未冠の大器のやり直し

Jaja

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第6章 春到来

第123話 VS龍山2

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 レオンのホームランで甲子園は大盛り上がり。
 木製バットを使ってるって、物珍しさもあるんだろう。地響きする様な歓声だ。

 「うぇーい! 甲子園初ホームランおめー! 甲子園記録塗り替えろー」

 1位は13本ってバケモノみたいな成績だけど。
 高校生が甲子園でそんなに打てるってやばいだろうよ。

 「幸先良く先制できたなぁ。相手ピッチャーは気の毒だけど、勝負の世界ですし。畳み掛けていきたいところ」

 ランナーはいなくなったが、次は4番の大浦。
 なんとか長打を打って、得点圏で隼人に回したい。
 そう思っていたら、左中間を破るツーベース。
 火の出る様な鋭い打球で、もう少し弱ければ三塁までいけたかもしれん。

 そして、得点圏打率がバグっている隼人。
 凡退しても、次は清水先輩だし追加点は貰ったようなもんだろう。

 「あっ! いったんじゃね?」

 隼人の打球はレフトへ。
 風にも乗って入ったんじゃないかと思ったけど、フェンスの淵の部分に当たり、ギリギリ届かず。
 それでも、大浦は帰ってきて追加点。
 尚も、ランナー2塁である。

 しかし、清水先輩は勝負を避け気味に歩かされ、その後が凡退。
 勿体無いが、それでも3点先取である。


 一回表が終わり、マウンドに上がるのは、これが公式戦復帰のキャプテン。
 程々に緊張してるけど、テンパるほどではなさそう。先制点も入ったし、タイガも打席に入ったからか、リラックスしてるので、上手く操縦してくれるだろう。

 そして、初球。
 アウトコースへのストレート。
 相手の1番バッターも狙っていたのだろう。
 踏み込んでバットを振ってきたが、空振り。
 球速は147キロである。

 「まだ肌寒いこの季節に147キロか。練習のスピードガンでは150キロ出てたし、この甲子園で出す事が出来たらなぁ」

 「豹馬が言うとほんとに嫌味っぽくなるよね」

 まぁ、俺は150キロは普通に出せますからね。
 素直に凄いなと思っても、嫌味っぽくなってしまうらしい。金子君はちょっとネガティブが過ぎるんじゃないでしょうか。

 ともかく、スピードガンでは150キロジャストが最速だったからな。ここで、電光掲示板に正式に表記されるか、されないかで注目度が段違いになる。
 ストレートの高速化が進んできたけど、高校野球で150キロってのは、スカウトが注目する目安にはなるからな。

 「怪我が無かったらって思っちゃうなぁ。高校2年の大事な時期に練習出来てなかったのが勿体ない。今頃150キロオーバーは間違いなかっただろうに」

 怪我ばかりは仕方ないけどさ。
 筋肉を戻す時間を他のトレーニングに充てられてたらって考えちゃうんだよ。

 キャプテンは先頭バッターをスライダーでサードゴロに。このまま淡々と抑えれるかと思ってたんだけど、2番にヒットを打たれて、3番には四球を与えてしまい、1アウト1.2塁で4番である。

 「ランナーを気にし過ぎだな」

 「でも、あの塁上での動きは気になるよ」

 普段ならなんて事ない揺さぶりなんだけど、ここが甲子園だからか。
 必要以上に警戒してるように思える。

 しかし、4番をショートゴロでダブルプレー。
 なんとかピンチを脱出して、ベンチに戻ってくる。

 「応援というか、野次が凄いんだよね。怒号みたいな感じでちょっと気になるかな。ピンチになったら集中力が増して聞こえなくなったんだけど」

 「ここでも凄いけど、マウンドに立つとそれ以上って感じですか? これは楽しみだなぁ」

 「今の話を聞いて、楽しみって言えるメンタルが凄いね」

 それだけ目立てるって事だもんね。
 今はレオンに人気を持っていかれてるけど、俺のピッチングを見てもらって、パン君フィーバーを起こさないと。
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