勇者の血を継ぐ者

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【213.5話】 リリアは不満のふを表明 ※ちょっと前のルーダリア城下街収穫祭の時の話し※

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「キャシィ、ちょっとリリアちゃんには不満があるのよ、不満のふを表明よ」リリアがキャシィに不満のふを表明している。
ここはリリアに用意された控室。大きくは無いが良い造りをしていて家具も良い物が揃っている。
キャシィはリアルゴールドのリリア担当女性。いかにも仕事が出来そうな、神経質そうな容姿の女性。
リリア達はルーダリア城下街で行われるリアルゴールド主催の収穫祭イベントに招待されてやってきていた。
招待メンバーは収穫祭でリリアモデルの販売キャンペーンを務めるリリア、それにリリアがリアルゴールドに頼んで一緒に招待してもらった、コトロ、ネーコ、ラビ、オフェリア、ペコとアリス。
「ルーダリア王宮のおひざ元でやるイベントね?リリアには両親はいなけど是非一緒に招待して欲しい友人がいるの!お願い!一緒に呼ばれて良い?」リリアがリアルゴールドの偉い人に頼んだのだ。
リリアモデルの販促のため四大都市でイベント開催するリアルゴールド、既にルーダ港、パウロ・コート、ルーダ・コートの街ではイベントを行った。
今年最大にして最後の祭典、ルーダリア城下街での収穫祭に合わせたイベントでお呼ばれついでに親しい仲間をリリアは招待した。
「そうか、勇者殿は孤児でおられたか。あぁ、担当の者に伝えておく、是非お仲間をお呼びなさい」
偉い人は髭をなでながらニコニコと了承してくれた。自分の金ではない、予算はある、小娘の友人が何人か増えた所で何の問題無いといった感じ。
それで、リリアはコトロ達を呼んだ。
オフェリア、ペコ、アリスも休暇を貰って現地集合。コトロもバーを休業してネーコ、ラビを伴ってやってきた。

リリアの部屋が忘れられていないように事前確認も行った。
今回は忘れ去られていなかったようだ。
「よかったぁ!リリアもちょっとは空気を脱出してきたのね」リリアは安堵と共に笑顔を見せる。
「そんなに心配だったのですか?今年最後のイベントにしてようやくちゃんと部屋が準備されるようになったのですか?喜んでいる場合ではないと思いますよ…」コトロが苦笑いする。
「だって、リアルゴールド主催だけど王室側からも出席者をだす合同開催みたいな規模でしょ?並みいるビッグネームの中リリアの部屋が忘れ去られていなかったことは大きな一歩だよ!人類にとっては小さい一歩でもリリア史にとっては大きな一歩!」リリアは喜ぶ。
「ねぇ、リアルゴールドは宣伝のために主催してるんでしょ。王国側も招待客が来ているのに勇者リリアは呼ばれていないって結局公認勇者としては完全に空気だよね」ペコがアリスに耳打ちする。
「ペコ、人は真実を知らない方が幸せな事も多いのよ」アリスが微笑む。
「あまり厳しくつっこまないでいてあげましょう」コトロも振り返って声を落とす。
オフェリアは苦笑いをしながら聞いている。
「わぁ、フカフカのベッドにゃん!良い部屋ニャン」
「良い絵が飾ってあるピョン!どこのお城ピョン?」
「あぁ!ニャン子ずるい、リリアがベッド一番乗りよ。思ったより部屋は小さいけどベッドが気持ち良いから許してあげちゃう!」
この三人ははしゃいでいる。
コトロが見まわすと大きくは無いが、しゃんとしたそれなりの良い部屋だ。
「リリアには十分過ぎる部屋ですよね」コトロが呟く

流浪人、孤児が多い冒険者ギルドは年が僅差になった家族のようなものだ。
リリアにしたら普段味わえないような気分を皆にも味わって欲しいのだろう。
名の通ったギルドで主戦力のペコとアリスでもなかなか立派な部屋に泊って貴族の呼ばれるようなイベントに顔をだせることはない。コトロだって同じだ。
どちらかというとサービス業専門のご奉仕種族と見られがちなネーコとラビ達は街中で平穏な暮らしが出来るだけでも幸せだと思っている。
そして、リリアの遠い親戚のオフェリア。
勇者の子孫だがリリア以上に特技を持ち合わせず、ペコやアリスの様にギルド内で重宝される存在でもない、本当に本物の影に隠れて冒険者生活をしているオフェリア。
埃まみれになり時には肥溜め掃除等を手伝って畑守をし、夜中はあくびをしながら倉庫番としてネズミを追い払っている生活。
「リリアが招待するから絶対ルーダリアの収穫祭に来て! リリアより」
オフェリアはリリアから招待の手紙を受け取った。

