勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【151.5話】 人知れず

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夕方、ようやく教会も落ち着いてきた。
忙しかったシスター達も、リリアも一息つく。

「リリア、今日はまた忙しくって… 待たせたな。何か用事があったのだろう?」
ゴグスタフ先生もようやく魔法の杖を置く。
「… ゴグスタフ、実はね… 相談があって… ここでしばらく面倒を見て欲しい人がいて… 二人いて… ここのこと手伝ってくれると思うの… まぁ、ちょっと事情があってね………」
リリアはもじもじしている。
「……ん? あぁ… 皆、ちょっと席を外してくれないか?ここの片づけは俺がやっておく」ゴグスタフは気を利かせてくれた。
「ありがとう…… その… 実はね…」
リリアはアメルネスカのハイネル経緯について話し始めた。

「… まぁ、そんなわけで、ここなら… その… 衛兵が来たり、商人ギルドの人が来たりってことは無いかな?っと思って… 世の中から隔離されているって言うのか…」リリアがぽつぽつと話す。
「そうか、人手が足りないからちょうど良かった。明日連れてきなさい」
先生はあっさり言うと片づけを始めた。
リリアもあっけにとられながら片づけを手伝い始めた。



※※
ルーダ・コートの街の小さな教会。
この街には大小様々な教会があるが、この小さな教会はクローバー地区の通称ゴロキと呼ばれる場所付近にある。古風で小さいが水路が通る公園が隣接し厳かな建物。大きめな墓地を所有している。
公園と教会の側にある水路に架かる橋を渡るとゴロキの貧民窟地域となり治安が悪くなる。
その奥に足を運ぶと非公式だが精霊教会、緑の教会と呼ばれる教会のような診療所のような貧民達の憩いの場所のような場所がある。ここではゴロツキも悪党も良い患者さん。
魔力を持って生まれてき、優秀な治癒術士であったがゴブリンであると言う理由で、正式にプリーストになれなかったゴブリンシャーマンが始めたボランティア教会だ。
貧困で治療にかかれない多くの人々を治癒し続けてこの世を去っていったゴブリンシャーマンは生涯正式なプリーストと認められることも、その密かで多大な功績を認知されることもなかったが彼の生涯を惜しみ、住民が感謝と功績を称え隣接する小さな教会にお墓を立てた。
現在ではそのゴブリンシャーマンの養子となった腕の良い若きゴブリンシャーマンが緑の教会に来る患者を診ている。
今日までに緑の教会に一生を捧げ、その生涯を惜しまれ小さな教会に埋葬された者は、初代のゴブリンシャーマンを含み三名。二名は謎の生い立ちの女性二人。


小さな教会の墓地
用水路沿いの道から小さな教会の墓地に出ると柵が立っている。
ゴロキ地区に向かう橋との十字路から柵越しに墓地を覗くと他の墓石とは違い、橋の方を向く三つのお墓が並ぶ。

“ゴグスタフ・『真のプリースト』  生受けし日より~716”

国からプリーストと認められなかったゴブリンには住民から真のプリーストと称えられ刻銘されている


“アニー・リトルイヤー『ザ・グレートシスター』  生受けし日より~736”

両耳を怪我して教会に来たと語る長身細身の人間女性、アニーは献身的に働き、教会に一生を捧げ、偉大なシスターと刻銘をされている。


“ハニーリリア・ザ・ウルフ『オブ・グレートシスター』   生受けし日より~738”

狼人としは大きくフサフサの尻尾を持つ亜人の女性ハニー、感染症で早めの生涯を閉じるまで緑の教会に一生を捧げ、グレートシスターと称えられ墓石に刻銘されている、
狼人の女性はこの世を去る際に「お墓には本名のハニーリリアを…」と語っている。

奇しくもアニーとハニーリリアとも自分の娘の名前にはリリアと命名している。


柵越しには読み取れない刻銘。
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