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陛下、離婚してください

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「今、なんと?」
「離婚したいと言いました」
「な、なななな……なぜだぁぁぁぁあああああ!」

 突如、妻ユーフェミアから告げられた言葉にトリスタン王の叫びが屋敷中に響き割った。


「僕と離婚してどうするつもりだ!」

 突然告げられた妻の願いに戸惑うトリスタンが怒声と共にテーブルを叩く。
 彼女は昨日今日で王妃になったわけではなく、この国の母となって長い。嫌だからと言ってやめられるものではないことは王妃である本人が誰よりも理解しているはずなのに願いとして口にしたということは本気であるということ。
 ありえない。目の前にいる彼女が悲しみや苦笑を浮かべるでもなく平然といつもどおりの表情でいることもありえない。

「平凡に暮らします」
「君に平凡な生活はムリだ! 君は虫一匹殺せないじゃないか! いや、その優しさが君の魅力ではあるが、平凡に暮らすということはあっちにもこっちにも虫がいる生活になるんだぞ!」

 どういう生活を想像しているのだろうかと苦笑するユーフェミアは思った通り大騒ぎするトリスタンに静かに首を振る。

「殺さずとも追い出せばよいだけです」
「欠けたティーカップでお茶をするつもりか!? その美しい顔も映らない曇った銀食器で食事をするのか!?」
「平凡な暮らしをしている国民達は何も欠けたカップでお茶をしているわけではありません。顔が映らなかろうとカトラリーはカトラリーです」
「ベッドはどうする! まさか藁の上で寝るというのか!?」

 王族として生まれたトリスタンには【平凡=貧しい】という想像しかできないらしく、愛する妻がそんな惨めな生活をするなど考えられないと悲鳴を上げ続ける。

「陛下、落ち着いてください。平凡な暮らしは何も貧乏な生活ということではありません。贅沢も貧しさもない暮らしということです。陛下がおっしゃっているのは貧しい生活を強いられている者の暮らしです」
「で、でも君が贅沢をしないで生きられるのか!? 君がお気に入りのティーカップはいくらする!? 君に似合うあの純白のドレスは!? 君のためにあるようなガラスの靴は!? この世で君にしか似合わないあの髪飾りが一体いくらするのか知っているのか!?」
「いいえ、知りません」
「ほら見たことか! 君は何も知らないんだ! そんな君が僕から離れて一人で暮らすなんて出来るはずないじゃないか!」

 全てトリスタンが贈ってくれたものであり、全てデザイナーと相談して作り上げた世界でたった一つの物なのだから値段など知るはずがないと心の中でだけ反論すると責める点を見つけたとでも言いたげに指をさす子供のような夫にそれらの値段について物申したところで結果は見えているため黙っていた。

「知らないじゃないか! あれらはとてつもなく高いんだぞ!」
「陛下はご存知なのですか?」
「ぼ、僕は君への贈り物に金額を確認するような小さな男ではない。君に似合う物をと贈っていただけだからな。事実、僕が贈った物は全て君に似合っていたし、君も気に入っていた。そうだろう?」

 自信を持っているように見えて実際はそうでもない小心者の夫が向ける目は今にも捨てられそうな子犬のようで、ユーフェミアはこの目が苦手だった。この目を向けられると強く言えなくなってしまうのだ。

「わたくしが気に入っているのは陛下が直々に贈ってくださった物だからです。高価な物だからではありません」
「で、でも僕と離婚したら君はあのティーカップもドレスも何もかも手放さなければならなくなるんだぞ!? それでもいいのか!?」
「夫が愛人を囲って夜な夜なそちらへ向かう姿を見送るぐらいならそれを手放すことを選びます」