「さぁ、皆!イベントまでくつろごう!食べ物、飲み物頼み放題!やっほー!」リリアは到着してさっそく誰よりもくつろいでいる。
そこにキャシィがやってきた。


「リリア殿、先ほどご到着と連絡がありましたので確認にきました」
あいかわらず真面目そうなキャシィ。
「キャシィ、お久しぶり、今日もあなたに神のご加護がありますように。早速だけど、葡萄酒と白桃果実水を樽で持ってきちゃっていいよ、それからとりあえず何かお腹を満たせる物をご注文」リリアはベッドに寝転び涅槃像姿で注文している。
「リリア殿、伝えておきますが… 私の仕事はメイドではありません。スケジュールの確認に来ました。今よろしいでしょうか?」キャシィが言う。
「えぇ、先に食べ物じゃないかなぁ… 人間空腹だとイライラするものだよ、食べて穏やかに過ごしたい。まぁどうせ聞かされることなら聞いとくわよ。リリアちゃんは嫌な事を先に終わらせるタイプなの」涅槃像勇者の発言。
「… では、ここにスケジュール表を置いておきますが… 今日の夕方から緑の広場でリリアモデルの宣伝活動がございます。それまでにはこの建物のロビーに集合してください。今日はその後、リアルゴールドとハンズマンの主催するパーティーがあります。どなたも出席自由です。魔法使い様もドレスコードとなっており、法衣服でのご来場はご遠慮ください。貴族階級以下はペット、使い魔等のお連れは禁じております。明日、リリア殿は一日中、中央広場で4回の宣伝活動とデモがございます。明日も夜はリアルゴールドのパーティーがございますのでご出席は自由です」キャシィがキビキビとした口調で言う。
「はぁぃ!OKよ!了解よ!明日は3回デモ?4回だっけ?ちょっと一部聞き逃したけどスケジュール表みるから大丈夫」リリアはメッチャ適当に返事している。

で、
「キャシィ、ちょっとリリアちゃんには不満があるのよ、不満のふを表明よ」リリアがキャシィに不満のふを表明している。
「… 不満のふ?… どういった事でしょうか?」キャシィ。
「良い部屋だけどちょっと小さいのとベッドも豪華だけど一つしかないよね。この人数では寝れないじゃない。部屋は良いとしてベッドを増えしてよ」リリアは寝っ転がって足をパタパタさせながら言う。
「… 私はメイドではないので… どなたかに言いますが、ベッドをここにもう一つ運び込むのは無理だと思ってください」
キャシィはそういうと面倒を押し付けられないうちにといった感じでささっと帰っていった。
「果物と飲み物よろしくねー!」完全にVIP気分のリリアがキャシィの後ろ姿に言う。

「ちょっと贅沢過ぎますよ、リリア。これだけの待遇で… 別に雑魚寝でよいですよ」コトロが少し心配している。
「大丈夫だよ、言うだけ言ってみた方が得だよね」リリアはあっけらかんと言う。
「リリたん、不満のふってなんニャン?」ネーコ。
「あぁ、あれね。この前偉い政治の人がね、遺憾の意を表明って言ってたの。たぶん、い・か・んって増えて行って3回までチャンスあげるって意味だと思うよ。だからリリアも不満のふから始まってまだ怒りのレベル1的な感じだよ。んまでいったらアウト、怒り爆発モード!大暴れしてやるの」リリアはうっふっふと笑っている。

「…………」常識的な一同…

「リリたん、さすがニャン、勉強になるニャン」
「リリたんはいろんな事知る機会が多いピョン」
「あたしね、人にセカンドチャンスを与えるタイプよ。こう見えても慈悲深いからサードチャンスまで与えるからね」
リリアはそういうとドヤ顔で昼寝に入りだした。
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