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【59話】 リリア危機一髪
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石切り場再開の地鎮式掃除メンバーに参加したリリア達。
リリアは重い鉄の盾を担ぎ、胸当てをし、ヘルメットを被り山を登る。
とんでもない重量だ。オフェリアも重そうに担いでいる。
掃除隊の編制は以下
カリオカ村のシェリフ10名
自警団10名
雇われメンバー10名(リリア達等の雇われ冒険者)
シャーマン3名(祈祷師と従者)
馬車二台(機材・食事・テント等を積んだ) バリスタ(固定式弓射機)二機
結構大人数
雇われ冒険者10名は、不法集合罪になりそうだが、村で特別危険指定魔物のバフダン岩を掃除する名目上特に許されるらしい。
ミーティングによると、石切り場とそこから山奥は魔物が多くなる。特にバフダン岩、ストーンゴーレム等が多くなるらしい。
シェリフ達が中心になり、バフダン岩等は爆発ありきとバリスタで撃ち抜いて倒していくというのだ。リリア達は戦闘というより、盾でしっかり壁を作って爆発を防ぐ係り。
故に、リリア達等はデカく重い鉄の盾等を装備させられた。想像していた掃討作戦と違うが、特に問題は無い。が、とにかく爆発に備える装備が重い。もちろんそれぞれ自前の武器も携帯している。
盾やヘルメットには“いのちだいじに”と書かれている。
雑魚魔物を倒しながら石切り場まで登ってきた。
「わぁ、思っていたより広いのね」リリアとオフェリアは顔を見合わせた。
視界が開けた場所には岩が階段の様に切り取られ結構な崖になっている。
崖が扇状に広がりちょっとした規模だ。
さっそくバフダン岩、ストーンゴーレムがウロウロしている。動きは遅いが目玉が飛び出るくらい危険だ。
とりあえず、作業小屋や寝泊まりする小屋を制圧して、拠点を作らないといけない。
掃除準備開始となった。
ストーンゴーレムは力が強く、体力バカだが爆発するわけではない、メッチャ危険なバフダン岩からやるらしい。
これがなかなか大変。
まずバリスタだが、低級でしょぼい。しかも、強い衝撃を与えなければいけないので、矢というか棒というか… とにかく矢が重い鉄で出来ているのだ。
矢を飛ばすバリスタが鉄棒を射出できるように改造してあるのだが、10mと飛んでいない。有効射程距離となれば7m有るか無いか…
しかも精度が悪いので5m程度まで接近しないと当たらないようで、壁係りはバフダン岩まで4m前後の距離まで接近させられるのだ。正気の沙汰では無い!!
「よし、準備できた!ガンガン行こうぜ」っと“いのちだいじに”ヘルメを被ったリーダーが鼓舞してくる。いやいや、命大事にいきましょうよ。
機材係とシャーマン達は後ろで控え、盾を構えリリア達が隊列を作って進む後ろをバリスタがガラガラと追っかけてくる。
「おい!そこのデカい女!おまえ遅れてるぞ!列を乱すなぁ!」
そんな事言われても、もう数メートル先の岩はこっちを窺っている。リリアも目が合った。恐ろしい。
「やつは様子を見ているぞ。今だ接近!ガンガン行くぞ!」命令が下る。
「いやいや、命大事でしょ」ビビりながら接近。
「バリスタよし」
「壁準備よし」
「目標よし」
「隊長、発射準備出来ましたぁ」
「用意、って!!」
“ブン!”
盾の陰に隠れたリリア達の上を鈍く空気を揺すりながら矢が飛んで行った。
「………… あれ?爆発は?…」リリアとオフェリア、盾の陰で顔を見合わせる。
「隊長、初弾外れましたぁ」
“何だ!この距離で外すのかよ!”
リリアが少し盾から覗くと、1mも無い場所でバフダン岩と目が合った。
危険、恐怖、絶望。
一瞬の出来事だった。
リリアは様子見の岩とかつてない無い距離で目を合わせたのだ…
“あ!あたし、やっちゃった。こん距離で…”
岩はみるみる眉を怒らせていく…
恐らく瞬間的な出来事だっただろうが、リリアにはスーパースロー再生(秒間960フレーム程度)に見えていた。
因みに蠅は秒間900フレーム見えているらしい。人間は30フレーム。
“父さん、母さん、ごめんなさい、あたし今度こそ…”
その時、歴史は動いた…
リリアの生存本能が働いたのだろうか、一瞬の判断、いや反射運動…
“キラン!”
