未冠の大器のやり直し

Jaja

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第4章 秋の戦い

第88話 VS関東一高2

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 二回表。
 俺は先頭バッターの4番を8球使って三振にとった。
 そして、タイムをかけてタイガがやってくる。

 「これ、やばいよ。審判裏金でももらってるんじゃないの? それぐらいコースが狭いんだけど」

 「裏金は流石に無いだろうけど。俺らは結構年配の人にウケが悪いからな。贔屓してるんじゃない?」

 「それでもだよ。これはあからさますぎる。映像で見たら一目瞭然だと思うよ」

 「しゃーない。ストレートの実験は無しで。ねじ伏せてやる」

 「りょーかい」

 今日の審判は相当俺らの事が嫌いなんだろうな。
 まあ、高野連から度々注意されてるのを無視してるしさもありなん。
 頭髪ぐらい好きにさせろよな。
 もう坊主は流行らんって。
 これのせいで野球人気が低下してるのも絶対あると思うんだよね。
 今回勝ったら、決勝は全員虹色にして出場してやろうか。

 その後5番6番も三振を奪い、この回は三者連続三振。
 なんか今日は三振奪っても嬉しくないね。

 「今日の審判はストライクゾーンが大分辛いからな。注意していけ。くさい所はぜんぶストライクになると思っとけよ」

 俺は全部ボールになるけどな。
 元々ゾーン内で勝負する事が多いからあんまり気にしてないけど、イライラはするよね。

 「俺は打てるボールしか手を出さないんであんまり関係ないっすね。入ってようが、打てないと思ったら振らないっす」

 そう言いながら打席に向かう大浦。
 割り切り方が凄いな。
 俺もそれぐらいかっこいい事言いたい。

 「なんか向こうのベンチもゾーンの違いに戸惑ってる感じがあるよね。なんて害悪審判なんだ」

 「やたらブンブン振り回してくるからなんだと思ったけどそういう事か」

 「自分達が贔屓されてる事に気付いてないのかな? 俺が逆の立場なら最大限有効活用するけど」

 「それはそうだけど。真剣に野球やってる人間からしたら侮辱以外の何物でもないだろ」

 「審判との戦いもまた野球だよ。やられてる側はたまったもんじゃないけどさ」

 ガッキーン!!!

 「あ、入った」

 「有言実行マンかよ。マジで届く範囲でしか手を出さなかったな」

 大浦半端ないって。
 あいつ、今大会だけでいえばレオンより打ってるんじゃないか?
 歩かされる事が多いレオンだけど、3回戦辺りから大浦がいるせいで勝負してもらえてるし。

 「ナイバッチー!」

 「あざっす!」

 ここまでポコポコホームラン打てたらバッティングも楽しいだろうな。
 三振の合法麻薬には敵わんだろうけど。

 「む。やはりか。負けてられん」

 「何が?」

 「今ので大浦に今大会の打率を抜かれた。驕っていた訳ではないが、抜かれるとも思っていなかった」

 ほへー。
 まだ大会は続くとはいえ、レオンより上か。
 とんだバケモノじゃないか。
 でも、大浦と俺が打席勝負してもあんまり打たれないんだよな。
 ってか打たれた記憶がないな。
 相性か、慣れか。
 俺も負けないようにしないと。

 後続は凡退に倒れて、二回表が終わる。
 そして、そこからも可変ゾーンは相変わらずでイライラがたまる。
 あまりにも酷いので、三回からは真ん中付近から変化球で動かして凡退させるピッチングに変えた。
 もっとちゃんと組み立てて、三振を奪いたいんだがマジでストライクを取ってくれない。

 試合は3点を追加して7回まで進んでいる。
 俺は、四球を四つも出してしまったがここまでノーヒットピッチング。
 こんなに四球を出したのは小学生以来だぜぃ。
 ストライクを取ってくれないから球数も嵩んで100球を超えている。
 疲れていないからまだ大丈夫だが、精神的にだるい。
 ここまで楽しくない野球は初めてだ。
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