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その頃は
しおりを挟む「話し合いが前もってわかれば、証拠を書面にまとめてきましたが、急なことでしたので…」
クロード様はそう話しながらハーヴィ伯爵をジロリと見た。
「急にきた無礼はお詫び致します…」
ハーヴィ伯爵はクロード様に申し訳なさそうに言った。
ハーヴィ伯爵の様子からクロード様に無礼をする気はないみたいだ。
「ですので、口頭でお伝えします。後で調べてもらってもかまわないですので。」
「だったら、さっさと言え!」
「貴様は黙っていろ!」
ハロルド様は既にクロード様が公爵家の御嫡男だと忘れている気がしてきた。
ただの間男と思っているんじゃないかな。
「この婚約破棄の日付もそうですが、俺はその頃、両親のいる領地に行っていました。騎士をしてますが、休暇の時は父上の仕事を手伝っていましたので。領館でも仕事をしていましたから記録が残っています。ついでに、領地の視察もしていましたので、多くの領民が俺を見ていますよ。」
クロード様が、大丈夫だと言ったのは浮気どころか私とまだ出逢ってない証拠があったのだ。
クロード様の公爵領はうちの邸のご近所さんではない。
この街からでも馬車で何時間もかかる。
その頃にこの街にいなかったのだからばったり会う可能性すらないのだ。
クロード様は領地で仕事をして、私はハロルド様達と食事を邸で取っているのだから、逢い引きする時間がないのは明白だ。
物理的に無理なのだから。
「では、私と出逢ったのは…?」
「あの前日の午後にこの街に帰り、騎士団でそのまま少し仕事をしたのだ。領地から帰ったばかりだから翌日は遅出にしてもらい、ついでにと買い物を頼まれてラケルと出逢ったんだ。」
「まあ、そうだったのですか。」
「ラケルに逢えて良かった。」
「まあ、クロード様…。」
クロード様は私の手を握り優しい顔でそう言ってくれた。
私を見る目は先ほどの怒りの顔とは全く違う。
「う、嘘だ!!」
ハロルド様が叫ぶように言った。
何が嘘なんだか。
「嘘ではない!領館に調べに行っても構わんぞ!俺達にはやましいことはない!」
クロード様は容赦なくハロルド様を怒鳴りつけた。
そして、ハーヴィ伯爵は、ガンッと杖を床に音を立ててついた。
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