リリアはウィンクしてちょっと下を出して微笑んだ。テヘペロ的な感じ。
いや、下では無かった、舌だ。
下を出したらとんでもない事だ。痴女だ。今は下を出している場合ではないのだ。
それに下を出してテヘペロとか、完全に「テヘペロじゃねぇよ」レベル。
リリアには岩の歪んだ眉がみるみる解けて、笑みに変わっていくのがスーパースローで見えていた。
そして最後ちょっと“ポッ”と岩は照れた。
「今よ!」リリアはサッと再び盾の陰に隠れる。危なかったぁ!!
「そこの女ぁ!!バカかおまえは!! 死にてぇのかあぁぁ!」
凄い剣幕で怒鳴られる。これは甘んじて受けるリリア。オフェリアは隣で目を丸くしている。
「よし、二機目。 用意!って!」
また“ブン”っと鉄棒が頭を飛び越えていく。
「ごっ!」と鈍い音がし、一瞬間をおいて
「ばっしゃーーーーーん! バリバリバリ!」岩が弾け、石の飛礫が盾を襲う。
「……………」
初体験のリリアとオフェリアは完全に目が点。
「… リリアこれいくらで引き受けてるの?」盾の陰でオフェリアは言う。
「日当が8時間で160Gに岩処理一体に付き8G。ちなみにバフダン岩処理資格者は日当240Gの手当が12Gよ」リリアが答える。
「こんな危険なのに安くない?」
「だって、あたし普通は日当72Gくらいよ。しかもそれは冒険者ギルドの人間としてね。勇者としてはただ働きよ」
「勇者なんて辞めなさいよ、そのうち本当に神殿に行くわよ。割に合わない」オフェリアはちょっと怒っているっぽい。
「ちょっと驚いたけど、何とかなるわよ。なんだったらダラダラやってオーバータイム付けてもらおう、稼ぎ時よ」笑いながらも身を固くしているリリア。
「よし、次。ガンガン行こうぜ!」
“いのちだいじに”ヘルメの男が後ろで叫んでいる。
リリアは重い鉄の盾を担ぎ、胸当てをし、ヘルメットを被り山を登る。
とんでもない重量だ。オフェリアも重そうに担いでいる。
掃除隊の編制は以下
カリオカ村のシェリフ10名
自警団10名
雇われメンバー10名(リリア達等の雇われ冒険者)
シャーマン3名(祈祷師と従者)
馬車二台(機材・食事・テント等を積んだ) バリスタ(固定式弓射機)二機
結構大人数
雇われ冒険者10名は、不法集合罪になりそうだが、村で特別危険指定魔物のバフダン岩を掃除する名目上特に許されるらしい。
ミーティングによると、石切り場とそこから山奥は魔物が多くなる。特にバフダン岩、ストーンゴーレム等が多くなるらしい。
シェリフ達が中心になり、バフダン岩等は爆発ありきとバリスタで撃ち抜いて倒していくというのだ。リリア達は戦闘というより、盾でしっかり壁を作って爆発を防ぐ係り。
故に、リリア達等はデカく重い鉄の盾等を装備させられた。想像していた掃討作戦と違うが、特に問題は無い。が、とにかく爆発に備える装備が重い。もちろんそれぞれ自前の武器も携帯している。
盾やヘルメットには“いのちだいじに”と書かれている。
雑魚魔物を倒しながら石切り場まで登ってきた。
「わぁ、思っていたより広いのね」リリアとオフェリアは顔を見合わせた。
視界が開けた場所には岩が階段の様に切り取られ結構な崖になっている。
崖が扇状に広がりちょっとした規模だ。
さっそくバフダン岩、ストーンゴーレムがウロウロしている。動きは遅いが目玉が飛び出るくらい危険だ。
とりあえず、作業小屋や寝泊まりする小屋を制圧して、拠点を作らないといけない。
掃除準備開始となった。
ストーンゴーレムは力が強く、体力バカだが爆発するわけではない、メッチャ危険なバフダン岩からやるらしい。
これがなかなか大変。
まずバリスタだが、低級でしょぼい。しかも、強い衝撃を与えなければいけないので、矢というか棒というか… とにかく矢が重い鉄で出来ているのだ。
矢を飛ばすバリスタが鉄棒を射出できるように改造してあるのだが、10mと飛んでいない。有効射程距離となれば7m有るか無いか…
しかも精度が悪いので5m程度まで接近しないと当たらないようで、壁係りはバフダン岩まで4m前後の距離まで接近させられるのだ。正気の沙汰では無い!!