 昔から愛人がいたわけではないが、ここ数年特に増えた気がしていた。ニ十歳前後の若く美しい女達。王は愛人を作っても隠すことなくいつも堂々としている。
 ユーフェミアは王が女を囲うのは甲斐性だと思ってきたが、最近はそれが無性に耐え難く感じるようになった。三十代に突入している自分が二十歳前後の若さ溢るる女に勝てるとは思っていないし勝とうとも考えてはいないが、この生活があと何十年も続くのであればいっそのこと、この生活ごと王を捨てようと考えたのが半年前。
 いつかは愛人に飽きて自分一人だけを愛してくれるのではないかと何年にも渡って寄せていた淡い期待は淡すぎてあっさり消えてしまった。
 美しい色が施された爪を退屈そうに眺め、王が来た時にだけ媚びていれば寵愛が受けられるなんの責任も持たない愛人を王妃に昇格させれば簡単に済む話なのに、愛人は所詮愛人でしかないらしく、トリスタンに離婚の意思はない。

「愛人はだって……その……これは、ほら、王としての僕の甲斐性だ!」
「そうですね。わたくしもそう思っていましたが、わたくしにも王妃としてのプライドがございます。愛人に鼻の下を伸ばす陛下を見送るのは辛いと感じているのです。陛下は愛人に言うように、おいでの一言もわたくしにくださいませんしね」
「そ、それはだって……!」

 首を傾げて返事を待つユーフェミアから顔を逸らしたトリスタンが何か呟くも声が小さすぎて聞こえない。

「愛人との関係を終わらせるのはそれほどまでに困難なことなのですか?」
「そう言うわけではないが……と、とにかくだ! 僕は離婚なんて絶対にしない! 今年は結婚二十周年記念のパレードが行われるのにどうして今年言うんだ! 来年じゃダメだったのか!? 二十周年だぞ!?」

 十四歳で結婚して今年で二十年目。
 今年はその二十周年の記念パレードがある。特別な装飾が施された絢爛豪華な馬車に乗って国中を回って国民からの祝福を受ける大切なパレード。
 笑顔で祝ってくれる国民達が我らが父母が離婚すると知れば悲しむだろうが、だからと言って。

「来年は結婚二十一周年記念のパレードがあるでしょう」

 十九年連続で行われているパレードは間違いなく来年も行われ〝二十周年記念パレード〟は〝二十一周年記念パレード〟に名を変えるだけ。
 王の言う通り、来年離婚の話を持ち出したとしても間違いなく『今年は結婚二十一周年記念のパレードがあるのにどうして今年言うんだ! 来年じゃダメだったのか!? 二十一周年だぞ!?』と言うだろう。

「僕達が離婚の危機にない、世界で最も幸せな夫婦であることを皆に見てもらう素晴らしいイベントだ」
「今、その離婚危機にあるのです」
「それは君が勝手に言ってるだけだ。僕は離婚なんてしない」
「最初で最後のお願いも聞いてくださらないのですか?」
「嫌だ! 君はいつも最初で最後と言うじゃないか!」
「では以前、わたくしが言った最初で最後のお願いは何でしたか?」

 ユーフェミアの問いにトリスタンの唇がすぼんで目が泳ぎ、汗が流れる。それもそのはず。ユーフェミアは結婚してから一度も夫にお願いをしたことがないのだ。欲しい物があるとも、飼いたい動物がいるとも、食べたい物があるとも言わなかった。だからこれが本当に最初で最後のお願いになる。

「う~……嫌だ! 君は僕の妻だ! 他の男にはやらん! 僕から離れるなんて絶対にダメだ!」
「再婚予定はございません」
「そんなはずない! 君は自分の美しさをわかっていないのだ! 君が歩くだけでその場に花が舞い落ちる! イイ香りがするし、僕は一キロ離れた場所からでも君をピンポイントで見つけることができるぞ! それぐらい君は美しいんだ! 太陽のように明るく、月のように美しい! なのに君自身がその魅力に気付いていない! 君だけが! 気付いていないんだ! 街に君を放てばすぐに男が群がるのは目に見えてる! 僕と離婚した三分後にはもう再婚してるかもしれない!」

