105 / 517
【53.5話】 ある月初めの朝 ※少し前の話し※
しおりを挟む
「今日もあなたにご加護がありますように」
リリアが自室からバーに下りるとコトロがカウンターで掃除をしていた。
コトロも片づけをしながら挨拶を返す。
「リリア、何か食べるなら作りますよ」
「自分で作ろうかと思ったけど、お願いするわ。パンと卵料理お願い」
「はい」
「昨日もバーは遅かったね、ニャン子とピョン子はまだ寝てるんでしょ?」
「そうね、寝てますよ、二人とも」
「今日、買い物に出るんでしょ?あたしも一緒に行くわよ」
「うん、いいですけど… いいですよ」
「…… 何よ、不愛想ねぇ、朝ご飯まだなら一緒に食べたらいいじゃない」
リリアがカウンターを見ると、月初めに来る、仕事依頼情報とギルド情報が来ている。仕事依頼情報は週一くらいで更新情報が来るが、ギルド情報紙は月初めに来るのだ。
「月始めねぇ… 情報紙が来てるじゃない」リリアは手に取り目を通す。
しばらく、コトロのキッチンワークの音だけしていた。
「…… コトロ… ギルド・古のクリスタルロッドの… カトリーヌ、ベナール、ガイアって… これ読んだ?」
リリアは情報紙を読んでいたが顔を上げた。
「… そうですよ… リリアもここで何回も会っていますよ」言いながら調味料に手を伸ばすコトロ。パンの焼ける香りと卵料理の香りが満ちだした。
「昔、ここに所属してたんでしょ?」
「皆3年は一緒に出掛けましたね。ガイアは左利きの変則剣士で、幻の剣線って異名。カティはエンチャ、攻撃魔法、治癒魔法、クリエートが得意なオールラウンダー。料理も得意、勉強になりました。ベナールは黒い鎧に二刀流でしたが、自己回復の治癒魔法がすごくて、頼れる前線。動き回るのに邪魔なのに真紅のマントにこだわっていて、赤壁の異名。バーではモテていましたね。剣もトークも立つ男」
「…… 読んだのね」
リリアが再び視線を落とした先には、ギルドのお悔やみ・合同葬儀の欄がある。
全員ヴァルキリー神殿に旅立ってしまったのか…
月初めにはこれがある…
各ギルド、その他十数名が名を連ねる…
貴族とその親族、親類縁者が世襲で職につく世の中。経済力が無ければ、学校もなかなか行けず、商人にも技術者になる道も狭い。村から出てくる孤児は自由であることに己を見出し、失うもの無しの人生を突き進む。冒険者ギルド所属者はリリアも含め幼い時から孤児が多い。
「……… ねぇコトロ…」
「… 行方不明者欄ですよね? 見ましたよ、エーゲルとコーヘイ」
「今日はお店やるの?」
「多分開けますよ。買い物前に向こうのギルドに顔を出そうと思ってます」
「リリアも行くよ、知ってる仲だし」
ネーコとラビが起きてきた。仲良しコンビは起きる時間まで似ているらしい。
「朝のパンの香は素晴らしいニャン」
「コトたん、二人前追加ピョン」
ニコニコ挨拶をする。
「そんな時間だと思って全員分作ってますから」
雰囲気が良くない。ピョンがリリアの顔を見る”喧嘩中?と聞いているよう。
リリアが情報紙を二人にサッと見せると二人は静かにカウンターに着いた。
「ネーコはホットミルク、ラビは野菜ミックスジュースで良いですね?」
コトロは相変わらず向こうを向いて朝食の支度中。
リリアが自室からバーに下りるとコトロがカウンターで掃除をしていた。
コトロも片づけをしながら挨拶を返す。
「リリア、何か食べるなら作りますよ」
「自分で作ろうかと思ったけど、お願いするわ。パンと卵料理お願い」
「はい」
「昨日もバーは遅かったね、ニャン子とピョン子はまだ寝てるんでしょ?」
「そうね、寝てますよ、二人とも」
「今日、買い物に出るんでしょ?あたしも一緒に行くわよ」
「うん、いいですけど… いいですよ」
「…… 何よ、不愛想ねぇ、朝ご飯まだなら一緒に食べたらいいじゃない」
リリアがカウンターを見ると、月初めに来る、仕事依頼情報とギルド情報が来ている。仕事依頼情報は週一くらいで更新情報が来るが、ギルド情報紙は月初めに来るのだ。
「月始めねぇ… 情報紙が来てるじゃない」リリアは手に取り目を通す。
しばらく、コトロのキッチンワークの音だけしていた。
「…… コトロ… ギルド・古のクリスタルロッドの… カトリーヌ、ベナール、ガイアって… これ読んだ?」
リリアは情報紙を読んでいたが顔を上げた。
「… そうですよ… リリアもここで何回も会っていますよ」言いながら調味料に手を伸ばすコトロ。パンの焼ける香りと卵料理の香りが満ちだした。
「昔、ここに所属してたんでしょ?」
「皆3年は一緒に出掛けましたね。ガイアは左利きの変則剣士で、幻の剣線って異名。カティはエンチャ、攻撃魔法、治癒魔法、クリエートが得意なオールラウンダー。料理も得意、勉強になりました。ベナールは黒い鎧に二刀流でしたが、自己回復の治癒魔法がすごくて、頼れる前線。動き回るのに邪魔なのに真紅のマントにこだわっていて、赤壁の異名。バーではモテていましたね。剣もトークも立つ男」
「…… 読んだのね」
リリアが再び視線を落とした先には、ギルドのお悔やみ・合同葬儀の欄がある。
全員ヴァルキリー神殿に旅立ってしまったのか…
月初めにはこれがある…
各ギルド、その他十数名が名を連ねる…
貴族とその親族、親類縁者が世襲で職につく世の中。経済力が無ければ、学校もなかなか行けず、商人にも技術者になる道も狭い。村から出てくる孤児は自由であることに己を見出し、失うもの無しの人生を突き進む。冒険者ギルド所属者はリリアも含め幼い時から孤児が多い。
「……… ねぇコトロ…」
「… 行方不明者欄ですよね? 見ましたよ、エーゲルとコーヘイ」
「今日はお店やるの?」
「多分開けますよ。買い物前に向こうのギルドに顔を出そうと思ってます」
「リリアも行くよ、知ってる仲だし」
ネーコとラビが起きてきた。仲良しコンビは起きる時間まで似ているらしい。
「朝のパンの香は素晴らしいニャン」
「コトたん、二人前追加ピョン」
ニコニコ挨拶をする。
「そんな時間だと思って全員分作ってますから」
雰囲気が良くない。ピョンがリリアの顔を見る”喧嘩中?と聞いているよう。
リリアが情報紙を二人にサッと見せると二人は静かにカウンターに着いた。
「ネーコはホットミルク、ラビは野菜ミックスジュースで良いですね?」
コトロは相変わらず向こうを向いて朝食の支度中。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる