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【72話】 山の中の狙撃
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翌日、日が昇ってから小屋を出発したリリア達。道は険しいが夕方までに寺院に着く時間は十分あるはず。昨晩は雨が降って雨漏りが凄かったが、部屋の中にテントを広げて寝ていた。
道は狭かったり危なかったりするが渓谷と川を見下ろしながらトレッキングを楽しむ。
昼ご飯を済ませどんどん進む。小雨が降ったり止んだりしていたが少しずつ晴れてきた。ペコが言うには廃寺院まで1時間無い程度のところまで来ているらしい。
林の中を小道が続いている。
「あ!!」オフェリアとおしゃべりしながら歩いていたリリアが短い声を上げた。
左肩に激痛が走る。
「矢よ!」「敵よ!」皆口々に叫びながら、傍の木陰等に身を潜めた。見るとオフェリアとペコが道を挟んだ左手の木陰に潜んでいる。リリアとアリスは右手にあった岩陰に潜む。
「矢よ!スナイパー」「どこから?」「一本はリリアの左肩に刺さってる」「1本はオフェリアの鎧で弾いた」「皆大丈夫?」「あたし、リリア怪我!」物陰に潜みながら確認しあう。
「ここからは何も見えない。ペコ、オフェリアそこから見える?」リリアは苦痛に顔を歪めながら岩から顔を出したが特に何も確認できない。木々が立っているだけ。肩を見ると鎖骨の上を矢が貫通している。
“右手に建物”オフェリアがサインを送ってきた。通信イヤリングは使わないらしい。
“距離100、高さ10”ペコからも確認できるらしい。
リリアはもう一度顔を出したがリリアの位置からは全然見えない。
「狙撃手二人この距離の精度だったら腕良いわよ、気を付けて」複雑でサインの出し方が分からないのでリリアが通信する。
“了解。怪我治せ。自分に任せろ”のサイン。
「リリア、貫通している矢を抜くわよ。痛いわよ」アリスが言う。
「Bタイプだよこれ」リリアが自分に刺さっている矢を確かめて言う。
「Bタイプ?なに?」アリスが聞き返す。
「矢の先に反しが付いてるのをそう、あたしは呼んでるの。ちなみに先がスッキリタイプはA」リリアが答える。
「冗談言えるなら大丈夫ね。肩の筋肉を切って取り出すか、矢の先を折って引っこ抜くかね。どっちも悶絶級よ。どっちにする?」サラっとアリスに聞かれる。
「どっちも嫌… 痛いよ…」リリアはベソをかいている。
「甘えてる場合じゃないでしょ。位置からすると矢を折る方が現実的ね。覚悟して。幻想薬飲む?」
「……飲まない。戦闘になるんでしょ?狙えないじゃない」
「プロっぽくなったじゃない。じゃこれでも噛んでて」
ボロ雑巾を口に押し込まれる。お願い、痛くありませんように…
「うぐぅぅぅぅ!!」
「ちょっと!動かないでよ、危ないじゃない!」
サバイバルナイフでゴリゴリと矢を切り始めたアリスに怒られた。軽く言うな!脳味噌破裂級の痛みなんだぞ!
「リリア、矢の反対側押さえてて」と言い、アリスはゴリゴリと矢を切っていく。
肩にゴリゴリの振動が伝わってくる。脳に刺さるような激痛。
「アリス、も、もうちょっと何とかならないの?…」リリアは雑巾を吐き出して訴える。耐えがたい!
「少しがまんしなさいよ!」アリスは雑巾をリリアの口に押し込み返す。
「ぅぅ… ぐうぅ…」ゴリゴリされてリリアは呻く。
「来たわよ!スケルトン兵団5体」
オフェリアとペコは交戦に入ったらしい。
「リリア、痛いわよ、我慢よ!」アリスは言うと、ボキっと矢をへし折ってブチっと肩から引き抜き治癒をする。
スケルトン5体と後から出て来た4体を退治したリリア達。連携したというより全員林の中を走り回って各個で撃破したと言ったところだろうか。
怪我してクタクタになったが、まだ問題が残っている。
「この砦ね。ペコ、これを忘れてたの?」リリア達は石作りの砦の付近に集まった。小さい砦だが石造りで見張り塔がある。狙撃はあそこからか。
「うっかりしてたけど、前は兵士が監視してただけだったのよ」ペコが説明する。
「兵士はいないみたい。置いていった兵力かな?」アリス。
「とにかく放っておいたら通りすがりに旅行者が射られるわね」
何とかしなければいけない、リリアが退治を買ってでる。
リリアはオフェリアを伴い、空きっぱなしのゲートから砦の中を確認したが、もう脅威となる物は無さそうだ。慎重に塔を窺うが、見通しの良い角度が無い。盾を持っていないオフェリアはリュックを盾代わりに移動している。
「やっぱりここしかないのね」リリアは皆と最初に射られた付近にもどった。
向こうから射線が通っているならこっちからも可能だ。
木陰から伺うと、塔の上にスケルトンの弓士が2体見えた。
「あれね、スケルトンにしては精確な射撃ね。さすが軍が使うだけあるわねぇ」呟くリリア。
「オフェリアが盾になってペコがファイアーかましてよ。動いて攻撃する物を機械的に射てくるだろうから、あたしが仕留めるわ」リリアの作戦。
「ファイアーボールは直線に飛ぶから塔に当たるわよ」ペコ。
「気を引いてくれたらいいから、後はあたしの射撃勝負よ」
アリスは治癒に疲れて待機中。