「よし、準備できた!ガンガン行こうぜ」っと“いのちだいじに”ヘルメを被ったリーダーが鼓舞してくる。いやいや、命大事にいきましょうよ。
機材係とシャーマン達は後ろで控え、盾を構えリリア達が隊列を作って進む後ろをバリスタがガラガラと追っかけてくる。
「おい!そこのデカい女!おまえ遅れてるぞ!列を乱すなぁ!」
そんな事言われても、もう数メートル先の岩はこっちを窺っている。リリアも目が合った。恐ろしい。
「やつは様子を見ているぞ。今だ接近!ガンガン行くぞ!」命令が下る。
「いやいや、命大事でしょ」ビビりながら接近。
「バリスタよし」
「壁準備よし」
「目標よし」
「隊長、発射準備出来ましたぁ」
「用意、って!!」
“ブン!”
盾の陰に隠れたリリア達の上を鈍く空気を揺すりながら矢が飛んで行った。
「………… あれ?爆発は?…」リリアとオフェリア、盾の陰で顔を見合わせる。
「隊長、初弾外れましたぁ」
“何だ!この距離で外すのかよ!”
リリアが少し盾から覗くと、1mも無い場所でバフダン岩と目が合った。
危険、恐怖、絶望。
一瞬の出来事だった。
リリアは様子見の岩とかつてない無い距離で目を合わせたのだ…
“あ!あたし、やっちゃった。こん距離で…”
岩はみるみる眉を怒らせていく…
恐らく瞬間的な出来事だっただろうが、リリアにはスーパースロー再生(秒間960フレーム程度)に見えていた。
因みに蠅は秒間900フレーム見えているらしい。人間は30フレーム。
“父さん、母さん、ごめんなさい、あたし今度こそ…”
その時、歴史は動いた…
リリアの生存本能が働いたのだろうか、一瞬の判断、いや反射運動…
“キラン!”
リリアはウィンクしてちょっと下を出して微笑んだ。テヘペロ的な感じ。
いや、下では無かった、舌だ。
下を出したらとんでもない事だ。痴女だ。今は下を出している場合ではないのだ。
それに下を出してテヘペロとか、完全に「テヘペロじゃねぇよ」レベル。
リリアには岩の歪んだ眉がみるみる解けて、笑みに変わっていくのがスーパースローで見えていた。
そして最後ちょっと“ポッ”と岩は照れた。
「今よ!」リリアはサッと再び盾の陰に隠れる。危なかったぁ!!
「そこの女ぁ!!バカかおまえは!! 死にてぇのかあぁぁ!」
凄い剣幕で怒鳴られる。これは甘んじて受けるリリア。オフェリアは隣で目を丸くしている。
「よし、二機目。 用意!って!」
また“ブン”っと鉄棒が頭を飛び越えていく。
「ごっ!」と鈍い音がし、一瞬間をおいて
「ばっしゃーーーーーん! バリバリバリ!」岩が弾け、石の飛礫が盾を襲う。
「……………」
初体験のリリアとオフェリアは完全に目が点。
「… リリアこれいくらで引き受けてるの?」盾の陰でオフェリアは言う。
「日当が8時間で160Gに岩処理一体に付き8G。ちなみにバフダン岩処理資格者は日当240Gの手当が12Gよ」リリアが答える。
「こんな危険なのに安くない?」
「だって、あたし普通は日当72Gくらいよ。しかもそれは冒険者ギルドの人間としてね。勇者としてはただ働きよ」
「勇者なんて辞めなさいよ、そのうち本当に神殿に行くわよ。割に合わない」オフェリアはちょっと怒っているっぽい。
「ちょっと驚いたけど、何とかなるわよ。なんだったらダラダラやってオーバータイム付けてもらおう、稼ぎ時よ」笑いながらも身を固くしているリリア。
「よし、次。ガンガン行こうぜ!」
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