勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【141話】 悟ったリリア

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今朝、ちょっとした事件があった。本当にちょっとしたものだが…

リリアがダカットを迎えに行ったらダカットがいなくなっていたのだ。
「あれ?ここに置いたはずだけど…」
キョロキョロ、ウロウロとリリアは探してみたが見つからない。誰かが気を利かせて物置にでもしまったのだろうか?勝手に他人の物置を物色するわけにもいかない、そもそも夜中に放置ホウキを動かす人がいるかな?と思って探し回っていると
「リリア!リリア!俺だよ!ここだ!」
妙な物陰から見つかったホウキさん。
「呆れた、ちゃんと見張ってないとダメじゃないの」リリアが注意する。
「いや… 俺、自分の意志で動かないから… 明け方犬に持っていかれそうになった。あいつ等六感があるから何とか追っ払ったけど、強気な連中だったら連れ去られていた」ダカット。
「そか、今夜からは置き方を工夫しないとね」リリアが言う。
「やれやれ… 部屋で過ごしたいけど…」ダカット。


リリア達は村長の家に行ってブラックの仮説を説明した。
「ドンテロの所の家畜が盗まれ始めて三カ月か?四カ月か… そこから一ヶ月遡るなら… 年始めくらいかの?… その頃目立って病気や怪我といったらヘンデかテディのところか…」村長が言う。
「リラックさんとトッドさんも年始の行事を休んだ記憶がありますね。発熱が続くようなら教会に治癒されに行くはず。詳しくわかるかも知れません。ファーザーなら信用できます。事情を説明したら何かわかるかも知れません」村長の息子が言う。
リリア達は教会に行ってみた。

「ドンテロのところの話しは聞いておったが… 可能性はあるな。その頃の話は、プリーストかシスターに… いや、事情は詳しく話さんから安心しなさい」痩せたファーザーがゆっくりと話す。
プリーストが呼ばれた、曰く
「年始行事の後でしたか… テディさんが一週間くらい熱を出して治癒に来ていました。うーん… 発熱が続いていたみたいですよ。リラックさんも何時ぞや高熱が続いて治癒をしました。確か農作業中に怪我して傷口が腫れてるとか… いや、あれがテディさんだったか?… どうかされたのですか?」
「うん… あのね、薬草作りするのに参考にしようと思ってね。ありがとう」
リリア達は教会を出た。


「ねぇ、何だかクエストしているみたいで物語の勇者みたいじゃない?」リリアは何だかウキウキしているようだ。
リリア、ブラックとダカット、今日は川に架かる橋が見える場所に腰を下ろしている。
確かに、事件があり、依頼され、謎解きと解明し、解決する。立派なクエストだ。残念なことに今のところ全部村内で済んでしまう極小スケールだが。
リラックは山に入っているそうだが、畑で作業をしてるテディをそれとなく観察してきた。
「あたしね、犯人はテディだと思うの。女の六感。絶対テディよ」リリアは自信を持っているようだ。
「テディさんとリラックさんはかなり確率高いのはわかるっす。リラックさんは山に入っているから見てないっすけど、先輩は何でテディさんだと思うっすか?今見たところ何も変わった事は無かったっす」ブラックが先輩を不思議がる。
「俺、リリアのことあんまり知らないけど… 今までのことからするとリリアがテディって言うならテディは違う気が…」ダカットが言う。
「ダカット、薪にされて燃やされるのと、炭にされるのどっちが好き?… あなたリリアにそっぽ向かれたらあの村で一生糞取りホウキだからね。 これはあたしの六感だけど… まぁ、六感だから理由とかあんまりないけど… でも、結構確信的よ。テディが犯人よ。彼はウェアベアよ」リリアがきっぱりと言い放つ。
「テディさんがウェアベアっすか?そこまでわかるんすか?先輩」後輩君は不思議がっている。
「リリアは見て悟ったの。悟りを開いた心境。徳を積んだ気分。一切是空よ!諸行無常ね」
リリア涅槃像姿で草むらに寝ている。リリアはいつの間に徳を積んだのか?不思議…
「… 何でわかるんだよ…」ダカットが促す。
「テディの姿をみてピンと来たわ。あの人の作業姿見て気が付かなかった?後輩君もダカットもまだまだね。リリアは鋭いの、女勇者をなめちゃダメよ。あの人作業中上半身裸だったでしょ?… 腕毛とかメッチャ濃かったじゃない。あの毛深さ、熊よ。そもそもテディって名前が熊よね。テディは熊、テディべ…」
「リリア、それ以上は言うな」ダカットが遮る。
「…?… とにかく、間違いないわね… テディがウェアベアよ、ライカンスロープ」リリアは自信満々。
「さすが先輩っす。その線は捨てきれないっす」後輩ブラック。
「…… なぁ、おまえアホなのか?先輩思いなのか? 時々わかんねぇなぁ…」ダカットが珍しくブラックに話しかける。
とにかく、リリアは“してやったり“的なドヤ顔して涅槃像している。

「テディさんとリラックさんが怪しいとして、他の人だって事も想定しておいた方が良いっすね。それと捕獲というか、補導というか、捕まえ方、その後の事も考えておかないと、村人だったら殺して終わりってわけにいかないっす。治療できないならその後の事も考えないといけないっす」ブラックが言う。
「… そっかぁ… そうよねぇ… 考えてみれば魔物を退治するのって大変だけど気は楽よね…」リリアが呟く。
「フリートの勇者は凄いっすけど… こんな悩みは無いんじゃないっすかね。システマチックに武力行使な気がするっす」ブラックもテンション低め。
「システ?何? リリアはウッソ村自然と調和の神の教会卒だから難しいことわかんないけど、とにかく良く考えて皆が幸せになる解決をしないとね」リリア。
「うっす、先輩」ブラック。
「フリートの勇者がどんなのか知らないけど、俺、ルーダリアの勇者の方が好きかなぁ…」ダカットが呟いている。


「あれ?トードが橋に上がってるね。通行の脅威ね。排除!」
リリアは立ち上がると矢を放つ。
一矢一線
「お見事!」ダカット
「先輩、調子良さそうっすね」ブラック
「川に投げ込んでゴーバックトゥネイチャーよ」
リリア達は道に下って行った。
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