勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【55話】 危険な組み合わせ

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今や伝説級となりつつリリアのほぼ全裸試合。
バー・ルーダの風に戻るとリリアは
「あたし、当分仕事と掛け持ちでどこか行くから。しばらくここにもルーダ港にも立ち寄らない」と。

もちろん触手に裸にされた事もリリアは恥ずかしかったが、もうそれはどうでもよい… わけではないが、リリアの性格上すでに大した事ではない。
リリアにしたら、“男一人、全裸の女性達に囲まれるならいざ知らず、大勢の男が女一人の裸に大騒ぎして、面倒くさい”と変に開き直っている。
顔を合わすといちいち話題にされ、同じような答弁の繰り返しにウンザリしているところ。

コトロをはじめ、ネーコとラビはリリアを止める。
皆リリアの事は認めるが、無謀なところがある。ゼロか百かみないなところが多々あり、突然無茶なことをやりかねない。
特に「ここに居たくない」といった理由で無計画に出かけていったら、リリアは二度とギルドに戻って来ないのではないか…
「リリア、わかりましたから、せめて出発からしばらくはペコとアリスと組んでください」コトロも説得するが
「ありがとう、でも大きなお世話でもあるのよ。頼むなら自分で頼むわ。だいたい二人共仕事に出て不在じゃない」リリアは断る。
「そんなに心配なら皆が付き添ったらいいじゃない。あたし、一度はこの四人でどこか行ってみたいの………… 嘘よ!冗談!皆バーの方がお似合いよ。何本気にしてんのよ。とにかく買い出しに行くから」リリアは相変わらずな感じだ。
「あ!リリたん、ラビも買い物あるから一緒に行くピョン」

収穫祭まで数日。商業区は賑わっている。
ラビは黙ってリリアの買い物に付いて行く。先ほどまでラビはリリアにそれとなく遠出を止めさせようと話しかけていたが、ニコニコ雑談していたリリアが口を尖らせて黙ってしまった。これ以上言ったら、怒って、意地でも言う事聞かないモードに突入するのがわかる。どうしようもない。

荷物を抱えたリリアが足を止めた。
「ピョンちゃん、あれ何なの?」リリアが指を差す。
広場に紅白の大きなテント。人だかりがしている。宣伝の大道芸人が道行く人に芸を披露して拍手を浴びている。子供達に大人気。
「あれ、サーカス。そっかリリたんはルーダ港に居たピョンね」
「サーカス?あれがサーカス?最近子供がサーカス、サーカスって… あれがサーカスなの?」リリアが聞き返し、ラビが頷く。
「あたし、食べ物か何かと思ってたけど… サーカスって何なの?」リリアが聞く。
「あのテントの中に客が集まり、人、動物、魔物の曲芸、魔法を披露して… とにかく驚くような事を見せるピョン」
「あの大きなテントにねぇ…」リリアは感心しながらテントに向かって歩き出した。


「あたし、出かける前にサーカスでバイトする!」
ギルドに戻って来るとリリアが言い出した。
“これまたいきなり… 何があった?” コトロとネーコがラビの顔を見る。リリアは続ける。
「サーカスのバックヤード見て来たのよ。魔物の世話とか、曲芸?のアシスタントとか楽しそう。数日バイトがあるそうよ。魔法も見れるし、すごいじゃない」
「… いや、リリア… サーカスは… それなら弓を使った方が…」
リリアとサーカスの組み合わせ… 何か危険な香りが漂う。皆の総意。
とんでもない事が起こりかねないコンビネーション。
「何よ、もうちょっと居ろって言ったり、出かけた方が良いって言ってみたり。出かけろって意味じゃない?サーカスよりは弓?… サーカスとあたしは危険?… あたしが危ない?… 何が言いたいのよ… じっとしてろ?少し休め?… もういいよ、大きなお世話よ… 明日朝早く出るから。今日はもうバーは呼ばれても手伝わない」

結局リリアは不機嫌になって二階に上がって行った。
自由過ぎて予測不能。ちっとも修道女をしていたと思えないほど制御不能。

スケジュールも空き、リリアはしばらく自由に過ごすようです。
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