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【133.5話】 リリアとダカットと
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ホウキのダカットを故郷に連れて行く約束をしたリリア。
ダカットを手にバー・ルーダの風に戻った。
戻ったが誰もいない。買い物か遊びに出ているのだろう。
「ここがあたしとギルメンのバーだよ。リリアは用事があるから誰か戻って来たら話してみて」
リリアも用事があるのでとりあえずダカットをバーに置いて出かける。
「さっき長く話して疲れたし、話すの苦手なんだ…」呟くダカット。
「あ!それで掃除しちゃだめ!」
リリアがバーに戻って来るとコトロとネーコがいて、ネーコがダカットを手に掃除している。思わずリリアが止める。
「これリリたんのホウキにゃん?ホウキで掃除しないなら何のためのホウキにゃん?」ネーコが聞き返す。ネーコの言う通りだ。
「それはホウキだけどダカット。今はホウキだけど前は人間だったの。そこで拾って来たんだけど、ダカットを故郷に連れて帰ってあげようと思って… 掃除用のホウキじゃないの…」リリアが説明する。
「………… リリたん何言ってるニャン?」
「… メロン水と間違えて幻想薬でも飲んだのですか?」
コトロとニャンが顔を見合わせてリリアを見つめる。
「正気よ!お昼はサンドイッチとフルーツミックスよ。結構よく噛んで食べたわよ」
リリアはネーコからダカットを奪うと話しかけ始めた。
「ダカット、いるんでしょ?起きてるでしょ?話せるんでしょ?挨拶しなさいよ… ねぇ、ちょっと、話しなさいよ!」
「………………」
ダカットは恥ずかしがっているのか、疲れてしまったのか、あるいはその両方か、黙っている。リリアはホウキを揺すったり、叩いたり、振り回したりして話しかけている。
「…… ねぇ、コトたん、リリたんやばいニャン… いっちゃってるニャン」
「… これは薬による幻覚でしょうか?ここ十日間で二回死に目にあっていますから、ショックからでしょうか」コトロとネーコがリリアを心配する。
「ねぇ!話しなさいよ!…… これね、そこの路地で拾ったんだけど、持ってたらシェスタが呼び止めてきて… ホウキは魂が宿っていて、もともとは村出身の人間で… ほら!何か言いなさいよ!しゃべらないなら薪にして燃やすわよ!」リリアはホウキに怒鳴っている。
「リリア…」「リリたん…」
コトロとネーコが声を失っているとラビもバーに帰って来た。
「何の騒ぎピョン?また喧嘩ピョン?」ラビがコトロ達の顔を見る。
「皆、何よその顔。本当にホウキじゃないんだから!… いや、ホウキなんだけど…ホウキじゃないの!魔法のホウキ?そうじゃないけど… 魔法じゃないけど、それに近いというか… 妖精じゃないけど、魂よ。人間!根性が入っているホウキ。ホウキだけど人。今はしゃべらないけど、しゃべるのよ!そのうちしゃべるようになるの! ほら!ほら!しゃべりなさいよ!あなたがしゃべらないからリリアの頭がおかしくなったと思われてるじゃない!」
リリアはホウキを振り回しながらむきになって主張する。
「リリア、わかりました。私はホウキの声を聞きました。とりあえずリリア、今日は部屋で休みましょう」
「リリたん、ネーコもホウキと心を通わしたニャン、後でドーナツ運ぶから部屋で落ち着くニャン」
「リリたん、ホウキが大事なのはわかったピョン。リリたんが大事なラビが部屋で話を聞くピョン」
三人がニコニコしながら目と口元に力を入れて身構えながら包囲網を縮めてくる。
「なに皆?怖い顔して、ピョン子は泣いて?本当なの!ホウキはちゃんと話せるよ!気力のポーション?要らないって!リリアは正気よ!…… いや!ちょっと!何なに!もう今日は休め?部屋でゆっくり?治癒術士と冷媒士を呼ぶ?そんなんじゃないってば!ホウキはダカットなの!… あ!ちょっと!… わぁぁ!」
リリアはホウキを取り上げられ、部屋に押し込められてしまった。当然の流れというか適当な処置というのか…