 盛大な褒め言葉にユーフェミアが滲ませるのは苦笑。花は舞ってないし、一キロ先の人間を見つけるのは不可能。大袈裟すぎると首を振るユーフェミアはこの状況をどうしたものかと天井を見上げた。

「僕を捨てるのか?」
「捨てるなどと……離婚していただきたいだけです」
「君に捨てられたら僕は一人だ! 母上も父上もいない! 兄弟さえもいないのに……」

 そこがユーフェミアが離婚してほしいと書いた手紙を残してこの家を去れない理由だった。

 二十年前、結婚を三日後に控えた日、トリスタンは両親を事故で失くした。
 世界会議に出るために開催地へと向かっていた道中、突然暴れ出した馬を制御できず、馬車は二人を乗せたまま谷底へと落下した。
 離婚してくれと言って出て行くのは簡単だが、それが実行出来ずにこうして彼の喚きを聞き続ける選択をしたのは事故の報告を受けてからの一年、ずっと悲惨な状態だった彼を知っているから。
 ユーフェミアも完全に心が冷めてしまったから離婚したいわけじゃない。愛人が嫌なのだ。だから条件を提示している。愛人を切ってくれれば、と。トリスタンも理解してはいる。愛人と正妻は別。愛人は家族にはなれない。トリスタンにとって家族はユーフェミアだけなのだ。

「陛下は人気がありますから、また新しい王妃を迎えられるはずです」
「この国の王妃は君だけだ! 僕の妻は君だけなんだ! 僕には君が必要だし、国民だって君以外をこの国の母とは認めないぞ!」
「では、彼女達は必要ないということですね?」
「それは……必要、かな……」
「離婚します」
「嫌だ!」

 十五歳で若き王となった夫を不憫に思うことは何度もあった。一番自由に生きられるはずだった年頃に何の覚悟もできていない状態で王として生きることを強いられ、国民の期待を一身に背負うことになったのだから。
 いつか必ず訪れることであっても十五歳で、それも自分の結婚式前に親が亡くなるなど誰が想像できるのか。
 王は明日死ぬかもしれないから、いつ王を継いでも大丈夫なように、と考えて生きている王子はきっと少ない。王にならなければならないその重責を前にそれでもトリスタンは文句を言いながらも逃げ出したことは一度もなかった。ムリだと泣きながら、出来ないと怒りながら、時には皆が心配するほど荒れ狂いながらも国民の前では立派に王を務め、今に至る。
 国民は誰一人として三十五歳にもなった王がこんなにも幼稚な人間であることは知らないだろう。それぐらい彼は立派に王として生きているのだ。だからユーフェミアも王妃として王に愛人が一人二人三人四人と増え続けようともジッと堪え続けてきた。だがそれも年を取るごとに〝目障り〟だと思うようになり、今に至る。

「陛下、お聞きください。わたくしはあなたを愛しています」
「じゃあ離婚はなしだな!」
「最後までお聞きください。出て行きますよ」
「あ、はい」

 ふう、と息を吐き出して心を落ち着けたユーフェミアは真っ直ぐトリスタンを見つめた。

「わたくしは離婚したいのです」
「どんな理由があろうと離婚はしない。君が僕のせいで苦しんでいるというのなら話は別だが」
「精神的苦痛を受けております」
「理由は?」
「愛人の数です」
「一人減らせばいいか?」
「四人減らしてください」
「全員じゃないか!」

 愛人というのは普通一人じゃないのかと長年思っていたが、若い女を囲うことで王の心が少しでも癒されるのであればと耐えてきた。王の気持ちが愛人に向いたのであればそれはそれで仕方ない。若い女には勝てないと三十歳を超えて若さへの抵抗は既に諦めている。しかし、王はいつまで経っても愛人を優先することはなく、夜の相手をさせるだけ。就寝時は必ず寝室に戻り、毎日飽きるほど愛を囁き、ユーフェミアの心を埋めていく。
 だからこそ離婚しようと思った。
 対抗するつもりはないが、彼の愛を独占したいとは思っている。結婚してもう二十年も経つというのにまだそんな想いが胸にあって、愛人が増えるたびにユーフェミアの悩みと苦しみも増していった。
 彼が愛人を優先する様子はない。だからユーフェミアは賭けに出ることにした。愛しているのなら願いを一つ聞いてほしい。でもそれを聞いてくれないのなら別れるしかないと。
 これ以上は我慢の限界だった。

