勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【96.5話】 年末の帰郷 ※わずかに前の話し※

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「帰って来たか、早かったんだな」
リリアが教会でゼフと修道女に挨拶をしていると、アランがやってきた。
リリアは年末、ウッソ村に帰郷している。事前に手紙を教会に出したのでアランも村人も今日、リリアが村に戻ることは知っているはず。
リリアはレンタホースにお土産を積んで戻ってきた。
「アラン、来たわね。お久しぶり、今日もあなたにご加護がありますように」
「色々面白話が聞けそうだな… まずは墓参りしてこいよ」アランが笑っている。


リリアは教会の裏手に。
天気が良く、ガウとメルのお墓が仲良く並び、競う様に日差しを受けている。
「ただいま、父さん母さん、リリア戻りましたよ。勇者の娘だしフリートまで行って勇者発祥とされる都に行って勇者ルーツを見てきたよ。お見上げね」
リリアはお土産屋で買ったキーホルダーをガウとメルのお墓に供える。
“勇者”と“I love 勇者”と書いてある。
「国によって勇者の扱いが違うのね… それよりも、単純に魔物といっても複雑な物語があるのね… フリートの村でマンティコアが人を襲っていてね、でも元々はロガルドって人だったのよね…」
フリートであった出来事を報告する。仲間と旅して、見分を広め楽しくもあり、魔物を退治したら勇者なのかと言うと、そうでもない複雑な経験。
「でも、あたしってば、村を守って名誉市民になったのよ」
フリート帝国からもらった名誉市民のメダルを供える。
お墓を掃除してあげる、お墓、嬉しそう。
「……… よし、父さん、母さん、リリアは行くね」


リリアは夕方まで村ブラ。山に入って、鹿でも獲ってこようかと思ったけど、人が来てちょこちょこ挨拶になる。
「たまに戻って来て… 何もわざわざハンティングもなかろう」とゼフも穏やかに言う。

教会でディナータイム。
前回同様、ゼフ大好物の肉鍋とサイドメニューをリリアが作る。
お食事にはアランも呼んでいる。そろそろ来るだろう。
出汁と香辛料の入ったスープにザクザク切った野菜とお肉が入る豪快リリア料理。
シュエルノをはじめ、修道女達も気持ちお手伝い。まぁ、ほとんど、リリアの帰郷と鍋料理にエキサイトして周りをソワソワウロウロしているだけ。

「ん?誰か来たわね。シュエル、アランだと思うから、ここに通して」
礼拝所の扉が開く音がした、恐らくアランが来たのだろう。
「ちょうど、今出来上がるとこよ。席に座って。何か飲むでしょ?… お!」
仕込みをしていたリリアが振り返って少し驚いた。
「誰かな?…」
アランが女性と立っている。整った顔立ちの活発そうな女性。
アランは妙な感じの表情をしている。
「あぁ… あぁ… ゴホン… いや、報告遅くなったが、俺も今度結婚することに決めてさ… リリア、クレナだ。クレナ、これが噂のウッソ村出身の勇者リリアだ」
「わお!! おめでとうじゃない!!お二人さん!」
ゼフも良い知らせと香りに誘われて食堂にやってきた。


皆で囲むディナーテーブル。料理が進み、飲み物も進み、話も弾む。
「アランは独身貫くのかと思ってたよ」リリアが笑う。
「村長も継がないといけないしな。クレナは冒険者ギルメンしていた時に一緒のギルドにいたメンバーなんだ。と、言ってもバースタッフ兼サポートメンバーでね、戦闘に参加した事はほとんどない。料理が出来るし申し分ない。それに、俺もシェリフを続けるからにはメルおばさんみたいに薬草作りが出来る人が良いと思ってたから、クレナはずっとパーティーに付き添って料理と治療担当してたから素晴らしい相手だ」アランがデレデレしている。
「うは… アランからのろけを聞かされるなんて思ってもみなかったけど。良かったじゃない。農作業はケガするから薬草作りは大切ね」リリアも嬉しい。
「アランって無茶なところがあるでしょ?ケガが耐えなくて結構面倒みたのよ」
キビキビと動きカラカラと笑うクレナの動作はバー・ガール独特の雰囲気がうかがえる。お似合い夫婦になりそうだ。


宴も一段落。テーブルをある程度片づけてゼフと修道女達は部屋に引っ込む。
「リリア、この後ウチに来い。今度はクレナのおつまみで飲もう」アランとクレナが誘ってくれた。
「いいわよ!リリアちゃんとクレナのサシで薬学について語り明かすわよ」
テーブルを拭くリリア。
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