これはリリアが悪いのかコトロ達が悪いのか、ダカットが悪いのか…
一度部屋に押し込められたリリアだが、部屋から出してもらいました。
コトロ達がホウキを処分しようとしたところ、ようやく話したのだ。リリアのご乱心疑いは晴れてホウキのダカットとのいきさつを説明したリリア。
「全員失礼過ぎよ!リリアに限ってただのホウキに話しかけ始めたりするわけないじゃない!」リリアは苦笑いするが、普段からとんでもない事ばかりやらかすリリアなのでやりかねない…
「冒険者はポーション漬けになるので、精神のバランスを壊したのかと思いました。」
「びっくりしたニャン。半壊でとどまっていたリリたんが全壊したと思ったニャン」
「勇者として世の中らか相手にされてないからホウキと友達になっと思ったピョン」
コトロ達はリリアを本気で心配している。
「そういう事だから、後輩君が戻って来たら一緒にダカットを故郷に連れて行く」リリアは決意しているようだ。
「うーん… ブラックと二人で旅行するのも色々意見がありますが… まぁ、ブラックが戻るまで一週間あります。とりあえずゆっくり休んでください。話を聞いていると北西の国境を越えて往復二週間程度でしょうね」コトロが言う。
「すみません、お世話になります」ダカットがお礼を述べる。
「ホウキと精神を分離して昇天させるなら街のプリーストや鎮魂術士でもできますよ。それこそこの前のゴグスタフ先生等で出来るはずです」コトロ。
「確実にご両親のお墓にとどけたい。一緒に眠らせたいのよ」リリア。
「税金納める国民でもないですが… 勇者ってボランティアが大変ですね。まあ、リリアの良いところであり、気持ちはわかりますが… わざわざ出向くわけですか…」ため息をつくコトロ。
「これも勇者としての務めよ。いや、リリア個人でもやってあげたいの」リリア。
「すみません。お手数です」ダカットが言う。
「この件は時間があるのでゆっくり準備していきましょう。 それで… 今すぐ掃除用のホウキを調達してきてください。一王国民が掃除もできなくて困ってますよ勇者さん」コトロが言う。
「あ、はぁぃ…」リリア。
ダカットを手にバー・ルーダの風に戻った。
戻ったが誰もいない。買い物か遊びに出ているのだろう。
「ここがあたしとギルメンのバーだよ。リリアは用事があるから誰か戻って来たら話してみて」
リリアも用事があるのでとりあえずダカットをバーに置いて出かける。
「さっき長く話して疲れたし、話すの苦手なんだ…」呟くダカット。
「あ!それで掃除しちゃだめ!」
リリアがバーに戻って来るとコトロとネーコがいて、ネーコがダカットを手に掃除している。思わずリリアが止める。
「これリリたんのホウキにゃん?ホウキで掃除しないなら何のためのホウキにゃん?」ネーコが聞き返す。ネーコの言う通りだ。
「それはホウキだけどダカット。今はホウキだけど前は人間だったの。そこで拾って来たんだけど、ダカットを故郷に連れて帰ってあげようと思って… 掃除用のホウキじゃないの…」リリアが説明する。
「………… リリたん何言ってるニャン?」
「… メロン水と間違えて幻想薬でも飲んだのですか?」
コトロとニャンが顔を見合わせてリリアを見つめる。
「正気よ!お昼はサンドイッチとフルーツミックスよ。結構よく噛んで食べたわよ」
リリアはネーコからダカットを奪うと話しかけ始めた。
「ダカット、いるんでしょ?起きてるでしょ?話せるんでしょ?挨拶しなさいよ… ねぇ、ちょっと、話しなさいよ!」
「………………」
ダカットは恥ずかしがっているのか、疲れてしまったのか、あるいはその両方か、黙っている。リリアはホウキを揺すったり、叩いたり、振り回したりして話しかけている。
「…… ねぇ、コトたん、リリたんやばいニャン… いっちゃってるニャン」
「… これは薬による幻覚でしょうか?ここ十日間で二回死に目にあっていますから、ショックからでしょうか」コトロとネーコがリリアを心配する。
