勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
上 下
111 / 514

【56.5話】リリアポスターと人気 ※マッチ前日の話し※

しおりを挟む
「大丈夫よ、握手会のミーティングにはちゃんと広場に戻るから」
リリアはラビに言いながら自分対触手のイベントポスターを眺めながら街中を歩いている。どうやら、リリアは怒って試合やイベントをサボったりする気は無いらしい。ラビもそこは一安心。
「ラビ、こっちこっち、大通りを外れた方が面白いのよ」言いながら、落書きポスターを探して歩く。
今回は、女勇者が触手に絡まれる構図なので、下ネタ系が多いが、気合を入れて書き込まれていて「あはん、うふん」吹き出しが付いている。目には画鋲…
もうこの落書きと画鋲はパンにバターくらな定番となっているよう。
くだらないが、街中のちょっとしたイースターエッグ的な面白さと感心するほどの力作を見つけた時の妙な感動がある。リリアもラビも面白がりなからルーダ港の街を歩き回る。
落書き士、暇人達の才能の無駄使い…

「リリたん、あれあれ…」ラビがリリアの肩をつつく。
見ると、デレデレと鼻の下を伸ばした男が「リリ様ぁ」と言いながら、リリアのポスターを剥がして立ち去ろうとしている。手には何枚かポスターを手にしていてどうやら剥がして集めて回っているようだ。
「……… に、人気として喜ぶべきなのかしら… あれはあれで、何か迷惑な感じよね…」
世の中色んな人がいるようだ…

街中は収穫祭で大賑わい。買い物客だけではなく、収穫物の取引に合わせて大量の物資が港に届いていて村の収穫祭しか知らないリリアには目新しい。
「ちょっと、それ見せて」リリアが二人の男に声をかけた。
「リリ様のサイン入りポスターが手に入った!」と話し合っているのが耳に入って来たのだ。
「お!おう、リリ様はなかなかサインしないのでこれはレア物なんだぜ」
「お姉ちゃん、女冒険者か。リリ様のファンかい?こいつは価値あるぜ」
男達が得意げに差し出すリリアのサイン入りポスターを手に取るリリア、ラビも覗き込む。
ポスターにははっきりと“Lilia”とサインされていて”ルーダリア王国公認勇者 003/100”と書かれている。100枚限定なのか?もっともらしい捺印も…
「… 何だこれ、あたしこんなのサインしてないけど」
「え? 何だって?」男達。
「あ、いえいえ… ありがとう… これ、どこで買ったの?いくら?」リリアは返しながら言う。
お値段はちょっと良い食事にお酒がくっついてきた程度、何か中途半端。
ポスターに落書きするやつもいれば、持ってっちゃうやつ、勝手に売りさばいているやつがいるようだ。金になるなら何でもやりかねない。
「リリたん、あんなの作ってたピョン?」ラビに聞かれるがリリアだって知らない。
「… あたし知らないし、あれ、多分紛い物よ。 面白そうじゃない、行ってみようよ」
リリアとラビは唐揚げと野菜スティックを屋台で買うと、さっきの男達が告げた屋台の一画に足を向けた。


リリア達は屋台群を抜けて歩く。話だとだいぶん端っこのお店らしい。もっとも偽物商売だから堂々とは出来ないだろう。面白い物が見られそう、興味を惹かれる。
「この辺のはずよね…」二人は人混みの中をキョロキョロ。
「たぶんあの辺ピョン」
ちょっと物置の影になり小路に入る場所があって、その周辺にあるよう。
小路を曲がる…

「おい!お前らどこのギルドのもんじゃぃ!!」
「堅気の売人ギルドじゃねぇな」
「だれに断ってここにシマ張って、勝手にに偽のリリア、サイン入りポスターさばいとるんじゃぃ!!」
「てめぇら、リアルゴールドに喧嘩売っとんのかい!!」
5,6名の男が偽物業者をボッコボコにどつき回し最中。
屋台は斧で完全破壊、リリアポスターは引きちぎられている最中。
「……………」リリアとラビは目が点。

「なんだおまえらぁ!見世もんじゃねぇぞ!失せろ!」
「こいつらの仲間かぁ!あぁ!… じゃぁ、向こういっていやがれ!」
男達がリリア達を見つけて怒鳴り散らす。
「…あぁぁ… 美味しいキャロットビスケットのお店こっちじゃなさそうねぇ… ブー子」
「人気おかまバーは一本向こうの通りだったようピョ… だったようブー。リリ… リリオ君」
リリアとピョンは回れ右、帰っていく。

「… ピョン、見なかったことにしましょうね」
「… リアルゴールドもけっこうやばいピョン」
「まだ時間あるから、お茶して帰ろう」リリア。
おやつ時で各屋台から甘く美味しそうな香りが漂う。

「ところでピョン、おかま呼ばわりした分はご馳走してもらうわよ」
「ラビもリリたんからブー子呼ばわりされた分、おごりピョン」
しおりを挟む

処理中です...