未冠の大器のやり直し

Jaja

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第1章 高校生活

第12話 練習の日々

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 東京は現在、春季大会の真っ最中だが龍宮高校はくじ運が悪く強豪校に当たり既に敗退している。
 だからこそ、練習に気合いが入るし、同じく負けた相手との練習試合もある。

 初日の練習が終わり、翌日の日曜日。
 これからの予定や、練習についての説明があった。
 土日はとにかく練習試合を突っ込むみたいで、早速来週から組まれている。
 平日は、月曜日はミーティングだけで休みにするらしい。
 自主練はしてもいいそうだが基本的は体を休める事を優先。
 火~金は朝に個人別に作られたサーキットをこなして、昼はご飯を食べる前に軽く筋トレ、授業が終わってからは全体練習、主に守備を練習してから個人練習という形になる。


 「今日は昨日測定した結果を元にサーキットメニューと個人練習を組んで来たので、実際に試してみてくれ。質問は随時受け付ける。なぜ、どうして、こういう練習してるのか理解してないと練習効果も半減してしまうからな」

 「では、早速1ついいですか?」

 父さんの説明にキャプテンが手を上げる。

 「いいぞ。なんだ?」

 「この練習時は木製バットを使うっていうのはどういう事ですか?」

 「ああ、それか。まぁ簡単に言うとミート力の強化だな。木製は芯も狭いし、金属に持ち替えた時に改めて、スイートスポットの広さと打球の伸びが実感出来る様になると思う。慣れたら木製の方が打ちやすい奴もいるしな」

 「なるほど。分かりました。ありがとうございます!」

 
 それからも何人か質問があったりしたが、概ね問題なさそうだ。
 変わり種はやっぱり卓球かな。
 ピンポン玉を使った眼球周りの筋トレは有名だと思ってたんだけど、あまり知られてなかった。
 このトレーニングは馬鹿に出来ない。
 選球眼もあがるしね。

 「じゃあ、各自サーキットを始めてくれ」

 
 まぁ、サーキットと言っても滅茶苦茶に負荷をかけてやる訳ではない。
 追い込むのは冬の間にやるしね。
 サーキットをこなしていき、個人練習も行っていく。
 ピッチャー陣は昨日に引き続き、フォーム固めだ。
 そして、フォームチェックをする必要のない俺はタイガと一緒にレオンの所に殴り込んでいた。


 「レオーン! 練習終わったかー! 俺がバッピやってやるぜー!」

 「やるぜー!」

 そう。中学時代に紅白戦やバッピで個人的にボコボコにされたので、そのお礼参りである。
 タイガと両親にしか明かしていなかった球種を解放してやり返そうという訳だ。
 こういうのは初めが肝心。
 とりあえず今日はボコボコにさせてもらおうと思う。

 「少し待っててくれ。もうちょっとで終わる」

 
 タイガとキャッチボールしながら待ってると事15分、レオンがバットを持ってやって来た。

 「何打席やるんだ?」

 「今日もいつも通り5だ。今日は全打席凡退も覚悟しておくんだな!」

 「ふむん? 今日はいつにも増して自信過剰だな? 何かあったのか?」

 「それはこれからのお楽しみよ!」

 俺とレオンは中学の頃から、実践的にカウント計測もしつつ、打席勝負している。
 通算で3割ぐらい打たれてるが今日は絶対勝たしてもらおう。

 「それで? 今日は全球種使うのか?」

 「あたぼうよ。一応決め球として使う予定だぜ。まだあんまり多投したくないしな。リードは任せる」

 「了解」


 第1打席。

 まずはアウトローにストレート。レオンは送ってストライク。普通すぎて逆に見逃したかな?
 2球目はアウトハイにストレート。これは手を出してきてファール。
 3球目はアウトコースにナックルカーブを投げるも見逃される。
 そして4球目。左のほぼサイドスローの様な投げ方から繰り出す、インコースへのスラッター。
 ボールからストライクになるフロントドアである。
 左打者のレオンはすっぽ抜けかと思ったのか大きくのけ反っていたが判定はストライク。
 見逃して三振だ。レオンは思わず二度見していた。

 「くはっ。くはははは! どうだレオン! いつまでもお前にボコボコに打たれてた俺とは違うのだよ! くははははは!」

 俺氏。有頂天である。
 やっぱり三振は気持ちいい。
 しかもレオンからのあの表情。滾るわー。

 レオンは何も言い返してこずに、2打席目。

 俺は新球種を使わずに、チェンジアップでサードフライ相当の打球に打ち取る。
 恐らくスラッターが頭にあったのだろう。

 そして3打席目。

 ストレートとチェンジアップで追い込み、真ん中からインローに鋭く落ちるツーシームを投げる。
 ストレートの失投だと思ったのか振ってきたレオンだが空振り三振である。

 レオンはこちらをじっと見て来たが、またしても何も言わず足場をならす。

 4打席目
 またしても追い込み、アウトローに逃げていくスイーパーで空振り三振。

 この頃には、周りで見ていた他の部員もザワザワしてくる。

 「あいつって、あんな球種あったのかよ」

 「な。W杯や中学では投げてなかったと思うけど」

 「末恐ろしい1年だな」


 流石になんて言ってるかまでは聞こえないが、最後の打席である。
 しっかり抑えて気持ちよく終わりたい。

 初球はナックルカーブでボール。
 2球目はチェンジアップにファールで3球目。
 アウトローに投げたストレートを普通に弾き返されてセンター前ヒット。

 「ぬわー!! フィニッシュに気を取られすぎてストレートが甘く入ったかー!!」

 やってくれやがったな! レオンめ!

 「いやぁ、新球種は決め球にしか使ってこないとヤマ張ってて良かったぞ。今まで使ってこなかったという事は球数制限でもしてるんだろう?」

 「その通りだよ! くそったれめ! もう少しインナーマッスルを鍛えないと怪我が怖くて普段使いは出来ねぇんだよ!」

 「ふむ。まぁ、さすがにあれは初見では打てん。特にツーシーム。ストレートとの差異が全く分からん。これは楽しくなってきたな」

 レオンがとてもギラギラしてらっしゃる。
 名前通り百獣の王みたいである。

 「初見殺しが通用するうちに完璧に勝っておきたかったんだが、まだまだだなぁ」
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