊の出入りがわかるかも」リリアがブリザに報告する。
「わかった、確かにうっかり単独で近づくより強奪後の行く先を追跡したほうが良さそうだ」ブリザも頷く。
因みに作戦開始時から強奪事件は起きていない。頻繁になったとはいえ毎日起きるものでもない。

五日目の今日、リリアはダーゴと街道と支道の付近で街路を定点観測、ブリザは周辺の地形の散策となった。
リリアは高所を見つけてネットに枝や葉を取り付けてカモフラージュを作りその中から路上と森を観察して過ごす。
木の枝等にネットを張り、それを枝等でモコモコにして隠れ蓑してその中で過ごしている。

「ダーゴよかったね。今日はルーダ港に戻ってお泊りだよ。あたし祠の板の上で寝るの嫌になってたところなんだよね」リリアが言う。
賊が出現すると予想して街道を見張っているが、村より街の方が近い。
ブリザと相談してこの辺を見張る時は報告もかねて街に戻るようにした。
「オイラもユカはイヤだぜ。アレならジメンのほうがマシ」公用語に訛りの有るダーゴが答える。

正確に言うとリリア達は朝から街道と街道が見下ろせて見張りになるような場所を見張れる場所にいる。表現がちょっとややこしい。
路上の交通とそれらを襲う気配を観察するのも大事だが、襲撃前に必ず賊の見張り役がどこからか獲物を知らせているはずだ、リリアはそれらの動きをつきとめたい。
カモフラージュの中からDead or Aliveの指名手配書を見返しながら街道と周辺の高所も見張る。もっともいきなり指名手配級が登場することはあり得ない。
ダカットはテントまで上がってくる途中の斜面に置かれている。
リリア達の居る場所に誰か近づいて来るようならリリア達に知らせる様にしてある。疲れ知らずの優秀な警報器だ。
「何か近づいたらとにかく大声出すのよ」リリアはダカットに言いきかせた。
「大声か… 努力するよ… 俺、こんな使われ方されたくないけどな」
ダカットは文句を言っていたがやらないわけにはいかない。

「お!荷馬車が来た。2台…3台… 6台来た」ダーゴが言う。
「個人商店の混成部隊ってところだね、護衛も多い。うーん… 周辺も見張れそうな場所も異常なしね。巡回の騎兵隊が反対方面から来たね。結構警戒網が敷かれているわよね。もうちょっと街から離れた方が良いかな?」リリアがキョロキョロしながら呟く。

お昼時
「干し肉とドライフルーツに水ばっかりだよね。さすがに飽きるよね。ゴミを出せないし、匂いが出る物もダメだし、ずっとこんな食事だよね。街の食事が待ち遠しくない?」リリアは干し肉をかじっている。
「別に毎食煮炊きしたものじゃなくていいや。故郷じゃ木の実をそのまま食べるとか、野菜を丸かじりとかそんなもんだ」ダーゴは全然気にしていないようだ。
「… さすがね、こういう仕事向きかもね。ゴブリンは森の中だとステルス能力もあるし隠密活動向きなのね」リリアが感心している。
「オイラ達は森の妖精だからな。リリア、全然水を飲まないけど大丈夫なのか?」ダーゴ。
「トイレの痕跡も控えたいんだよね。とにかく察知されちゃだめなのよ。え?ダーゴはトイレいってるって?まぁ、強要は出来ないからね、気を付けていれば大丈夫よ」

おやつ時
馬車、旅行者、巡回兵等が往復する。時には知り合いらしき者が通ったりもしている。
「あれ?ドッグスの連中だね。ドッグスも盗賊退治に乗り出してるのかな?りリリアはあいつら大っ嫌いなんだよねぇ」
「あいつらゴブリンをバカにしてるぜ」ダーゴが言う。
「だよね、リリアの事もバカにするのよ!あったまきちゃう」
「… 人間だってオイラ達をバカにしてるよ、変わらないよ」ダーゴ。
「… ぃゃ… あたしそういうのしてないし…」リリアは呟く。

夕方が近づく
「リリア、あれ、ほら…」ダーゴが指を差す。
見ると旅行者に向かってデビルアントラーが襲い掛かっている。
「あぁ、魔物か… 手出しできないんだよね… がんばって、応援してるわよ」リリア。
「弓でもだめなんだな」ダーゴが言う。
「矢が残るとバレる上に、優秀な射手ほど道具にこだわるから特定しやすんだよね。まだ、直接ぶった切った方がバレにくい気がする」リリアが言う。

夕方
そろそろ店仕舞い。
「お!ブリザが通った。リリア達も片づけてルーダ港に戻ろう。全部お片付けよ、明日はもうちょっと街から離れよう」
ブリザからの合図を受けてリリア達も後片付けしてルーダ港の街に戻る。
手分けして荷物を担ぎリリアがダカットを拾う。
「俺は本当に一日中放置なんだな。なんだよあのゴブリンと二人で…」ダカットは不満があるようだ。
「適材適所よ。本当なら夜中も森の中で放置して見張っていて欲しいくらいだから贅沢言わないことね」リリアが言う。
「げ、本気かよ… 絶体やだよ」ダカットが呟く。
「文句言わないの。さぁ、今日は街でベッドに寝れるねぇ!美味しい物食べれるねぇ」
リリアはニコニコ静かに言う。
リリア達は道に出ると巡回兵の後について街へ戻って行った。
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