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3章 箱内コラボ
箱内コラボ④
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ゴブリンが絶命する際の断末魔が、続けざまに響く。
「ごめん。またちょっと行ってくる」
口を抑えながら、また一人近くの茂みに駆けていく。
周囲が安全な環境であることが幸いして、一人で茂みに行くことを許可できる。
魔物にトドメを刺すことへの抵抗感と言うものは慣れでしか解消出来ない。全く抵抗できない魔物を一方的に仕留めるくらいの精神的状況を体験させることが一番練習になる。
「終わったよ~」
そんな精神的な負荷が重いとどめを刺す訓練を一度も離脱せず終えた人がいた。声の主は鹿島ミク。
最初の一匹目をやるときから少しも顔を歪ませておらず、その後はスムーズにおえていた。
もしかすると冒険者をやってたことがあるのかもしれない。
動き自体は初心者ソレだったのだが、活動休止して数年経っていた冒険者だったら頷ける話だ。
「楽勝だったかな?他の連中が終わるまではのんびりしていてくれ」
「分かった。ソラ君に色々聞きたいこととかあるし良いかな?」
好奇心丸出しという言葉が似合うテンションでミクがソラの横に立つ。
一人当たり巻藁ゴブリンは8本、そのうち子供のゴブリンは2本、上位個体は1本ずつ置いたため、通常ゴブリンよりも剣で切るのが難しい巻藁も存在する。
幼体の個体は通常種よりも簡単に斬れるのだが、上位個体は通常種よりも首の周りが太く、切断するのが難しいのだ。
それ故に――
“ギャオォォォ”
致命傷に至らないものの剣による滅多刺しを受けたゴブリンの上位個体が悲鳴を上げ続ける。
この悲鳴で吐き気を催してしまっているだ。
「ソラ君もこんな感じの練習してた時期があるの?」
ニンマリという擬音がよく似合う表情を浮かべ、ミクが青空の顔を覗いた。
「小学生の頃に兄貴に連れられて身動きを封じられたオークを何度も刺す練習をさせられてました」
思い出すだけでも異常な体験だったと思う。兄貴とその仲間達がオークを生け捕りにし、直接押さえつけているなか、下手くそな刺突を何度も加え絶命するまで続けていたのだ。
「オークって初心者からしたら強い魔物だよね?しかも群れで出現するっていう......」
ミクの認識は初心者講習の様なある程度実力がある冒険者に師事してこなかった冒険者の共通認識みたいなものだ。
オークの出現は記録上では15層以降となっており週末冒険者とかだと、遭遇する機会に乏しい魔物だったりする。
「兄貴達に腕力でオークを押さえつけてくれてトドメを刺す練習をさせて貰ったんだよ。普通の初心者講習のトドメを刺しの慣らし訓練ではゴブリンを使うと相場が決まっているんだけど」
「人間辞めてますね......」
本当に人間を辞めていると言うのは深層に行くまでは丸腰でも行ける人だ。そのレベルになれば人間を辞めていると言えるのだろう。
中層を探索している冒険者は社会一般からすれば超人的な身体能力やら知覚を身に着けているため人間を辞めていると言われることがあるのだが、本当に人間を辞めている冒険者は地上で戦わせれば戦略兵器をも上回る程のスペックだったりする。
「初心者講習の指導員なら、万が一オークの群れが凶暴化しても受講生を守りながら倒せるくらいの実力はありますよ~」
「表層の難易度の8倍だっけ?51層以降は」
初心者講習の指導員はパーティーとしての活動を停止せざるをえなくなった冒険者の安全で危険度の低い一時的な収入源とされている。
「そうですよ。まぁ、初心者講習の指導員ってのは一時的な収入源を求めた連中ですが」
表層で強敵扱いされているオークは一体丸々持ち帰り売りさばいたとて25万円に届かないことが多い魔物だ。大容量の魔法鞄という希少ドロップ品を持っていない冒険者には200kg以上あるオークを持ち帰ってくることは骨が折れるのだ。
魔法鞄は中層以降で出現する希少ドロップ品であり、中層で見つけられる魔法鞄の容量は500kg前後である。それに対して初心者講習は一ヶ月程の時間はかかるものの100万円近い収入を受け取れる仕事なのだ。
「そろそろ、手助けしてあげないと終わらないんじゃないですか?」
ミクが心配そうに未だクリアできてない彼女らを見つめる。
「慣れるのが目的なので......ゴブリンにトドメを躊躇するなら、まして獣種の魔物を相手にする時にどうなるか考えましょう。残酷な話ですが魔物を仕留め損なうことは死に直結するので手助けはしてやれません。ゴブリンの拘束を緩めたら、彼女らが負傷する可能性が出てきますので」
