勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【57.5話】 悪堕ち案山子バーサーカー ※少し前の話し※

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リリアとルーダの風メンバー4人は城外で剣技の練習をしていた。

リリアモデルの両手剣を時々練習しているのだ。他のギルメンと練習することもあれば、運動がてらルーダの風メンバーで行うこともある。
大通りを外れた、田畑の近い原っぱで練習している事が多い。
ニャン、ピョンは亜人としてなかなか身体能力が高い。特にニャンはバーでウェイトレスをさせておくのはもったいないほど動ける。リリアには羨ましい限り。
木刀、木盾を持たせたりして相手をしてもらう。
剣の腕前に関していえばコトロよりリリアは上のよう。最もコトロはあまり参加せず、切り株等に腰を下ろしポロンポロンとリュートの演奏をしている。

「そろそろ休憩しようか?」リリアが声をかけた時に農夫が走ってきた。
「おーい、あんたら冒険者ギルドの連中か。ちょっと手を貸してくれ」慌てている。
話を聞くと、このちょっと先で動く案山子が、悪堕ちして案山子バーサーカーになって暴れているそうだ。

案山子バーサーカー
動く案山子の悪堕ち版。スクロールでクリエートするか、案山子に付呪すると案山子が動き回り指定範囲の田畑の守備をしてくれる。攻撃力と言えるものはほとんどなく、動物、子供を追い払える程度。単純な命令に従うが、指定範囲を出て迷子になったり、大したことない連中。もちろん命令によっては田畑以外で行動、何か悪事を行えるが、所詮攻撃力が無いので子供騙し程度。
どういうわけか、悪い気に触れたりすると、悪堕ち案山子バーサーカーになってしまうが、詳しい原因は分かっていない。バーサーカーになったからといって、大した能力は無い。
あまり長い期間の使用は推奨されず、1シーズンで解呪するのがおすすめだが、付呪、スクロール、解呪、それぞれ結構な値段がするため、長期運用したがる農家が多い。


「あちゃ~、完全にへのへのもへじのへが逆さになっちゃってるねぇ」
リリア達が駆け付けると2体の案山子がバーサークしている。
と、書くと怒ってそうだが口のへも逆なので口元は笑っている。でも眉は完全に怒っている。何とも言えない大胆不敵な笑み。悪魔の微笑。
結局攻撃力は大した事なく子供には危険だが、大人ではなかなか死亡するようことはないので放っておいても良さそうだが所構わず跳ね回り、両腕スピンで作物を荒らすので放ってはおけない。しかも、他人の畑でも荒らそうものなら訴えられかねない。

「早く何とかしてくれ!畑がメチャクチャだ!」
農夫が叫ぶ。畑守も2名程きて捕まえようとするが、一本足でハイジャンプ出来、動きだけは軽快だ。
見ると正気の案山子が侵入者と判断して立ち向かって殴り合いしているが、バーサーカーの方が強いらしい。
「ニャン!ピョン!行くわよ!コトロは… とりあえずリュート演奏よ!」リリアが畑に躍り込む。
「言われなくても、演奏してます」コトロ。
「おい、そいつは高いんだぞ!壊すな!何とか取り押さえてくれ!」農夫が叫ぶ。
「何よ、一度悪堕ちしたら更生難しいんでしょ!」リリアは怒鳴りながらバーサーカー達に挑む。


実際取り押さえるのは結構大変だ。素早いのもあるが、捕まえる方は農作物を避けないといけない。やつらはピョンピョン跳ね、気ままにスピンしては作物をブチブチと荒らしまわっている。リリア、ピョン、ニャンと畑守2人+正気の案山子で追い回す。

「リリたん、そっち行ったニャン!」
「ピョン!そいつどうにか!」
「こら!そこのデカ女!作物荒らすな!」
「畑守さん、そっちそっち」
「ジャンプなら任せるピョン!」
「おい、あんた楽器演奏してないで、手伝えよ」
「すみません、演奏で集中力高めているのです、黙っていてください」
「地主、自分の土地でしょ!あんたが手伝いなさいよ!」
「おまえ、生意気だな!どこのギルドだ。俺は結構顔がきくんだ、ギルマスに訴えるぞ!」
「申し遅れましたが、私、冒険者ギルド・ルーダの風、ギルドマスターのコトロです。ちょっと演奏の邪魔なので黙っていてもらえませんか!」
「顔がデカいか広いか知らないけど、手伝わないなら黙っててよ!」
とにかく、大騒ぎ。何故かリリアだけ、リリアvsバーサーカー&地主。

「いったあぁい…」リリアは思わぬ方向からバッカリと顔面を殴られた。
あまりに作物を踏み散らかすので正気案山子がリリアに敵判定を出したようだ。
ここからリリアvsバーサーカー、地主&正気案山子の構図。
リリアはバーサーカーを追いかけながら、正気案山子に追い回され、地主と何やら口論している。良くわからない状態だが、結構無駄に凄い才能。

そのうち、男共が静かになった。
何かと思って見ると、上装備にスカート姿のラビに目が釘付け。
ラビは「ジャンプならお任せピョン」を連呼しながら、ご自慢の跳躍力で純白パンティーを大サービス中。すっかりバーサーカーに夢中なご様子。
見ると正気バーサーカーもリリアを追い回すのを止めて、ラビをメッチャ見ている。
“案山子って男なのね…” リリアはちょっと感心。
「… あら…あらら…」
リリアが正気案山子を見ていると、みるみる様子が悪くなり…
“シャッキーン”とへのへのもへじのへが逆転してしまった。
ラビのパンツに興奮を覚えたか、真面に働くのが嫌になったのか…
とにかく、正気が職場放棄して悪堕ちしたのでこれでバーサーカーは三体。
「おまえら何やってんだ! もうこれ以上はいい、始末しろ!被害甚大だ!」地主が怒鳴っている。
「最初っから退治させなさいよ!首を落としてやるわよ」リリアは言うと
「勇者リリア参上!商人ギルド・リアルゴールと工芸ギルド・ハンズマンの共同開発と無償サポートにより授かった勇者リリアモデル(女性版)のこの剣で成敗してくれる」
呪文を唱えて剣を抜いた。
男達は“こいつ案山子相手に何言ってんだ?”的な顔して見ていた。


リリア達は草むらにひっくり返っていた。息が上がって大汗したたる。
結局リリアが剣を振り回してもなかなか退治できず、むしろ危なくて下手に近寄れない。退治と言うより、作物の伐採中に衛兵達も駆けつけてようやく事が収拾した。

「何が退治してやっただ!お前の被害の方がすごい、1万Gの被害だ!」
「何よ!感謝して欲しいわよ!こっちは4人で4万Gの請求よ!」
リリアと地主の闘いはまだまだ終わらないようだ。
大通りではキャラバンが往来している。
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