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【47話】 道なき道
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二台の荷馬車が武器を積み道なき山道を進む。山賊などに狙われぬようにいくつかのルートがあり、毎回変更しながら通る。出発した村から、街道を辿って国境を抜けるなら夕方前には確実に着く距離だが、今日は日没覚悟らしい。
二台の馬車にリリアを含め、6名の護衛、馬車主も武技に長けているようだ。大げさなようだが、遭遇する魔物の数からすると足りないくらい。
傭兵達は手練れだが、リリアの弓も劣らない、車上から魔物を射抜く。寄せられれば、他の者が接近戦を行い、距離のある相手をリリアが仕留めていく。こちらは猛者揃い、すぐにコツをつかみ連携しだした。
昼過ぎ、相変わらず馬車に揺られている。木々が多く涼しい。
しばらく馬車は川に沿って進んでいたが、小さな道にのなよう場所に出た。
道というより獣道に毛が生えたような道だ。馬車を停めて、馬車主がリリアに声をかけた。
「バンク、例の荷物を下ろせ。それとリリア、面白い体験をさせてやる、お前も荷物を担いで来い!」
このキャラバンのボスであるジャックと剣士バンク、リリアで手分けして、武器と牛肉を担いで、山道をちょっと歩く。どうやら前方に村があるらしい。
「… ジャック、あれって…」リリアが呟く。
「わかったか、ゴブリンの村だ」笑いながら答えるジャック。
ゴブリンの方でもこちらに気づいたようだ、村の方から何人かやって来た。
ゴブリン達が何やら言いながら寄って来るが、リリアには当然彼らの言葉はわからない。しかし、争いになるような感じではない。
リリア達の馬車はゴブリンの集落を縫うように進んでいく。
皆御馴染みといった感じ、馬車に寄って来る子供達にはお菓子を配る。
ゴブリン達に武器と食料を譲り、縄張りを通してもらっているのだ。
この一帯を通る時は必ず手土産を渡し、通行させてもらうらしい。いちよう整地されていて通りやすい上に魔物、賊も簡単には近づけない。ゴブリン達さえ納得してくれた安全で効率的な通り道。なるほど、こんな方法もあるのか!リリアは感心する。
安全な場所を通る間に、皆、車上にて交代で食事をとる。今日は日没過ぎに到着確定だ、昼ご飯休憩を取れない。馬の疲労をみながら進めるだけ進む。
「リリア、ゴブリンとは敵対するだけと思ってたろ」ジャックが言う。
リリアはコクコク頷く。
リリア自身はウッソ村周辺でゴブリンに会った事があるし、街で働くゴブリンを見かける。決して人間といがみ合うだけでは無いと知っているが、まぁ、おおかたの意見では同意だろうし、説明も長くなる、頷いておく。
「相手もこっちも適当に利益が折り合えば、争う事もない、どんな連中でも」
リリアは大きく頷く。リリアの考える善悪と生活する者の善悪とは決して一緒では無いのかも知れない。
“いったい、あたしが国民を守るとはどういう事なのだろうか?街で学校に行った人なら答えが出るものだろうか?”リリアは考える。
ゴブリンの縄張りを抜け、馬車はしばらく進む。
全員口数が減り、ピリピリしだした。
「…… いるね… 来るよ… 恐らく、賊」リリアが矢と弓を手にする、リリアのゴーストが囁くようだ。
「おまえ、いい感だ。一流のハンターになれるかもな」そうジャックはリリアに言うと、突然手綱を引き絞りながら叫んだ
「馬を返せ!賊だ!馬を守れ!」
二台の馬車が方向転換をするのと矢が降り注ぐのとが同時だった。
二台の馬車にリリアを含め、6名の護衛、馬車主も武技に長けているようだ。大げさなようだが、遭遇する魔物の数からすると足りないくらい。
傭兵達は手練れだが、リリアの弓も劣らない、車上から魔物を射抜く。寄せられれば、他の者が接近戦を行い、距離のある相手をリリアが仕留めていく。こちらは猛者揃い、すぐにコツをつかみ連携しだした。
昼過ぎ、相変わらず馬車に揺られている。木々が多く涼しい。
しばらく馬車は川に沿って進んでいたが、小さな道にのなよう場所に出た。
道というより獣道に毛が生えたような道だ。馬車を停めて、馬車主がリリアに声をかけた。
「バンク、例の荷物を下ろせ。それとリリア、面白い体験をさせてやる、お前も荷物を担いで来い!」
このキャラバンのボスであるジャックと剣士バンク、リリアで手分けして、武器と牛肉を担いで、山道をちょっと歩く。どうやら前方に村があるらしい。
「… ジャック、あれって…」リリアが呟く。
「わかったか、ゴブリンの村だ」笑いながら答えるジャック。
ゴブリンの方でもこちらに気づいたようだ、村の方から何人かやって来た。
ゴブリン達が何やら言いながら寄って来るが、リリアには当然彼らの言葉はわからない。しかし、争いになるような感じではない。
リリア達の馬車はゴブリンの集落を縫うように進んでいく。
皆御馴染みといった感じ、馬車に寄って来る子供達にはお菓子を配る。
ゴブリン達に武器と食料を譲り、縄張りを通してもらっているのだ。
この一帯を通る時は必ず手土産を渡し、通行させてもらうらしい。いちよう整地されていて通りやすい上に魔物、賊も簡単には近づけない。ゴブリン達さえ納得してくれた安全で効率的な通り道。なるほど、こんな方法もあるのか!リリアは感心する。
安全な場所を通る間に、皆、車上にて交代で食事をとる。今日は日没過ぎに到着確定だ、昼ご飯休憩を取れない。馬の疲労をみながら進めるだけ進む。
「リリア、ゴブリンとは敵対するだけと思ってたろ」ジャックが言う。
リリアはコクコク頷く。
リリア自身はウッソ村周辺でゴブリンに会った事があるし、街で働くゴブリンを見かける。決して人間といがみ合うだけでは無いと知っているが、まぁ、おおかたの意見では同意だろうし、説明も長くなる、頷いておく。
「相手もこっちも適当に利益が折り合えば、争う事もない、どんな連中でも」
リリアは大きく頷く。リリアの考える善悪と生活する者の善悪とは決して一緒では無いのかも知れない。
“いったい、あたしが国民を守るとはどういう事なのだろうか?街で学校に行った人なら答えが出るものだろうか?”リリアは考える。
ゴブリンの縄張りを抜け、馬車はしばらく進む。
全員口数が減り、ピリピリしだした。
「…… いるね… 来るよ… 恐らく、賊」リリアが矢と弓を手にする、リリアのゴーストが囁くようだ。
「おまえ、いい感だ。一流のハンターになれるかもな」そうジャックはリリアに言うと、突然手綱を引き絞りながら叫んだ
「馬を返せ!賊だ!馬を守れ!」
二台の馬車が方向転換をするのと矢が降り注ぐのとが同時だった。
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