勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【152話】  国王からの依頼

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リリア達はドラキュラ退治。
ルーダリア国王からの依頼としては勇者として二度目の頼まれごとだ。
国王に拝謁を賜りリリアは思う…

“そろそろ給料出せ、髭じじい”


アメルネスカとハイネルを緑の教会に預けたリリア。何とか一安心だ。まだ幼いハニーの面倒をアニーがみながら、教会でしばらく働きながらお世話になる決心をしてくれた。
リリア達がアニーとハニーを連れて緑の教会に行く朝リリアが起きると、アニーはエルフの特徴的な耳を人間の耳の形に切ってしまっていた。
「何もそこまで!」リリア達が驚く。
「リリア、皆さんありがとう。逃げる人生を送りたくないの。貰った第二の人生、大切にする」と言っていた。


その後リリアは…
ホウキのダカットを故郷に連れて帰る旅の予定だったが…
まず、バー・ルーダの風には意地でもリリアは帰らない。
「全部うまく収まったし、もうコトロだって怒ってないよ。ギルドに帰って謝ったらそれで済むだろう」ダカットは言うが
「いや、リリア絶対に帰らない。何よ、コトロなんて偉そうにギルマスしてるけど、お酒作ってリュート弾いているだけじゃない。ダカットがそんなに帰りたいなら置いて行ってあげるからバー掃除用のホウキにでもなったらいいじゃない」リリアは意地になっている。

とりあえず、ダカットを故郷に返す旅に一から出直したリリア達。
「住む場所は何とかなるよ。国の勇者は住む場所に補助金が出た気がする」
リリアがルーダリア城下の官舎で説明を聞こうと立ち寄ったら
「勇者リリア殿ですか?… 現住所に不在だったので国王から招集がかけられております」と拉致られるように城内に連れてこられた。

で、押し込まれるように謁見の間に連れ出されブラックとホウキを手に国王に拝謁。
リリア、その手にホウキ、ブラック、とディルが並んでお言葉を賜る。
ディルはリリアがやらかさないか見張り。リリアの不祥事は勇者管理室の不祥事なのだ。ハラキリ覚悟でリリアの失態を阻止する。

「勇者…よ この国に災いなすドラキュラ退治を引き受けてくれるかな?」
一通り説明をし、国王が勇者リリアに聞く。

コマンド
▽はい
▼いいえ

「王様、謹んでお断りいたします」リリアは胸を張って断る。スパっと一刀両断の即答。
まさかの堂々たる暴挙ぶりに一同目を丸くして絶句。耳を疑う。
「… うむ、それでは勇者…よ、今こそルーダリア王国民のためその活躍を期待しておる。勇者… あ~… 勇者、いざ行かん」
耳が遠いのか、形式通りの答えが返ってくると思っていたのか、モウロクしているのか、一枚上手なのか…
何故かリリアがクエストを引き受けたことになっている。
「はぁ?いや、王様!」
リリアが反論しかけたが、周りの人間にそのまま引っ張り出されてしまった。ディルなんか必死の形相だった。

当然、勇者管理室に戻されたリリアは大暴れだ。
クエストの前に山場がありすぎてクエストの話しに入れない。
「ドラキュラ退治なんてやらないってリリアは言ってるでしょ!なんで勝手に引き受ける事になってるのよ!いやだって言ってるの!」
管理室長とディルに怒鳴り散らすリリア。衛兵たちがいつでも押さえつけられるように身構えている。ブラックはホウキを持って目を細めて立っている。
“自分の意見を言うことは大事っす”とか思っているのだろう。
「だから嫌だって!理由?怖いからよ、やりたくなじゃん。あたし、周りがゾンビだらけになって迫ってくる夢とか、闇の中からドラキュラが迫ってくる夢とか嫌いなの!蚊とかヒルとか採血花とかブラッドマンゴーとかブラッドサッカーとか吸血系嫌いなの… はぁ?好き嫌いするなぁ?ディル、あんたこのまえピーマン嫌いって言って避けてたでしょ!カビチーズだって絶対食べなかったじゃない!ピーマンとカビチーズとドラキュラと何が違うのよ!嫌な物を回避する!一緒じゃない!」
ブラックとダカットは黙って様子を見ている。
「勇者だから断れない?ふざけないでよ!なんで勇者になったら人権はく奪されるのよ!勇者だからって健康優先で断る権利はあるはずよ!これはパワハラよ、ユウハラよ!他の人に頼みなさいよ!兵隊いるでしょ?軍隊もってるんでしょ?… 責任者がやりたがらない?だから勇者に頼んだ?… じゃなんでそいつらは断れてリリアは断れないの!バカにすんじゃないわよ!」
いよいよリリアも爆発しだした。衛兵が室長デスクとリリアの間に割って入る。
「断れないはずないじゃない!王様は質問形式で意思確認してきたんだよ!選択肢があるのよ、これは国王の意思よ!あなた達全員国王の意思を覆してるのよ、謀反よ!反乱よ!国家転覆よ!… あれは形式的なもの?本来は断らない?断った奴を見たの初めて?勇者の恥を知れ?… はぁ?どこまでも勇者をバカにして… ならリリアが史上初、国王の願いを断った勇者としての前例よ、今後の勇者の道しるべよ!人類初、人類にとっては小さな一歩だが、王国の勇者史にとっては巨大な一歩よ!はじめの一歩よ!ピーカブーよ!嫌な物は嫌とはっきり言う真の勇者、キングオブ勇者の誕生よ!だいたい何よあれ!王様、あたしの名前忘れてたでしょ!リリアはちゃんとお見通しよ!そんで最後ちょっと勢いで誤魔化したでしょ! こんな酷い扱いされてクエストとかやんないから!! あ!ちょっと!何よ!」
衛兵達が寄ってたかってリリアを捕まえ始めた。
「触んないでよ!!出ていくわよ!クエスト不成立よ!帰ってノンビリ幸せに暮らすから。え?倒してこい?反乱罪?侮辱罪?クエスト引き受け書には代理でサインしておく?勝手なことばっか言って… 絶対にやらない!違法よ! ちょっと!やめ!… わぁぁ」
とうとう引き受けたことにされ、つまみ出されてしまった。クエスト引き受け書にはリリアの代理人の名前でサインされてしまうようだ。滅茶苦茶だ!


「ざっっけんじゃねぇぇぞおぉぉぉぉ!絶対やらなねぇからああぁぁぁぁぁぁ!何がドラキュラ退治だぁぁぁぁぁ!おまえらから退治だぁぁぁぁぁ!」
城門から押し出されたリリアは大絶叫している。
「どいつもこいつもふざけんじゃねぇぇぇぇぇ!バカにしやがってぇぇぇぇぇ!」
絶叫しながら城門を蹴っ飛ばしたら門番が飛んで来て、通りに転がされた。
リリアが誰か全く知らない彼らは城内以上に容赦ない。
リリアは悔しくて大号泣している。
「…… なぁ、とりあえず落ち着けよ。やめとけよ、本当に侮辱罪を被るぞ…」
「… 先輩、とりあえず、今日は宿をとって鶏肉でも食べるっす」
ブラックとダカットが心配する。
「絶対にいや、ひど過ぎるよ。あたし勇者辞める!村に帰るの!」
リリアは大号泣。

「… 仕方ないです。さっさとクエストを終わらせましょう」
「… 絶対に嫌だって…  って、ディル? 何で?…」
何故かディルが一緒にいる。ディルは何故ここにいる…

「おまえも一緒に行って、仕事するか見張って来いっと… 仕方ないです、早めに片づけましょう」
淡々と述べている。

「……… てめぇ!!どこまでふざけんてんだぁぁぁぁぁぁ!」
「あ!先輩!それはまずいっす。人はだめっす。ディル兄は国士っす」

影が長くなった城門前で大騒ぎしている一団がいる。
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