幸先の悪さを感じながらも青空は生徒を見守ることに勤めるのであった。
「ごめん。またちょっと行ってくる」
口を抑えながら、また一人近くの茂みに駆けていく。
周囲が安全な環境であることが幸いして、一人で茂みに行くことを許可できる。
魔物にトドメを刺すことへの抵抗感と言うものは慣れでしか解消出来ない。全く抵抗できない魔物を一方的に仕留めるくらいの精神的状況を体験させることが一番練習になる。
「終わったよ~」
そんな精神的な負荷が重いとどめを刺す訓練を一度も離脱せず終えた人がいた。声の主は鹿島ミク。
最初の一匹目をやるときから少しも顔を歪ませておらず、その後はスムーズにおえていた。
もしかすると冒険者をやってたことがあるのかもしれない。
動き自体は初心者ソレだったのだが、活動休止して数年経っていた冒険者だったら頷ける話だ。
「楽勝だったかな?他の連中が終わるまではのんびりしていてくれ」
「分かった。ソラ君に色々聞きたいこととかあるし良いかな?」
好奇心丸出しという言葉が似合うテンションでミクがソラの横に立つ。
一人当たり巻藁ゴブリンは8本、そのうち子供のゴブリンは2本、上位個体は1本ずつ置いたため、通常ゴブリンよりも剣で切るのが難しい巻藁も存在する。
幼体の個体は通常種よりも簡単に斬れるのだが、上位個体は通常種よりも首の周りが太く、切断するのが難しいのだ。
それ故に――
“ギャオォォォ”
致命傷に至らないものの剣による滅多刺しを受けたゴブリンの上位個体が悲鳴を上げ続ける。
この悲鳴で吐き気を催してしまっているだ。
「ソラ君もこんな感じの練習してた時期があるの?」
ニンマリという擬音がよく似合う表情を浮かべ、ミクが青空の顔を覗いた。
「小学生の頃に兄貴に連れられて身動きを封じられたオークを何度も刺す練習をさせられてました」
思い出すだけでも異常な体験だったと思う。兄貴とその仲間達がオークを生け捕りにし、直接押さえつけているなか、下手くそな刺突を何度も加え絶命するまで続けていたのだ。
「オークって初心者からしたら強い魔物だよね?しかも群れで出現するっていう......」
ミクの認識は初心者講習の様なある程度実力がある冒険者に師事してこなかった冒険者の共通認識みたいなものだ。
オークの出現は記録上では15層以降となっており週末冒険者とかだと、遭遇する機会に乏しい魔物だったりする。
「兄貴達に腕力でオークを押さえつけてくれてトドメを刺す練習をさせて貰ったんだよ。普通の初心者講習のトドメを刺しの慣らし訓練ではゴブリンを使うと相場が決まっているんだけど」
「人間辞めてますね......」
本当に人間を辞めていると言うのは深層に行くまでは丸腰でも行ける人だ。そのレベルになれば人間を辞めていると言えるのだろう。
中層を探索している冒険者は社会一般からすれば超人的な身体能力やら知覚を身に着けているため人間を辞めていると言われることがあるのだが、本当に人間を辞めている冒険者は地上で戦わせれば戦略兵器をも上回る程のスペックだったりする。
「初心者講習の指導員なら、万が一オークの群れが凶暴化しても受講生を守りながら倒せるくらいの実力はありますよ~」
「表層の難易度の8倍だっけ?51層以降は」
初心者講習の指導員はパーティーとしての活動を停止せざるをえなくなった冒険者の安全で危険度の低い一時的な収入源とされている。
「そうですよ。まぁ、初心者講習の指導員ってのは一時的な収入源を求めた連中ですが」
表層で強敵扱いされているオークは一体丸々持ち帰り売りさばいたとて25万円に届かないことが多い魔物だ。大容量の魔法鞄という希少ドロップ品を持っていない冒険者には200kg以上あるオークを持ち帰ってくることは骨が折れるのだ。
魔法鞄は中層以降で出現する希少ドロップ品であり、中層で見つけられる魔法鞄の容量は500kg前後である。それに対して初心者講習は一ヶ月程の時間はかかるものの100万円近い収入を受け取れる仕事なのだ。
「そろそろ、手助けしてあげないと終わらないんじゃないですか?」
ミクが心配そうに未だクリアできてない彼女らを見つめる。
「慣れるのが目的なので......ゴブリンにトドメを躊躇するなら、まして獣種の魔物を相手にする時にどうなるか考えましょう。残酷な話ですが魔物を仕留め損なうことは死に直結するので手助けはしてやれません。ゴブリンの拘束を緩めたら、彼女らが負傷する可能性が出てきますので」
幸先の悪さを感じながらも青空は生徒を見守ることに勤めるのであった。
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