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【178.5話】 休憩中のオフェリア ※リリアが結婚式仕事に出る前の話し※
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オフェリアは昼休み中。
ここ最近オフェリアはミンゴールさんの農園の畑守仕事をしている。
パウロ・コートの街の冒険者ギルド・シルバーソードに所属するオフェリア。
最も得意とするのは剣、盾も所有する剣盾士だが左手はランプ等を持つために空けている場合も多い。
リリアと同じ勇者の血を継ぐ子孫だ。リリアと同じ魔法の能力は皆無。
オフェリアが冒険者ギルドに所属した理由は、早くから両親を失い頼れる身内も無く、特に学業を習得してない平民のオフェリアがお金を稼ぐとなったら命を張って危険な仕事をするか、体を張って夜の仕事をするか…
剣盾を覚えた経緯は大多数の人間が剣を使い誰からでも習えるから、凡庸性が高い。
盾を持っているのは剣を捨てても盾で身を守れるから。
シルバーソードに所属したのは大きなギルドで安定している。仕事もピンからキリまで入って来る。安全な仕事を選び、危険な時は出来る人の後方に控えて料理を作って馬車の在庫管理でもしてればよい。
コツコツと貯金して鎧はそこそこ良い物を中古屋で揃えた。自分の命を守る物である、お金をかけるなら防具から。
剣の素振りは欠かさない。自分には何の才能も無い、この世界で生きるか、この世界で死ぬかだ。生き残り平穏な暮らしが出来る相手が見つかる日まで生きなければならない。素振りは人一倍努力をしている。
遠征では荷物係、料理係を希望する。人の暮らしを守りたいとも思っていない、魔物を倒したいとも思っていない。生き残るにはただ一つ、身の丈にあった仕事をこなす。
お仕事は巡回、守衛、番人が多い。しかも街中がほとんど。危険な職業とあって安全な仕事を選ぶのだから賃金は安い、生活するには量をこなす。
こういう人材も存在し、必要でもある。皆が皆英雄の卵気取りで危険に飛び込んでいき自分は一小国民だったのだと自覚した時にはシャボン玉の様に消えていかれては不都合も多くなる。世の中にはいろんな人がいてしかるべし。
ミンゴールさんの農園はパウロ・コート城外でも最寄りで比較的安全な農園だ。
魔物退治等というより、畑泥棒やタヌキ等を追い払うのが主な仕事。
城外である事は事実なのでお手当てが発生して安全なわりに賃金は少し良い。ギルド内で実力の要らない安全な後方勤務希望者にとっては人気の仕事。
オフェリアが選べたのはオフェリアが先輩格だからだ。生き残っていたらBクラスメンバーとしては長い方になってきている。
オフェリアは昼休み中
納屋の側の木陰に腰を下ろし、麦パン、チーズと水の昼ご飯。それが終わると差し入れのリンゴ。
同じギルメンのリエ、シルクも木陰に腰を下ろしお昼とおしゃべり。
シルバーソードから農園畑守に派遣されるメンバーは女性。男性冒険者でこの職に就くようならシルバーソードに席は無い。
「オフェリアさんも明日休みをとってましたよね?何するんですか?私達も明日はお休みなので、街の催し物を見に行こうと思っているんですよ。なんでもリアルゴールドの主催でデモだかショーだかをやるって。最近ポスター等で宣伝しているあれですよ」リエ達が言う。
「私は…まだ決めていないな…」オフェリアは呟くように答えた。
リエ達が言うのは明日行われるリリアモデルのショーの事だろう。今日リリアが街に来る予定だ。
一部の人間はオフェリアが勇者リリアの遠い親戚と知っているが普段あまり人には話さないようにしている。興味を持たれたり好奇な目で見られることは好まない。
オフェリアはリエ達が巡回兵との合コン話に花を咲かせるのに適当な相づちを打ちながらお昼をすますと差し入れのリンゴの中から状態の良いのをいくつか選んでポシェットに押し込んで見回りに立った。
「オフェリアさん、お客さんらしいですよ。呼んできてくれって… 水路門でお客さんが待っているみたいですよ」
オフェリアは呼ばれた。水門の所まで出向く。
「オフェリア!わぁぁぁ!! 会いに来たよ! 元気そうだね! えっへっへっへ、わりと早く到着できたんで待ちきれなくてね!ギルドにいったらここだって言われて会いに来たよ」
水門で待っていたのはリリアだった。相変わらず感情表現が豊か、オフェリアに会えていかに嬉しいかを全身で現わしている。そしてギュウギュウとハグする。
これがリリア以外であったらオフェリアは少し眉を寄せて迷惑そうにちょっと距離を取るところだが、遠い親戚であり一緒に旅をした仲間、天真爛漫でこれほどまでに自分との再会を喜んでくれるリリアのリアクションは嬉しい。
その後一時リリアはオフェリアと一緒におしゃべりしながら農園を回ってくれた。
雇い主としては誰がいてもどうでもよい事。畑が荒らされなければ問題は無い。
実際問題部外者がウロウロしていても目にも止めていない。まぁ目も届かない。
リリアはしばらくおしゃべりすると、「あたしちょっとやる事あるんだよね。先に戻るからね。夜はメッチャ乾杯よ!」とニコニコと帰って行った。
そのリリア、パウロ・コートの街で何の用事だろうか?…
仕事でオフェリアのギルメンと顔を合わせたことはあったが、わざわざ訪ねる程親しい人物がいるとも思えない。
ルーダ港に近く、新しい文化が入るルーダ・コートの街と違い、昔ながらの保守的な兵士家系が多い町でリリアにとって目新しい繁華街でもない。