「ねぇ!話しなさいよ!…… これね、そこの路地で拾ったんだけど、持ってたらシェスタが呼び止めてきて… ホウキは魂が宿っていて、もともとは村出身の人間で… ほら!何か言いなさいよ!しゃべらないなら薪にして燃やすわよ!」リリアはホウキに怒鳴っている。
「リリア…」「リリたん…」
コトロとネーコが声を失っているとラビもバーに帰って来た。
「何の騒ぎピョン?また喧嘩ピョン?」ラビがコトロ達の顔を見る。
「皆、何よその顔。本当にホウキじゃないんだから!… いや、ホウキなんだけど…ホウキじゃないの!魔法のホウキ?そうじゃないけど… 魔法じゃないけど、それに近いというか… 妖精じゃないけど、魂よ。人間!根性が入っているホウキ。ホウキだけど人。今はしゃべらないけど、しゃべるのよ!そのうちしゃべるようになるの! ほら!ほら!しゃべりなさいよ!あなたがしゃべらないからリリアの頭がおかしくなったと思われてるじゃない!」
リリアはホウキを振り回しながらむきになって主張する。
「リリア、わかりました。私はホウキの声を聞きました。とりあえずリリア、今日は部屋で休みましょう」
「リリたん、ネーコもホウキと心を通わしたニャン、後でドーナツ運ぶから部屋で落ち着くニャン」
「リリたん、ホウキが大事なのはわかったピョン。リリたんが大事なラビが部屋で話を聞くピョン」
三人がニコニコしながら目と口元に力を入れて身構えながら包囲網を縮めてくる。
「なに皆?怖い顔して、ピョン子は泣いて?本当なの!ホウキはちゃんと話せるよ!気力のポーション?要らないって!リリアは正気よ!…… いや!ちょっと!何なに!もう今日は休め?部屋でゆっくり?治癒術士と冷媒士を呼ぶ?そんなんじゃないってば!ホウキはダカットなの!… あ!ちょっと!… わぁぁ!」
リリアはホウキを取り上げられ、部屋に押し込められてしまった。当然の流れというか適当な処置というのか…
これはリリアが悪いのかコトロ達が悪いのか、ダカットが悪いのか…
一度部屋に押し込められたリリアだが、部屋から出してもらいました。
コトロ達がホウキを処分しようとしたところ、ようやく話したのだ。リリアのご乱心疑いは晴れてホウキのダカットとのいきさつを説明したリリア。
「全員失礼過ぎよ!リリアに限ってただのホウキに話しかけ始めたりするわけないじゃない!」リリアは苦笑いするが、普段からとんでもない事ばかりやらかすリリアなのでやりかねない…
「冒険者はポーション漬けになるので、精神のバランスを壊したのかと思いました。」
「びっくりしたニャン。半壊でとどまっていたリリたんが全壊したと思ったニャン」
「勇者として世の中らか相手にされてないからホウキと友達になっと思ったピョン」
コトロ達はリリアを本気で心配している。
「そういう事だから、後輩君が戻って来たら一緒にダカットを故郷に連れて行く」リリアは決意しているようだ。
「うーん… ブラックと二人で旅行するのも色々意見がありますが… まぁ、ブラックが戻るまで一週間あります。とりあえずゆっくり休んでください。話を聞いていると北西の国境を越えて往復二週間程度でしょうね」コトロが言う。
「すみません、お世話になります」ダカットがお礼を述べる。
「ホウキと精神を分離して昇天させるなら街のプリーストや鎮魂術士でもできますよ。それこそこの前のゴグスタフ先生等で出来るはずです」コトロ。
「確実にご両親のお墓にとどけたい。一緒に眠らせたいのよ」リリア。
「税金納める国民でもないですが… 勇者ってボランティアが大変ですね。まあ、リリアの良いところであり、気持ちはわかりますが… わざわざ出向くわけですか…」ため息をつくコトロ。
「これも勇者としての務めよ。いや、リリア個人でもやってあげたいの」リリア。
「すみません。お手数です」ダカットが言う。
「この件は時間があるのでゆっくり準備していきましょう。 それで… 今すぐ掃除用のホウキを調達してきてください。一王国民が掃除もできなくて困ってますよ勇者さん」コトロが言う。
「あ、はぁぃ…」リリア。
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