「父さん、国民を守るリリアに勇気を、母さん武器を手にするリリアにお許しを、神よ、正しき行いの我らにご加護を」
リリアはペンダントを手にルーティン。
「準備良い? よし、オフェリア、ペコ出て!」
道は狭かったり危なかったりするが渓谷と川を見下ろしながらトレッキングを楽しむ。
昼ご飯を済ませどんどん進む。小雨が降ったり止んだりしていたが少しずつ晴れてきた。ペコが言うには廃寺院まで1時間無い程度のところまで来ているらしい。
林の中を小道が続いている。
「あ!!」オフェリアとおしゃべりしながら歩いていたリリアが短い声を上げた。
左肩に激痛が走る。
「矢よ!」「敵よ!」皆口々に叫びながら、傍の木陰等に身を潜めた。見るとオフェリアとペコが道を挟んだ左手の木陰に潜んでいる。リリアとアリスは右手にあった岩陰に潜む。
「矢よ!スナイパー」「どこから?」「一本はリリアの左肩に刺さってる」「1本はオフェリアの鎧で弾いた」「皆大丈夫?」「あたし、リリア怪我!」物陰に潜みながら確認しあう。
「ここからは何も見えない。ペコ、オフェリアそこから見える?」リリアは苦痛に顔を歪めながら岩から顔を出したが特に何も確認できない。木々が立っているだけ。肩を見ると鎖骨の上を矢が貫通している。
“右手に建物”オフェリアがサインを送ってきた。通信イヤリングは使わないらしい。
“距離100、高さ10”ペコからも確認できるらしい。
リリアはもう一度顔を出したがリリアの位置からは全然見えない。
「狙撃手二人この距離の精度だったら腕良いわよ、気を付けて」複雑でサインの出し方が分からないのでリリアが通信する。
“了解。怪我治せ。自分に任せろ”のサイン。
「リリア、貫通している矢を抜くわよ。痛いわよ」アリスが言う。
「Bタイプだよこれ」リリアが自分に刺さっている矢を確かめて言う。
「Bタイプ?なに?」アリスが聞き返す。
「矢の先に反しが付いてるのをそう、あたしは呼んでるの。ちなみに先がスッキリタイプはA」リリアが答える。
「冗談言えるなら大丈夫ね。肩の筋肉を切って取り出すか、矢の先を折って引っこ抜くかね。どっちも悶絶級よ。どっちにする?」サラっとアリスに聞かれる。
「どっちも嫌… 痛いよ…」リリアはベソをかいている。
「甘えてる場合じゃないでしょ。位置からすると矢を折る方が現実的ね。覚悟して。幻想薬飲む?」
「……飲まない。戦闘になるんでしょ?狙えないじゃない」
「プロっぽくなったじゃない。じゃこれでも噛んでて」
ボロ雑巾を口に押し込まれる。お願い、痛くありませんように…
「うぐぅぅぅぅ!!」
「ちょっと!動かないでよ、危ないじゃない!」
サバイバルナイフでゴリゴリと矢を切り始めたアリスに怒られた。軽く言うな!脳味噌破裂級の痛みなんだぞ!
「リリア、矢の反対側押さえてて」と言い、アリスはゴリゴリと矢を切っていく。
肩にゴリゴリの振動が伝わってくる。脳に刺さるような激痛。
「アリス、も、もうちょっと何とかならないの?…」リリアは雑巾を吐き出して訴える。耐えがたい!
「少しがまんしなさいよ!」アリスは雑巾をリリアの口に押し込み返す。
「ぅぅ… ぐうぅ…」ゴリゴリされてリリアは呻く。
「来たわよ!スケルトン兵団5体」
オフェリアとペコは交戦に入ったらしい。
「リリア、痛いわよ、我慢よ!」アリスは言うと、ボキっと矢をへし折ってブチっと肩から引き抜き治癒をする。
スケルトン5体と後から出て来た4体を退治したリリア達。連携したというより全員林の中を走り回って各個で撃破したと言ったところだろうか。
怪我してクタクタになったが、まだ問題が残っている。
「この砦ね。ペコ、これを忘れてたの?」リリア達は石作りの砦の付近に集まった。小さい砦だが石造りで見張り塔がある。狙撃はあそこからか。
「うっかりしてたけど、前は兵士が監視してただけだったのよ」ペコが説明する。
「兵士はいないみたい。置いていった兵力かな?」アリス。
「とにかく放っておいたら通りすがりに旅行者が射られるわね」
何とかしなければいけない、リリアが退治を買ってでる。
リリアはオフェリアを伴い、空きっぱなしのゲートから砦の中を確認したが、もう脅威となる物は無さそうだ。慎重に塔を窺うが、見通しの良い角度が無い。盾を持っていないオフェリアはリュックを盾代わりに移動している。
「やっぱりここしかないのね」リリアは皆と最初に射られた付近にもどった。
向こうから射線が通っているならこっちからも可能だ。
木陰から伺うと、塔の上にスケルトンの弓士が2体見えた。
「あれね、スケルトンにしては精確な射撃ね。さすが軍が使うだけあるわねぇ」呟くリリア。
「オフェリアが盾になってペコがファイアーかましてよ。動いて攻撃する物を機械的に射てくるだろうから、あたしが仕留めるわ」リリアの作戦。
「ファイアーボールは直線に飛ぶから塔に当たるわよ」ペコ。
「気を引いてくれたらいいから、後はあたしの射撃勝負よ」
アリスは治癒に疲れて待機中。
「父さん、国民を守るリリアに勇気を、母さん武器を手にするリリアにお許しを、神よ、正しき行いの我らにご加護を」
リリアはペンダントを手にルーティン。
「準備良い? よし、オフェリア、ペコ出て!」
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