勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
上 下
255 / 517

【128話】 連休の前に

しおりを挟む
Day 8
休日返上で補給部隊のために魔物を掃除するリリア達。
「今日が終われば二連休!」がリリア達掃除メンバー30名の合言葉。
「リリアをバカにしやがってぇぇーーー」っと当たるを幸い大暴れで魔物を倒しだしたリリアは…
あっという間にバテていた…
もともと弓士だ、剣を力いっぱい振り回したら体力が持たない、当然…
「え?… もうへばったの?」ペコが驚いている。
「だって… あたし、レンジャーだよ… ちょっと休憩入れよう…」
開始から30分経っていないのにリリアはゼィゼィと肩で息をしている。
「じゃ、余計な事するなよ、ヘボ勇者」ペコの呟きを聞いてオフェリアは苦笑い。


「補給部隊が戦役指定区域まで行ったら今日は終わろう。皆がんば!」
午後に入ってリリアは激励しながら掃除を進める。荷物を奪われたこともあってポーション類が足りていない。戦場が近くなりゾンビや死霊の騎士、クリエートされ制御不能となったスケルトン兵団等、動植物とは違って生命に憎悪し殺しに特化された連中相手に消耗戦が続く。
ゾンビも魔物類だがもともと兵士や村人なのだ、それを考えると数多く倒しているうちに精神的に重くなる。
さらに長く続いている国境の争いで戦場荒らし狂が出だした。

戦場荒らしは武力衝突の犠牲者から金品、武具を漁っていく連中だ。金のためならなんでもるす。
冒険者の間では議論になるところだが、魔物からのドロップを拾うのは冒険者の当然の権利。死者から戦利するのは冒涜とされている。
戦場漁り狂は、死体を漁り続けるあまり、怨念に取り付かれるか魔物の悪気に当たり続け狂気化した者達。殺して死体漁りをする欲求に取り付かれている。人並みの知恵があるのでやっかい。漁りが居る!とか呼ばれている。
リリア達はイヤリングの通信を封鎖して行動中。
「付近の冒険者。ルーダリア軍の通信の邪魔だ、ただちに通信を中止せよ!」
リリア達が通信すると注意される。こっちはお前らのために休み返上で戦っているんだぞ!
言ってやりたいが我慢する。リリアは既にイエローカードを貰っているのだ、これ以上目を付けられたくない。
村の見栄とゴマすりのために部隊より先回りして掃討を続けるリリアと一同。


「冒険者諸君、補給部隊は無事、指定区域に入った。感謝する」
軍の補給部隊と護衛隊が合流した。これでリリア達のお役目ごめん。
「よし!皆!成功よ!ミッションコンプリート!今日は帰ろう!二連休よ!」
リリアが喜びの通信を各班に伝える。
「冒険者、引き続き通信は控える様に」ルーダリアの勇者はルーダリア軍から注意される。
補給部隊と軍が合流した時、リリア達は付近で沸いている魔物と大乱闘中だったが、管轄外とばかりに軍は礼だけいうと引き上げていった。


「囲まれた!突破するよ!突破!」リリアが必死に叫び剣を振るう。
「リリア、道は左手よ、西!村は背後、そっちじゃない」ペコが呼び止める。
「オフェリアとココアとはぐれたよ!こっちにいたはず」
「先輩!まずは道まで戻って安全を図るっす!自分達も危険っす!」ブラックが叫ぶ。
掃討を始めたことにより、藪蛇になったようだ。ウジャウジャと魔物が出現し村に戻ろうとしたリリア達の退路が断たれている。
連日の疲れもあり、ポーションが足りていない事もあり、相手がスケルトン兵団等戦闘集団になった事もあり、あっという間に散り散りになる。
「各班どこなの?状況は?オフェリア、ココアどこ?」リリアが通信する。軍の使用制限等知った事か!こっちは命かかってんだ!
「こちらローズ… ガルト班は現在地… 名班を脱落… 囲まれ… タバサは… にて… が負傷…」
皆混乱しながら一斉に報告しだした。全然詳細不明。
「冒険者、通信は許可できない。直ちに中止せよ」
何がなんだからわからない、もとより、ゾンビ群、ソールイーター、デスナイト、囲まれて乱戦中だ。状況報告させたものの、リリアだって頭に入ってこない。
「もう、枯渇しそうよ、枯れてきた」さすがにペコの魔力も尽きてきた。
「オフェリア!!ココアぁ!どこなの!返事してーー!」リリアは絶叫しながらゾンビの群れの中で奮戦している。
「先輩、ホーリーライトかけるっす!落ち着いて!ペコ姉貴、魔力回復っす!少し持たせるっす」ブラックも疲れが見える。リリアと一緒にゾンビと格闘中。
「リリア!そっちじゃないって言ってんじゃん!方向音痴!」
「だって、二人を置き去りにできなよ!!オフェリア!!ココア!応えてぇぇ!」
「先輩、危険過ぎるっす、オフェリア姉はポーション持ってたっす。ココア姉はバードだから魔力は持つっす。まずは立て直すっすよ!」
意思が合わないまま乱闘中。
”どっごーーーーん!”
物凄い音がするので振り返るとペコが爆炎を唱えている。
「アホ巨乳!皆を殺す気!考えろ!あの二人は自分でなんとかするでしょ。私、道までは耐えるから、素直に逃げるのよ」
ペコが猛火を上げて背後に道を作っていく。それに続いて道に出るしかなさそうだ。
「こちらリリア。全員今朝の集落まで撤退!こちらはオフェリアとココアが行方不明。誰か見かけたらお願い!」
「リンガー…了解… も了解… 班も… 不明…」
「付近の冒険者、ここはルーダリア軍の戦役指定区域だ。ただちに通信を止めよ。」

「オフェリア!ココア!集落で待ち合わせよ!」
リリアも森の中に叫びながらペコについて道まで急ぐ。


「オフェリア、ココア、フェルナンド、アリスとローズ班全員行方不明ね…」
集落まで戻ってきたリリア達。脱落と行方不明者が多数。負傷者も多数。っと言うか負傷していない者はいない。重傷か軽傷か…
皆必死で戻って来た。よく戻れた、リリアも震えが止まらない。

「皆… あたし… お金あるの… これでこの集落の人から薬草を買い取って。皆の残ったポーションをあたしにちょうだい」皆の顔を見ながらしばらく黙っていたリリアが言い出した。
「おまえ、まさか探しにいくのか?」聞き返される。
皆がリリアの顔を見つめる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。  しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...