「これまでにも幾度か愛人を減らしてくださいとお願いしてきました」
「その度に減らしたじゃないか」
「わたくしがお願いした時、愛人は三人でした。今は何人ですか?」
「……四人……」
「リンゴが三つありました。お腹がすいたので一つ食べました。残りのリンゴの数が四つになるとは不思議ですね? 私の計算では二つなので何かがおかしいのです。さて、それは何故でしょう?」

 ユーフェミアの問いにトリスタンが目を泳がせる。

「これは、その……ほら…まあ、そうなる……な?」

 数を減らせと言ったのに今は四人。減るどころか増えている。それなのにトリスタンは毎日寝室で眠るのだからユーフェミアはわけがわからなかった。
 三十歳を過ぎて若い愛人に対抗するのはやめようと決めながらも結局は愛人に嫉妬して離婚だと脅しているのだから小さな女だとユーフェミアは自分の幼稚さに呆れ、目を閉じ溜めを吐き出した。

「四人も必要ですか?」

 愛する夫には四人の愛人がいて、全員が彼に抱かれている。夫を愛していないのならまだしも、ユーフェミアは夫を愛している。目障りだと思わないはずがない。だから愛人を切ってくれと願っているにその願いはまだトリスタンには届いていない。
 トリスタンが愛人に特別な寵愛を向けているとは思っていないが問題はそこではなかった。

「子作りの頻度に不満があるのか?」
「愛人ともされていますよね?」
「あれはただの発散だ」
「同じだと思いますけど」
「全然違う! 君との行為は愛の証であり、そこに宿る子を迎えるためのものでもある」
「彼女達にも子が宿るとは思いませんか?」
「宿らんだろう」
「言いきる根拠は?」
「愛がない」

 言いきったその根拠に頭痛を感じたユーフェミアは今すぐこの場でテーブルに頭をぶつけて退場してしまいたかった。
 トリスタンの後ろに控えている側近を見るも苦い顔で首を振るだけのお手上げ状態。
 三十五歳にもなって愛がなければ妊娠はしないと思い込むのはありえないとユーフェミアだけでなく使用人達全員が思っているのが伝わってくるも誰も何も言わないのは彼がどれほど純粋な人間か、その全員が知っているから。子供でも知っているようなことをトリスタンが知らないのも特段珍しいことではない。ユーフェミアはそんなところを馬鹿とも可愛いとも思っていた。
 しかし、今の心境的に笑って話題を終わらせることはできない。

「では、わたくし達の間にお子が出来ないのも愛がないからということですね?」

 二十年間、まるで義務のように続けている子作りを王妃は一度だって嫌だと思ったことはない。それは子を成すまでの義務感としてではなく、彼が鼻息荒く致す気満々で迫ってくるから。愛されているのだと全身で感じることができるのだ。
 だが、十代が終わり、二十代も終わり、三十代に突入してもうすぐ折り返し地点に立とうというのに、まだ一度だって子をこの腹に宿したことはない。
 二十年間、ただの一度も──……
 愛があれば宿り、愛がなければ宿らないと言うのであれば、自分達のあの行為に愛はないということになる。それは彼が愛人を十人囲うよりもずっと残酷な事実である。

「違う! 僕達の子作りには愛しかない! この胸を裂いて君に僕の想いを見せることができるのなら僕は今すぐこの胸を切り裂いて君に見せよう!」
「馬鹿にことはおやめください!」
「ぐふぉっ!」

