勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【172.5話】 ドラゴンライダーリリア

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ルーダリアのドラゴン

絶対数が少ないものの大陸には野ドラゴンや家ドラゴンが存在する。
多くは峰や廃墟と化した塔等、人が現れないような場所に住み、金品等を収集する特徴がある。稀だが人間家族の一員となるドラゴンも存在し、ドラゴンと共に冒険するものはドラゴンライダー、魔物使いと尊敬を受ける。

滅多に見かけないが高い峰が連なる山地や山中の古戦場等で飛行する姿が見られることがあり
「わお!ドラゴンだ!久々に見れた!ラッキー」とリリアはメッチャテンションを上げている。
ルーダリアの空軍も4匹程度ドラゴン部隊を所有している。

知能が高く長生きなドラゴンは人間語で会話可能であり、滅多に人間と争う事は無いが、人間に悪人が居るのと同様、タチの良くないドラゴンがおり、諍いになることもある。しかし、コレクションの金品目当ての冒険者が引き金となり戦闘になるケースが多い。
ドラゴンは知能が高く強大な力を持っていて、人間は知恵と数の利があるのでお互いに尊重しあっている部分が多い。
ルーダリアに数々ある物語ではドラゴンと勇者の争いを題材にしているが、大抵は勇者側の金品の強奪目的が実情である。


さて、リリアは宣言通りおさぼり中、どこかに行ってしまっている…
「さっきピエンを見ましたが、人違いでなければ取材に来たのですかね?」
「取材?ピエンさんならリリたんの取材?結婚式の取材ピョン?」
コトロとラビがスタッフの休憩所で話をしていたらネーコがやって来た。
「リリたんを見つけたニャン!塔の裏手でミーナと一緒にいるニャン」
「リリアがミーナと? 裏手で?」コトロとラビが顔を見合わす。
「こっちニャン、来るニャン」ネーコが手招きをする。

「何をしているのですか?リリア」
コトロ達が塔の裏手に回るとリリアはミーナに騎竜しポーズをとっている。
ピエンが大きいキャンバスにその様子を描いている。
「あは… えへ… 見つかっちゃった?まぁ、ミーナは立派だし見つかるよね… あのね、ドラゴンなんて滅多に近くで見れないでしょ?で、その… 勇者だからってわけでもないけど… せっかくだから記念にしたくてね… 勇者だし… まぁ、勇者だからってわけでもないんだけど…」
リリアは見たことないくらい照れているようだ。顔を真っ赤にしている。
リリアモデルの鎧を着て、あんなに嫌がっている真紅のマントまで着用している。
「ピエンは呼ばれていたんですか?」キャンバスに向かってペンを走らせるピエンにコトロが聞く。
「はい、連絡いただきまして記事に挿し絵を描く事が多いので引き受けました。良い記念になるようにがんばります」ピエンが答える。
「ルミエさん、大丈夫なんですか?ご迷惑をおかけして」コトロ。
「ノープロブレムですわ。レセプションまではタイムがありますしミーナもルーダリアの勇者様と記念を残せてベリープラウドですわ」ニコニコとお茶をしているルミエ。
記念を残せて光栄だなんて言われるほど立派な勇者でもないのだが…
リリアはミーナとおしゃべりしながら楽し気にポーズしている。

「リリア、何かコソコソソワソワしていると思ったらこれですか。何も隠すようなことではないでしょう」コトロがミーナの側でリリアを見上げる。
「え… やだ!… だってドラゴンに乗って記念の残したいだなんて… 恥ずかしいじゃん… でも、勇者とドラゴンは表裏一体だし、ね。 えっへっへ」リリアは照れている。
「リリたん、良いニャン、ネーコも乗りたいニャン」
「リリたん、かっこよいピョン!勇者って感じピョン!」
「馬子にも衣装とはまさにこのことですね…」
「皆後で遊覧飛行に飛んでくれるって、それは皆で飛ぼうよ!あたしってばドラゴンに乗って飛ぶの夢だったんだよねぇ… コトロそこだと絵に入るよ… もう皆でポーズとろうか!記念に皆で一緒にポーズとろうよ!ミーナ、ピエンいいでしょ?」リリアが言い出した。
「構いません」ミーナとピエン。
「いや、私は別に遠慮しま…」
「コトたん素敵ニャン!皆で絵になるニャン」
「そうピョン、滅多にない機会ピョン、皆で乗るピョン」
「なぁ、そう言う事なら俺も絵に入れてくれよ」ダカットも頼む。
「OKよ!皆上がって来たらいいよ!題材は勇者リリアと愉快な仲間たちとオマケのホウキに変更よ!」リリアがニコニコしている。
「俺はオマケなのかよ!」ダカット。


夕刻のエリフテン
村人が空を見上げるとドラゴンが飛んでいる。
「塔で式があるからなのか、ドラゴンが良く飛んでるなぁ」
人々が見上げて話題をする。

リリア達は順番でドランゴンに遊覧飛行してもらった。ライダーのルミエは絶対に乗らないといけない。巡回仕事から戻ったブラックとリリア達で飛ぶのだが、定員オーバーだと言う。重量の関係でブラックとネーコ、リリア、コトロ、ラビの組で飛ぶこととなった。
先にブラック達が飛んでもらってリリアの番。

「わぁ!凄い!見て!村が見えるよ!あ!あれってイノガシラの群れ?」
ドラゴンに飛んでもらってリリアははしゃいでいる。
「眺めは良いし貴重な体験ですが… 乗り心地が思ったより…」
「風が凄いピョン、結構怖いピョン、リリたん良く下を覗けるピョン」
コトロは必死にリリアにつかまり、ラビはコトロにしがみついている。
「安全ベルトあるし大丈夫だって! あれはフライングシャーク!… 近づくの?凄いファイアーブレスで蹴散らした! あ!ハーピーが飛んでるよ!」リリアはエキサイト。
ミーナもルミエもこれだけ喜んでもらえると嬉しいようだ。サービス飛行も増える。

「急降下!やっほーーーー! スリルねぇ! 最高!」
「リリたん凄いピョン、ゆっくり飛んでくれないと怖いピョン」
「勇者やるような人間はどこか脳みそが弾け飛んでるんですよきっと」
コトロとラビは必死。
ダカットはリリアの背中で「俺、胃があったら吐いてるぜ」呟いている。

もうすぐ夕日が峰の向こう側に沈む時間だ。落ち着いて飛ぶと空からの眺めは最高な物だ。
オレンジに鈍く光る樹海、金色の草原、山と峰の作るコントラストに塔が長い影を引いているのが見える。コトロとラビも感動。
「そろそろ降りますね」ルミエが言う。
「ルミエ、ミーナありがとう!父さん、母さんリリアはドラゴンに乗って飛んでるのよ!勇者っぽいのよ!やっほーーー!」
リリアはペンダントを掲げて叫んでいる。
コトロには気のせいかリリアが少し泣いているように見えた。
「… ラビどうしました?大丈夫ですか?」
「… 何でもないピョン」
コトロが思うにラビはコトロの肩で涙を拭っている様だった。
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