オフェリアはちょっと不思議に思いながらリリアを見送った。
リリアはホウキと弓を手にさっさと用水路脇の歩道を歩き去っていった。
ここ最近オフェリアはミンゴールさんの農園の畑守仕事をしている。
パウロ・コートの街の冒険者ギルド・シルバーソードに所属するオフェリア。
最も得意とするのは剣、盾も所有する剣盾士だが左手はランプ等を持つために空けている場合も多い。
リリアと同じ勇者の血を継ぐ子孫だ。リリアと同じ魔法の能力は皆無。
オフェリアが冒険者ギルドに所属した理由は、早くから両親を失い頼れる身内も無く、特に学業を習得してない平民のオフェリアがお金を稼ぐとなったら命を張って危険な仕事をするか、体を張って夜の仕事をするか…
剣盾を覚えた経緯は大多数の人間が剣を使い誰からでも習えるから、凡庸性が高い。
盾を持っているのは剣を捨てても盾で身を守れるから。
シルバーソードに所属したのは大きなギルドで安定している。仕事もピンからキリまで入って来る。安全な仕事を選び、危険な時は出来る人の後方に控えて料理を作って馬車の在庫管理でもしてればよい。
コツコツと貯金して鎧はそこそこ良い物を中古屋で揃えた。自分の命を守る物である、お金をかけるなら防具から。
剣の素振りは欠かさない。自分には何の才能も無い、この世界で生きるか、この世界で死ぬかだ。生き残り平穏な暮らしが出来る相手が見つかる日まで生きなければならない。素振りは人一倍努力をしている。
遠征では荷物係、料理係を希望する。人の暮らしを守りたいとも思っていない、魔物を倒したいとも思っていない。生き残るにはただ一つ、身の丈にあった仕事をこなす。
お仕事は巡回、守衛、番人が多い。しかも街中がほとんど。危険な職業とあって安全な仕事を選ぶのだから賃金は安い、生活するには量をこなす。
こういう人材も存在し、必要でもある。皆が皆英雄の卵気取りで危険に飛び込んでいき自分は一小国民だったのだと自覚した時にはシャボン玉の様に消えていかれては不都合も多くなる。世の中にはいろんな人がいてしかるべし。
ミンゴールさんの農園はパウロ・コート城外でも最寄りで比較的安全な農園だ。
魔物退治等というより、畑泥棒やタヌキ等を追い払うのが主な仕事。
城外である事は事実なのでお手当てが発生して安全なわりに賃金は少し良い。ギルド内で実力の要らない安全な後方勤務希望者にとっては人気の仕事。
オフェリアが選べたのはオフェリアが先輩格だからだ。生き残っていたらBクラスメンバーとしては長い方になってきている。
オフェリアは昼休み中
納屋の側の木陰に腰を下ろし、麦パン、チーズと水の昼ご飯。それが終わると差し入れのリンゴ。
同じギルメンのリエ、シルクも木陰に腰を下ろしお昼とおしゃべり。
シルバーソードから農園畑守に派遣されるメンバーは女性。男性冒険者でこの職に就くようならシルバーソードに席は無い。
「オフェリアさんも明日休みをとってましたよね?何するんですか?私達も明日はお休みなので、街の催し物を見に行こうと思っているんですよ。なんでもリアルゴールドの主催でデモだかショーだかをやるって。最近ポスター等で宣伝しているあれですよ」リエ達が言う。
「私は…まだ決めていないな…」オフェリアは呟くように答えた。
リエ達が言うのは明日行われるリリアモデルのショーの事だろう。今日リリアが街に来る予定だ。
一部の人間はオフェリアが勇者リリアの遠い親戚と知っているが普段あまり人には話さないようにしている。興味を持たれたり好奇な目で見られることは好まない。
オフェリアはリエ達が巡回兵との合コン話に花を咲かせるのに適当な相づちを打ちながらお昼をすますと差し入れのリンゴの中から状態の良いのをいくつか選んでポシェットに押し込んで見回りに立った。
「オフェリアさん、お客さんらしいですよ。呼んできてくれって… 水路門でお客さんが待っているみたいですよ」
オフェリアは呼ばれた。水門の所まで出向く。
「オフェリア!わぁぁぁ!! 会いに来たよ! 元気そうだね! えっへっへっへ、わりと早く到着できたんで待ちきれなくてね!ギルドにいったらここだって言われて会いに来たよ」
水門で待っていたのはリリアだった。相変わらず感情表現が豊か、オフェリアに会えていかに嬉しいかを全身で現わしている。そしてギュウギュウとハグする。
これがリリア以外であったらオフェリアは少し眉を寄せて迷惑そうにちょっと距離を取るところだが、遠い親戚であり一緒に旅をした仲間、天真爛漫でこれほどまでに自分との再会を喜んでくれるリリアのリアクションは嬉しい。
その後一時リリアはオフェリアと一緒におしゃべりしながら農園を回ってくれた。
雇い主としては誰がいてもどうでもよい事。畑が荒らされなければ問題は無い。
実際問題部外者がウロウロしていても目にも止めていない。まぁ目も届かない。
リリアはしばらくおしゃべりすると、「あたしちょっとやる事あるんだよね。先に戻るからね。夜はメッチャ乾杯よ!」とニコニコと帰って行った。
そのリリア、パウロ・コートの街で何の用事だろうか?…
仕事でオフェリアのギルメンと顔を合わせたことはあったが、わざわざ訪ねる程親しい人物がいるとも思えない。
ルーダ港に近く、新しい文化が入るルーダ・コートの街と違い、昔ながらの保守的な兵士家系が多い町でリリアにとって目新しい繁華街でもない。
オフェリアはちょっと不思議に思いながらリリアを見送った。
リリアはホウキと弓を手にさっさと用水路脇の歩道を歩き去っていった。
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