 傍にあったナイフで胸を刺そうとする王に咄嗟に掴んだパンを勢いよく投げつければ顔に直撃し、ナイフが地面に落ちた。

「な、なかなか素早いな…。だが、もう少し優しく止めてくれてもよかったのだぞ……?」
「バカなことをする方を止める方法を知らないもので慌ててあのようなことをしてしまいました。お許しください」

 席を立ち上がった王は王妃の前でプロポーズをするように膝をついて手を握り、手の甲に口付けた。

「さっきのは僕の失言だった。愛がないから妊娠しないなんて失礼だな」
「ええ、侮辱罪で処刑ものです」
「そ、そんなにか……。すまない。でもどうかこれだけは信じてほしい。君への愛はこの二十年間、一度だって薄れたことはない。君より彼女達のほうが好きだと思ったことは一度だってないんだ。その証拠にほら、君を前にした僕の胸はこんなにもドキドキしているだろう? 君を見つめているからだ」

 胸に触れた手には確かに速い鼓動が伝わってくる。
 トリスタンから感じる愛情は年々増しているのは確かだ。だからこそ愛人という存在を嫌に思う。それを何度伝えてもトリスタンはわかってくれない。妻が嫌だと言い、簡単ではない離婚を口にする覚悟まで見せているのに渋るのだからわかってくれないのであれば離婚する。この先ずっと彼が愛人に触れる姿を見なければならないのであればこの想いに蓋をして離婚したほうがいいとユーフェミアは今この瞬間もそう思っていた。
 このまま平行線を辿れば二十周年記念パレードを迎えることになってしまう。盛大なパレードの後に離婚はしにくい。二人が幸せそうに寄り添って笑顔で手を振っていたあの姿は偽りだったのかと国民を落胆させることになる。
 この国の母になると決めた瞬間から離婚は考えてはならない禁忌のようなもの。ユーフェミア自身、離婚を口にするつもりなどなかったのに歳のせいだろうかと嫉妬深くなった自分に首を振るも目の前で自分を見上げてくる夫の目は相も変わらず子犬のようでユーフェミアの眉をが下がる。

「離婚はしないだろう?」
「したいです」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 離婚はしない! こんなに愛しているのになぜ離婚なんかしなきゃいけないんだ! おかしいじゃないか! 愛し合っているのに!」

 愛し合っている。それは間違いない。だが、愛し合っているからこそ他人が間にいるのが我慢できない。王妃の腰に抱きついて膝の上で頬ずりをしながらダダをこねる子供のような王でもユーフェミアにとっては愛しい夫。問題の愛人を切ってさえくれれば離婚などせず愛しさは増すばかりなのにトリスタンは何もわかっていない。

「愛している妻のお願いを聞いてくださらないのはなぜですか?」
「愛している妻の願いを聞けば愛している妻を失うことになるからだ」

 ごもっともだとユーフェミアは頷く。

「とにかく、この件は白紙にする」
「次はご納得いただける理由を持ってまいります」
「どんな理由であろうと認めん!」
「失礼いたします」
「ダメだ! 食事が終わってないじゃないか!」

 ここで去らせてくれない辺り、これからもスムーズに事を運ばせてはくれないのだろうと溜息が出る。

「これは君のための食事だ! シェフが君のために作ったメニューだ!」
「……食べなければ失礼ですね」
「違う! 食べなければ君の美しい肌と美しい髪が傷むことになる!」

 トリスタンはいつだってユーフェミアのことを考えている。愛してくれていると実感するのにそれで満足せず、愛人を切らなければ離婚だと考える自分はワガママだろうかと自問自答するが、まだ答えは出てこない。イエスかノーという簡単なものでいいのに、それすら出せない自分に頭を抱え続けている。
 愛する人と離婚しなければならないのは辛いし、一方的に突きつけるのが身勝手なことだとわかってもいる。それでも愛しているからこそ愛している人が愛人と仲良くしているのは我慢できない。このままモヤモヤを抱え続けるぐらいなら愛していようと離婚すると決めたのだ。少しぐらいでは揺らがないと膝の上で拳を握った。

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